62 / 99
クリスマスは誰と
しおりを挟むまだサポーターは取れないし、走ったりは出来ないが、松葉杖をつかわなくてもよくなり、ようやく一人で普通に歩けるようになった。
本当に泉や愛真、凛ちゃんには凄く迷惑をかけた。
なにかお礼をしなければと僕はそれぞれに聞いたが、皆そろって「いいよ」って言ってくれた。
でも……それじゃ僕の気が済まない……僕は再度みんなにメール(泉には直接)を送り、なんでも言う事を聞くって言った。
すると愛真は『な! なんでも!! じゃ、じゃあじっくり考えてからお願いする!(^v^)』と返信が……や、やばいかな?
そして凛ちゃんは『あはははははは、なんでもとかキモ~~い』と返信が……
そして泉は「最近休みの日は愛真さんの家に行ってばかりで……できましたらそろそろゆっくりと1日お兄様とお話がしたいなぁ」と頬を赤らめそういう泉、可愛い、可愛すぎる……でも……それって……
学校は昨日から冬休みに入った。期末試験の事は聞かないで……そして明日はクリスマスイブ……僕はイブに誰と過ごそうかなんて事を今日までずっと考えていた。
「あ、アホか……誰ととかって僕は何を言ってるんだ……」
そしてその考えが自分にとってあまりの場違い、筋違い、荒唐無稽、不条理、とんちんかんな事を言っていると気付き、僕は今悶え苦しんでいた。
「なんだ? 何を言ってるんだ僕は……何モテモテのリア充男みたいな事を言ってるんだ?」
そもそもクリスマスは明日……今日まで3人の予定も聞いてない、聞かれてもいない……つまり……そう言うことだ。
去年まではクリスマス? 何それ美味しいの? と思いながら僕は一人精進料理を作り「僕は仏教徒だ!」とか意味もわからず一人宗教戦争を繰り広げながら食事に勤しんだり、どうやったらクリスマスを廃止に出来るか? と言う事を某掲示板にて延々書き込むという非常に有意義な事をして過ごしていた。
そんな僕が、何を意趣返しして誰かと、しかも女の子と可愛い女の子と楽しもうとか思ってるんだ?
いや、そもそも今の時点で3人から何も言われていないって事がすでに答えなんじゃ無いのか?
そもそもあの泉が、カースト最上位のあの泉がクリスマスに友達と過ごさないわけがない……
「パリピーパリピー、パーティーピーポー」
あああ、なんかわけのわからない言葉が……
そして凛ちゃんは……「今は稼ぎ時~~寂しい男の子達がお店にわんさか訪れるからね~~」って言ってた……ああ、僕も行こうかな……
最後に愛真……あいつ確か僕に告白したよね? 僕の事が……好きって……でもあれからそういう話は一切無い……いつも通り、昔の通りの愛真に戻ってしまった。
そして3人が3人共にクリスマスの事にも一切触れてくれなかった。
「夢だったの? 幻だったの?」
自分で言うには恥ずかしい、断られるのは辛い……そんな女々しい考えでいたばっかりに前日の今日まで何も出来なかった。
向こうから言ってくれるんじゃ、誘ってくれるんじゃないかと……
「僕って本当……ヘタレだよなぁ……何も変わってない」
友達なんかいらないって思ってたわけじゃない、でも自分から友達になってくれって言う勇気が無かった。向こうから言ってくれるんじゃないかって常に思っていた。でもこんな僕に「友達になろう」なんて言ってくれる人なんているわけ無かった。愛真以外は……
「今から愛真を誘ったら……」
そう思ってまた僕は自分を軽蔑した。まただ、また愛真に……また愛真の好意を利用しようとしている。一度は嫌いになったんじゃないのか? 僕の勝手な思いで愛真を拒絶したんじゃないか? 今また同じことを繰り返そうとしている自分に、自分の考えに辟易してくる。
「いいさ……今までずっと一人だったんだから……今年も一人で……大丈夫僕は一人には慣れている」
そう自分に言い聞かせた直後部屋の扉をノックする音が!
「お兄様?」
「あ、ど、どうぞ」
泉が僕の部屋に……あ、明日の事か!
「お兄様、明日の夕食なんですが」
「あ、うん」
夕食! どこか、どこかのレストランでとかそう言う。
「お兄様は明日ご予定とかありますか?」
「ううん、全然、全然ない、全く無い!」
「そ、そうですか!」
泉は嬉しそうにそう言う、これは! 僕は期待した、やっぱり泉だ、泉はやっぱり僕の天使……
「私ちょっとお昼にお友達とお出かけしますので、お夕飯はいつもより少し遅くなりますね」
「え?」
「申し訳ありません、帰ってきてからすぐにお作りしますので、お部屋で待っててくださいね」
「あ、ああ……うん」
「それでは、お休みなさい」
「あ、うん……お休み」
僕がそう言うとニッコリ笑って泉は部屋を後にする。
「夕飯は準備してくれるって事は夜は一緒にいられるって事か……」
でもクリスマスのクの字も言わないのは……僕に気を使ってくれたのかなぁ……
泉はお昼にクリスマスパーティーに行くんだろう……僕は一人家に……
「うううううう、クリスマスなんて、クリスマスなんて大嫌いだあああああああ!」
よし! わかった! 今年もやるぞ! 今年も気合いを入れて掲示板にクリスマス廃止を書き込んでやるうううう!!
0
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる