19 / 99
お尻を……
しおりを挟む泉が僕の膝の上にいる……
僕は硬直してしまった……泉の重みが僕の膝にダイレクトに伝わる。
軽い、人間の身体、女性の身体ってこんなに軽いのかと思わされる。
5キロとは言わないが、ふわりと乗る泉の軽さに驚く、そして泉の身体の熱が徐々に僕の膝を包み込んでいく。
「…………」
こんな事してはいけない、僕は泉に降りてと言わなければと思ったが、ふわりと漂うなんとも言えない良い香り、そして泉の体温、さらには身体の柔らかさが僕の膝から脳に伝わる。そして僕の脳はその言葉を拒絶する。
幼い頃に死んだ母、僕は母の温もりを知らない。生まれて初めての女性の温もり、初めての経験、ああ、幸せだ、女の子の感触、女性の感触、たったこれだけで僕はこんなにも幸せな気分になれるのかと驚いた。
「お兄様……」
泉が小さな声で僕を呼ぶ、僕に罰をと訴える。
そうだ、そうだった、僕は今から泉に罰を与えなければいけない。泉のお尻を叩かなくてはいけない……泉のお尻を……お尻…………
女の子のお尻を……叩く……僕が?
僕が女の子のお尻を叩く、女の子のお尻に触れる……そんな事出来るわけないと思っていた。ましてや今僕の膝の上に無防備に乗っているのは、あの憧れだった、いや、今も憧れている泉だ。旧姓薬師丸 泉、あのクラスカースト最上位、いや、クラスの頂点、いや、学校の頂点……そんな女の子のお尻を叩く…………触れられる、こんなチャンスは二度と来ないかも、いやこのチャンスを逃がしたら……
僕は一生女の子のお尻を触る事は無いかも知れない。
僕はゆっくりと手を振り上げる。え、何? 僕叩くの?
そんな事出来ない、出来るわけないと頭は思っても、身体が勝手に動き出す。だ、駄目だよ、止まって、止まって僕の腕、僕の身体。
僕の目は一点を見つめている。泉のお尻の中心部、今、泉はロングのスカートを履いている。泉の丸みを帯びた美しい形のお尻が突き出すような状態で僕のやや右横にある。
振り上げた腕、僕の動きが泉に伝わる。そして泉の身体が硬直する。膝に伝わっている柔らかい感触が固くなって行くのが分かる。
泉は覚悟を決めている、僕はそう思った。一度叩けば終わる、逆に言えばチャンスは一度だけ……泉に触れられる、泉のお尻に触れられるチャンス、もう二度と来ない最後のチャンス。
僕は泉のお尻、その中心付近に狙いを付けた、そして……
腕をお尻に向け振り下ろす瞬間、僕の膝は泉の変化を感じ取った、感じ取ってしまった。震えている……泉の身体が……全身が震えていると……
僕の振り下ろされた右手はそのまま泉の右肩に、そして背中を押さえていた左手は泉の左肩に移動する。
そして僕はゆっくりと泉を起こした。
「泉……無理しなくていいよ」
そのまま泉を横に座らせ、僕は泉の肩を持ちながら、泉の目を真っ直ぐに見ながら話し始めた。
「お兄様?」
「急に兄妹なったから、急に家族になったから、泉は色々無理してるんだよね? 僕達は急に兄妹なった……何の準備もなく急に家族になったから、いや違うな、まだ家族になっていないから、泉は頑張って家族になろうって思ってくれているんだよね?」
「……」
「でもね、でもさ……そんなに頑張らなくてもいいよ。大丈夫だから、少しずつ家族になれば良いんだから……頼りない兄で泉には本当申し訳ないけど、僕も頑張るから、泉の兄として、泉の理想の兄に近づける様に僕も頑張るから、だからゆっくりと、ゆっくりと兄妹になろう、家族になろう、大丈夫、僕は泉が好きだから、大好きだから、大丈夫だから、だから焦らずゆっくりと……ね?」
僕は泉の顔を、その美しい顔を、綺麗な目を……瞳を見ながらそう言った。
泉は僕を見る、見つめている。真っ直ぐに真っ直ぐに僕を見つめ返す。その瞳に僕の顔が映っている……こんなに近くに泉は居る。泉の瞳に、瞳の中に僕は居る。でも今、泉は遠くなった……今、泉が僕から離れて行っている、少しずつ離れて行っている、僕はそんな気がした。
「お兄様…………はい」
泉はそう言い微笑んだ。
「うん」
そんな泉を見て僕もにっこりと笑った。
ゆっくりと、ゆっくりと兄妹になろう、ゆっくりとゆっくりと家族になろう、本当の家族に…………血の繋がりなんて関係ない、血が繋がっていても家族になれない家庭だってある。繋がっていなくても家族以上の関係になっている家庭だってある。焦らずにゆっくりと、ゆっくりと家族になればいい、兄妹になればいい、そうすれば……
そうすれば……そうすれば…………僕は。
泉を……諦められるから……
0
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる