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泉はやはり……
しおりを挟むショックだった、でも……わかっていたのかも知れない。
あれだけ皆に慕われ愛されカーストトップに君臨しているんだから……
女子が圧倒的に多いうちの学校、その中で絶大なる人気を手中にしている泉……
好きだからこそ相手も好きになって貰える……つまり泉は女の子が大好きという事だ。
そして僕の中で泉と可愛さを二分するみかん……凛ちゃん。当然泉も前から目を付けていたんだろう。日頃は変装のようにメガネと髪型で可愛さを隠している凛ちゃん……でも、それぐらい見破る力が泉にはある! と思うんだ。
泉は凛ちゃんが好き……今までその恋心を隠していたんだろう……わかるよ、わかる……だからあえて距離を取っていたんだね……そうか、泉は僕と一緒なんだ! 泉の事が好きで、好きすぎてあえて距離を取っていた僕と……
そうだ……そうだよ、そうなんだよ……カースト上位、泉に彼氏はいない……らしい……凛ちゃんとは距離を置いている……全てが繋がったじゃないか。
僕は泉の事が好き、でも泉は凛ちゃんが好き……僕と泉は兄妹、泉は僕と本当の兄妹になることを望んでいる。
そして僕の憧れの凛ちゃんが好き、僕と泉は同士なんだ。
兄妹で同じ人を好きになってしまうなんて……ああ、こんな所だけ似なくても……
「僕は……でも僕は……泉の……兄だから」
凛ちゃんがどう思うか分からない、禁断の恋……でも泉なら……凛ちゃんも受け入れてくれるかも知れない。
僕は凛ちゃんにラインを送った、そ、そう言えば挨拶しただけで会話としては初ラインになるんだよね。でも大丈夫! 僕は練習したから、いつもしてたから! PCからスマホにスマホからPCに、最近導入された削除機能もきっちりとマスターしている。
この日の為に買っていたスタンプ! 遂に自分以外に送る時が来た……そう言えば泉とはラインやってなかったな……まあ良いか……
僕はスマホを取り出しアプリを立ち上げ練習通りに凛ちゃんにメッセージを送った。
『凛ちゃんて、女の子好き?』
『おい! 最初に送ってきたラインがこれってどうなの?』
瞬間既読が付きすぐに返事が来る、良かったいきなり既読スルーとかされなくて……
『あ、ごめん、えっと初めて送らせて頂きます、この度友達に任命させて頂きました佐々井真でございます、本日はお日柄も良く初めてのラインをするには最適な天気となりました』
『あははははは、面白い~~なんなの佐々井君て面白すぎる』
心外だなあ、真面目な文章を書いて面白がられるなんて……
『それでどうなの? 男好き? 女好き?』
『いや、そう聞かれて男好きって佐々井君に言えるわけないでしょ!』
『なんで?』
『もう本当なのかな佐々井君って、そうねえ、まあ女の子も可愛いと思うけどね』
『そうか分かったよありがとう!』
『ちょ! 佐々井君?』
そうか……凛ちゃんも禁断の恋に対しては、まんざらじゃないって事か……
「良かったね、泉……」
これを泉に伝えれば……泉は多分喜ぶだろう、そしてそ、うなれば……僕は諦められる。
いや、諦めるも何も、最初からそんな可能性なんて存在して無いんだ。本当……何を言ってるんだろうな僕は……
二人が付き合う事になっても、何も変わらないじゃないか、凛ちゃんは友達、泉は妹……
でもなんだろう、胸が痛い……さっき見た泉の悲しい顔が頭を過る。
「駄目だ、何か分からない僕の気持ちの為に、二人の仲を裂くなんて……僕には……出来ない」
僕はベットから立ち上がり意を決して凛ちゃんの事を伝えるべく、泉の部屋に向かった。
現在母の部屋に泉はいる。母の面影を感じる部屋、母が死んでからなるべく触らずにそのまま残していた部屋だ。
僕は泉の部屋をノックする、返事をしてくれない、無視されるかもと思いきや、泉はあっさりと扉を開けてくれた。
「お兄様……」
「えっと泉……ちょっと良いかな?」
「え? あ、はい……どうぞ」
暗い顔……あの天使の様な泉がこんなにまで暗い顔をしているなんて、そこまで凛ちゃんの事を……
僕の胸が再びズキっと痛む。
「えっと、ここで大丈夫だから……えっと……その」
僕は早く凛ちゃんの気持ちを泉に伝えたい、そして泉にまたあの天使の様な笑顔を取り戻して貰いたい、僕は兄としてこれ以上泉を泣かせたくない! そう思い勇気を出して言った。
「泉! 凛ちゃんと僕は友達なんだ、ただの友達なんだ! ちょっとした趣味の友達なんだ、だから……その……泉は凛ちゃんと……」
なんだ、辛い、この先を言うのが…………辛い
「お兄様? 友達……そ、そうか……そうだったんですか!」
「え?」
泉の顔がパッと明るくなった、いや、そんな物じゃない、満面な笑み、いつも通りの天使の様な笑顔になる……そうか……やっぱり……
ズキズキと僕の心が痛む、泉の笑顔を見れば見る程に……苦しい、なんでこんなに苦しいんだ?
「そうか……友達か……お兄様……嬉しい」
「あ、うん」
「さっきは申し訳ありませんでした、私の早とちりでお兄様に失礼な態度を取ってしまって」
泉が深々とお辞儀をする、土下座せんばかりに深々と、サラサラと髪が泉の前に流れ落ちていく、細い絹糸の様な髪がサラサラと、僕は一瞬その美しい光景に見とれてしまう。
「----えっと……いや良いんだよ、僕も勘違いさせる様な事を言っちゃってごめん」
「良いんです、そうか……友だちか……うふふふ」
顔を上げ僕を嬉しそうに見つめる泉……なんだろうこの顔が見たかったのに今は見たくない、一刻も早くこの場を立ち去りたい。
「うん、じゃあそう言う事なんで」
「あ、はいお兄様、今からお夕飯の支度しますね」
「うん、ありがとう」
「はい、お兄様」
そう笑顔で僕に答える泉。僕はその笑顔をチラリと見ると、踵を返し部屋に戻った。
苦しくて辛くて……僕はもうそれ以上泉の笑顔を見たく無かった。
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