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Wデート?
しおりを挟む泉との楽しい夕食を終え部屋に戻って来た……楽しい? 全然楽しくなんてなかった、苦しい……苦しかった。
なぜこんなにも苦しいのか……
泉の事を思うと苦しい、泉の笑顔を見ると切ない……なぜだ?
泉に好きな人がいるんじゃないか? 恋人がいるんじゃないか? なんて事今までだってあった。でも、こんなに苦しくなるなんて事は今まで無かった。
「駄目だ! こんな事じゃ駄目だ……泉の為なんだ! 僕は泉の兄なんだ!」
そう自分に言い聞かせる……駄目なんだって……僕じゃ、僕なんかじゃ……
僕なんかじゃ? 当たり前だろ?
背も高くない、特技もない、運動も出来ない、勉強も普通……そんな僕が……カースト底辺の僕が泉と?
「はは、あはははは、何言ってるんだろうな……泉が身近に居すぎて、僕でも可能性があるなんて思っちゃってたのか? 僕と泉は兄妹であって恋人じゃないんだよ」
そうだよ、そうなんだよね……何言ってるんだ僕は…………
「よし! 泉の恋をなんとかしよう! 兄としてなんとかしてあげよう!」
泉の恋が成就すれば、僕のこの思いも消えるんじゃ、諦められるんじゃないか?
どうすれば泉と凛ちゃんをくっつける事が出来るか? 僕は考えた…………
告白もした事がない僕が人と人をくっつけるとか、無理ゲーだよ。
「うーーん、思い付く事と言えば……前に読んだラノベであった2組のカップルでデートしてさりげなく別れて二人きりになるパターンとか?」
「あははは、そもそも友達いない僕が二人以外をって…………あ……いた」
いたよ、いるじゃないか……あいつが! 愛真が!
僕は愛真に電話を掛けた、愛真だけは全く緊張しないんだよね。
前に愛真から紙で貰って登録をした番号を電話帳から見つけ、あ、僕のスマホには他にも200件登録されてるから探すのに時間がかかるんだ。ほぼ……全部ダミーだけど……
愛真に電話を……ああ、ひょっとしてこのスマホを買って貰ってから掛ける初めての他人……、コール3回で愛真が出た。天気予報でも無く時報でもない、相手がちゃんといる電話に少し感動する。
「あ、もしもし佐々井真ですけど、愛真さんいらっしゃいますか?」
『あははは、家の電話じゃないんだから~~』
「あ、そうか、小学生の時の癖が」
『真ちゃんから掛けて来るなんて滅多に無かったけどね~~ありがとう掛けてきてくれて』
「あ、うん」
『それでどうしたの?』
「えっとね、今度の日曜日あいてるかなって、予定」
『うん? 特に無いけど……な、何かあるの?』
「ああ、えっとね……どこかに行かないかなって」
『…………』
「あれ? 愛真?」
『行く!!』
「うお!」
『し、信じられない……まさか真ちゃんから……ああ、真ちゃんが大人に、う、嬉しい』
「あ、えっとね」
『どこに行こうか~~映画とか? 今何かやってたっけ?』
「あ、えっとね、遊園地なんかが定番なんじゃないかなって」
混んでる遊園地じゃないとはぐれるって言う定番イベントが出来ないし。
『いいね~~遊園地、真ちゃんと遊園地かーー超楽しみ!』
「あ、えっとねごめん、まだ決まりじゃないんだ、他の人の予定を」
『え! 二人きりじゃないの?』
「あ、えっとね、一組カップルに」
『えええええ! ダブルデート! 真ちゃんが!』
カップルにしたい二人がって言いたいのに相変わらず押しが強いと言うか人の話しを聞かないんだから……
「うん、まあ……」
『良いよ~~良いね~~真ちゃんがそんな大人になってたなんて』
「ああ、うん、だから決まったらメール送るから」
なんか説明するのがめんどくさくなってきた。
『うん! わかった! 楽しみに待ってるからね!』
そう言って電話を切った。
愛真の高いテンションに少し萎えたけどここまで来たら一気に決めなくては! 僕は気持ちを切り替え、もう一度凛ちゃんにラインを送った。
『凛ちゃん日曜日暇?』
『うお! いきなりそう来たか!』
『そう?』
『なんかさーー佐々井君と話してると私って大したこと無いのかなってさー自信を無くしてたのよね』
『ミカンちゃんは大したことあるよ!! 凄い人だよ!』
『ああ、うんありがとう、ミカンちゃん言うなし』
『あ、凛ちゃん♡』
『佐々井君少しキモいよ♡ まあ、でも正体を知られて弱みも握られて、何も無いとか、私って魅力無いのかなって思ってたのよね』
『え、魅力しか無いけど?』
『あ、ありがとう』
『で、日曜日なんだけど』
『うん、まあ、特に予定は、でもあまり過激なのはちょっとって言うか』
『本当に! 遊園地に行きたいなって』
『遊園地ですかそうですか』
『え? 嫌?』
『いや、健全過ぎてまた自信が』
『健全?』
『ううん、何でもない、良いよ』
『あ、じゃあちゃんと決めたら時間と場所送るね』
『決めてないんかーーい、まあいいや、じゃあよろ~~』
凛ちゃんも大丈夫、後は泉なんだけど……まあ明日でいいか……
僕はそのまま寝ないで計画を練った、泉の恋の為に、凛ちゃんの為に……
そして翌日朝
「ねえ泉、今度の日曜日ってあいてるかな?」
「日曜日は特に予定は入って無いですが?」
「遊園地行かないかな?」
「え! あ、はい喜んで!」
嬉しそうに笑う泉の顔を見て僕は何も言えなくなってしまった。
計画は完璧、間違いなく泉と凛ちゃんは二人きりに……でもそうすると……この笑顔は……もう僕1人の物じゃ無くなるんだ、そう思ったら、ぼくは何も言えなくなってしまった。
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