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綾波明日菜の正体
二人の妹
しおりを挟む「しまった!」
隣の怪しいゴスロリ女に気を取られている間に、二人が人混みの中に紛れる。
私は慌てて後を追いかけるべく物陰から飛び出る……と、同じタイミングで隣のゴスロリ女も飛び出た。
すると、やはり思った通り、履き慣れていないであろう厚底ブーツのせいでゴスロリ女はよろけ、そのまま私にぶつかって来た!
「きゃ!」
ゴスロリ女は尻餅をつき、私はその場に倒れてしまう。
すると、恐らくさっきスーツの上から確認した時ホルスターからせりあがってしまったのか? 私の相棒M1911コルトガバメントが床に落ちそのままゴスロリ女のスカートの中に。
「し、しし……しまった!」
まずい! こんな所で人に見られたら騒ぎになってしまう! 私は慌ててゴスロリ女のスカートの中に手を入れてコルトガバメントを取り出そうとした。
「──ひ、ひいいいいいいいい!」
私がスカートの中に手を入れると、ゴスロリ女は悲鳴を上げる。
そのせいで周囲が一斉に私達に注目してしまう。
えっと……これって不味い状況なのでは?
私は、私が置かれている状況を冷静に確認してみた。
黒いスーツ姿の私がゴスロリ女のスカートの中に手を入れている。
うん、ヤバイね……しかも手を入れている理由を説明すると……もっとヤバイ事態に……。
「え? ちょっと痴漢? まさかこんな堂々と?」
周囲の人達からそんな言葉が……。
「ち、違う、私は女だ!」
髪を後ろで束ねていた私は、慌てて結んでいたゴムを外して髪を下ろし、サングラスを外した。
「──え? じゃあ痴女? 百合? きまし!」
は? なんだ? きましって? なんて事に構っている場合じゃない。
私はとりあえず周囲に構わず、ゴスロリ女のスカートの中をまさぐりコルトガバメントを探す。
「ひ! ひううううううう!!」
さらに変な声を上げるゴスロリ女……私はスカートの中に履いているチュチュをかき分け、コルトガバメントを発見すると、周囲から身体で隠す様にしてホルスターに収める。
そして返す刀で内ポケットから財布を取り出しそれを頭上に掲げた。
「あ、あった、こんな所にわたしの財布がああああ!」
ハリウッド女優宜しく、私は周囲にその演技力を見せつける。
「なんだ、そういう事か……」
「つまんねーーの」
「──きまし……」
私の演技力で納得したのか? そう言いながら周囲はぞろぞろと解散していく……だからきましってなんなのよ?!
「ふええええ……」
ゴスロリ女はそう呟いてその場にへたりこんでしまう……顔は放心状態になっている。
チュチュを履いているとはいえ、同性とはいえ、見知らぬ人からいきなりスカートの中をまさぐられては、こうなるのは仕方ないのだろう……。
「あ、あの……すみません……」
一応は謝らないと……と、私は形だけで謝罪する。
それよりも問題はこのゴスロリ女とお兄ちゃん、あの金髪ギャルとの関係だ。
二人はすでに見失っている。ただ駅から外には出ていないので、恐らくは上の階のどこかにいるのだろう。
探す手間はかかるが、見つかる可能性は高い。
なので今は二人よりも、このゴスロリ女がお兄ちゃんと、どんな関係なのか? 私はそっちの方が気になっている。
まさかこっちが彼女? なわけないよね?
「あ、あの?」
「……ひ、ひいいいいいいいい!」
「──いや、何もしないって……」
ゴスロリ女は異常な程私に怯えている……。
「い、いやあああぁぁ」
声にならない悲鳴を上げるゴスロリ女……こうなったら仕方がない……。
自分の身分を明かすのは避けたかったけど、背に腹変えられない。
「……あなた……日下部涼のストーカーなの??」
「ひいいいぃぃ……ひう!」
「私は日下部 楓、日下部 涼の妹よ!」
「……………………ええええええええええ!」
「詳しい話を聞かせて貰うわ! ちょっとそこの喫茶店まで来なさい!」
もしお兄ちゃんとかかわり合いが無かったら……と思ったが、ゴスロリ女は驚きの表情で言った。
「わ、わわ……私 日下部君と、同じクラスの、その……友達の、綾波明日菜って言います……です!」
キラキラとした目で私に向かって自己紹介をするゴスロリ女……むうう……やっぱりこの人……超可愛いじゃん……友達って……お兄ちゃんやるなあ……ちょっと見直したかも……。
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