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幼なじみと隣の席の女の子
逢いたい
しおりを挟む日下部君とは、毎日メッセージのやり取りをしている。
何もなく家に居る時も、お姉ちゃんの仕事の付き添いでホテルに泊まってる時も……。
今もペンションに泊まって日下部君と今日読んだ本の話をしていた。
夏休みが始まってから日下部君とは一度も逢っていない。
逢いたい……そんな思いがどんどん強くなっている。
「ねえ明日菜ちゃんお風呂入んないの? 一緒に入ってくれると思って待ってたのに~~」
髪の毛をタオルで拭きながら、お姉ちゃんが素っ裸でお風呂場から出てくる。
「入るわけ無いでしょって、お、お姉ちゃん! なんて格好で出てきてんの?! 裸でうろうろしないでって何度も言ってるでしょ!?」
「えーー何でよ? 良いじゃない、暑いんだから」
「は、恥ずかしいでしょ!」
「誰が?」
「わ、私が!」
「……あははは、そんなの鏡でいつも見てるじゃない、私は明日菜ちゃんと全く同じなんだから」
「だからよ! 自分が裸で歩いているみたいだから恥ずかしいって言ってるの!」
「ハイハイ、汗引いたら着るから」
「ああ、もう! 今すぐ着て!」
私は鞄から下着を取り出すとソファーに裸で座ってテレビを見ているお姉ちゃんの元へ行き、下着を付ける。
「ふふふ、くすぐったいい」
「もう、子供じゃないんだから!」
「そう言えばさー明日菜ちゃん明日はどうする?」
パンツまで私に履かされながら、お姉ちゃんはテレビから目を離さずに私にそう聞いてきた。
「明日……うーーん、やっぱり明日はここに居ようかなって……」
パンツ履かせると腰の辺りを軽く叩き、続けてお姉ちゃんの背中に回りブラを着け始める。
今日、私はお姉ちゃんのマネージャー件付き添いとして前日打ち合わせの場に来ていた。
打ち合わせの間、ずっとお姉ちゃんの傍らにいた……でも明日は本番当日、物凄い人が押し寄せてくる……仕事で関係者の方と話すのも大変なのに……人混みが苦手な私は大勢の人の中だと酔ってしまう……その為明日の付き添いはさすがに無理と判断した。
「そっかーー、まあ、そうだよねえ」
「うん、ごめん、お姉ちゃんはゆっくり見てきて良いよ」
お姉ちゃんの出番は、ほんの20分程しかない。なので当初出番終わったら、二人で会場を回ろうなんて事を言っていたが、会場に着いてビックリした。まさかそんなに大勢の人が来るとは……私は知らなかった。てか、お姉ちゃんも私に内緒にしていて、ちょっと怒った……。
「そっかあ、一緒に見たかったんだけどなあ」
「──私は……本を読んでる方が楽しいから」
「わかった、ちょっと見たら帰るから、待っててね」
「うん」
お姉ちゃんは立ち上がるとウインクをして洗面所に向かった。
「下着姿も……嫌だなあ……恥ずかしい……よう」
見た目は全く同じ、でも性格は正反対……打ち合わせの時は私と違い堂々としていた。
お姉ちゃんは……こういう、華やかな世界にぴったりの人……。
私には無理……ストレスでしかない。
私は一人で本を読んでいる時が一番楽しい。
もしも……出来るなら……こういうペンションで、夜に窓を開けて、床に座って涼しい風に当たりながら好きな人と背中合わせで、くっつきながら……本を読めれば……最高に幸せかも……。
今泊まっているペンションの部屋を見てそんな想像をしてしまう。
そして……それは……くさか……。
「はううううう、うきゃああああ……」
日下部君と……ペンションで二人っきりとか……無理いい……。
「でも……日下部君も……読書家だし、ああいうフェスなんて騒がしい所とか好きじゃなさそうだし……」
でも、もし私がお姉ちゃんになれたなら……ああいうフェスに友達や彼氏と一緒に行って、騒いだり出来るのかなぁ……楽しめるたりするのかなぁ……って、思ったりもする。
「何で……私は……こうなんだろ……」
同じなのに……私とお姉ちゃんは双子なのに……どうして……ここまで違うんだろうか……。
「逢いたい……逢いたいよ……日下部……君」
私は彼を思いながら、今日もまた『逢いたい』ってスマホにメッセージ打ち込む、でも送らない、送る勇気は無い。
もし……もしも私がお姉ちゃんだったら……性格もお姉ちゃんみたいになれたなら、このメッセージを日下部君に送れるのだろうか……?
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