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幼なじみと妹
しおりを挟む鼻歌混じりに歩く泉の横を少し緊張しながら歩く、異性と一緒に歩くなんて、小学校以来の事、まあ、何度も言うけど……あいつは異性の範疇に入ってないからほぼ初めての事……
「お兄様、今日は私のお買い物に付き合って頂きありがとうございます!」
「えっと、うーーん、いつものお礼がこんな事で良いのかな?」
もっとこう、何かプレゼントとか上げた方が、でもえっと……妹にお礼ってなにすればいいんだ?
「こんな事なんて……言わないで下さい、私はお兄様と一緒に居られる事が、こうやって一緒にお出かけして、お買い物が出来るって事が凄く嬉しいんですから」
「そ、そうなんだ……」
「はい! お兄様と一緒にお出かけ、一緒にお買い物、ああ夢の様です、まさか夢じゃないですよね? お兄様、ちょっと私のほっぺをツネってみて下さいませんか?」
「へ?」
「ほっぺをツネって下さいませんか? 夢じゃ無い事を確認したいので」
「え? ええええええええええええええええええ!」
僕が泉のほっぺを? いや、出来るわけない、異性の顔に触れるなんて、ましてやそんな綺麗な顔に触れるなんて、しかもツネル? で、で、出来ないよおおおおおおお! 痕でも残ったら、ど、ど、どうするの? どうやって責任を取れば良いの?
「どうぞお兄様!」
泉は立ち止まりキスでもせがむ恋人の様に僕に向かって目を瞑った。
「えっと、え? ほ、本当に?」
泉のほっぺた……天然記念物、いや、億単位の瀬戸物や茶碗に触れるよりも緊張する……本当に?
「はい! 是非に!」
「えっと、えっと、じゃあ……」
僕はそっと泉のほっぺに触れる……女の子の肌に触れるなんて、しかもこんな綺麗な顔、白い肌、いずみのほっぺはスベスベしていて、ほんのり暖かくて……
「む、無理~~~出来ないよおおお」
こんな綺麗な顔に、綺麗な肌をツネルなんて、もし1mmでも、ほんの僅かでも傷を付けたら、僕は一生立ち直れない位のトラウマを抱える事になる。
「あん、もう~~、お兄様!」
僕が触った、ツネろうとしたほっぺが少し赤見を帯びてぷくっと膨れる。可愛らしく怒った表情の泉はすぐに笑顔に変わった。
いや、本当に何億もする国宝に触れる気分だったよ、泉のほっぺは国の宝だな~~そのうち世界遺産に登録されるんじゃないかな?
「でも……お兄様が触った感触はありました、やっぱり夢じゃなかったんですね~~」
そう言ってスキップするように歩く泉、歩くと同時に水色のワンピースの裾ががヒラリと舞う、ああ、ふわふわと歩くその姿は羽が生えているかのようで、やっぱり泉は天使だったと僕は確信した。
「さいしん?」
僕が幸せの絶頂で恐らくだらけた表情をしていたその時、後ろから僕の昔呼ばれていたアダ名を呼ぶ声がした。呼ばれていたって言ってもそんな呼び方をする人間なんて一人しかいない……僕はその声にまさかと慌てて振り向いた。
「えっと…………誰?」
そこにはふわふわボブヘアー、くりっとした目の愛らしい顔立ち、ピンクのフリフリ姿の少女が立ってこっちを見つめている……えっと……誰? この可愛い系美少女は?
「はあ? 私よ私!! たった4年で忘れちゃったの!?」
「4年? 4年前っていうと小学校6年……」
僕は考え込む、3年前、僕をアダ名で呼ぶ人物は一人しかいない……
「えっと……まさかとは思うけど……えま?」
「そうだよ! しんちゃん!」
「……か、帰って来たのか? いつ?」
「一昨日かな? まだ時差ぼけでさー」
わざとらしくアクビをするえま、そのわざとらしい姿に僕ははっきりと彼女を認識した。
「お兄様?」
僕と彼女の様子を見ていた泉がどなたと言う表情で僕を呼ぶ。
「お兄様?」
その声を聞き、えまが眉をひそめ怪訝な表情に変わった。
「あ、えっと、今度、えっと、薬師丸、あ、いや、佐々井、えっと泉、あ、えっと」
僕はえまに泉の事をどう説明していいかわからずあたふたしてしまう。
「佐々井泉です、わたしの兄がいつもお世話になっております」
僕が慌てているのを横目にそう言って冷静にそして自信を持った態度でペコリと頭を下げる泉、しかし、えまの表情は相変わらず怪訝な表情、そしてその表情のまま僕に向かって言った……
「……しんちゃん、妹なんて居たっけ?」
「あーー、えっと……父さんがこの間再婚したんだ、それで」
「ふーーん、義理ってわけだ……初めまして泉さん、私、佐々木 えま……真を愛するって書いて愛真よ、4年前迄、そうねしんちゃんの妹みたいな姉みたいな存在だったかな? 宜しく新しい妹さん」
そう言って怪訝な表情のまま手を差しのべる愛真、ニコニコしながらその手を握る泉、でも泉の目は全く笑っていない。
これが漫画だったら後ろに炎でも描かれているような、そんな雰囲気で握手をする二人、何? この僕を巡って対立している様な図は、あははははそんなラブコメ展開あるわけない……よね?
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