クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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皆見てるよ!

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「ふーーん、そうなんだ」

「うん……」

 翌日学校での昼休み、僕は凛ちゃんといつもの中庭でお昼を食べていた。
 凛ちゃんは朝から僕の様子がおかしいのに気付いたらしく、昼休みに僕をここに連れて来て話を聞かせろと言ってきた。

 一瞬戸惑った、言っても良いのだろうかと、しかし僕は素直に昨日の顛末を全部凛ちゃんに言った。口が軽いって? だって凛ちゃんに嘘は付けない、怖いってのもあるけど、嘘は全部バレてしまうんだ……


「愛真さんに関しては真君が悪いよ、二人は家族じゃないんだから、そんなのただの勘違いだよ」

「うん、今はわかるよ……僕を一緒に連れていくわけには行かないって事ぐらい、単なる僕の勘違い、わがまま……でも……何も言ってくれなかったのは……正直今でもわだかまりがあるよ」

「――そうだねえ、でも……それもわかる気がするなぁ……中々言いづらいよね、真君って友達居ないからね~~」

「ええええ?」

「えーーーだってさあ、友達全然居なかったんでしょ? 愛真さんだけだったんでしょ? 私が居なくなったら真君どうなっちゃうんだろ、もしかして泣きながら私を追いかけて来るかも、困るううう~~みたいに思うんじゃない?」

「し、しないよ!」

「あはははは、でも……愛真さんなりに悩んでそうしたんじゃないかな、仕方ないよ子供だもん、嫌な事は言えないよ」

「うん……」

「それで泉さんが泣いてた理由がわからないって?」

「うん」

「うーーーーん、馬鹿なの真君?」

「えええええええええ!」

「愛する人が、家族が亡くなったんでしょ? 泣くに決まってるじゃない」

「いや、それくらいわかってるよ、でも、なんであのタイミングなのかなって」

「タイミング?」

「うん、泉って裏表無いって言うか、いつも明るくて優しくて、だから少しショックで、本当は……誰も居ない時は、ああなのかなって」

「ああ?」

「僕が居ないから泣いてたのかなって」

「なにそれ自慢?」

「ちが、違う……自慢とかじゃなくて……泉は僕で紛らわしてたのかなって、寂しいとか悲しいって事を」

「――それで?」

「僕に向けてくれていた優しさとか実は全部嘘で、僕じゃなくて僕を通して死んだ泉のお兄さんに対してやっていたのかなって」

「うんうん」

「僕自身は? 泉は僕の事を見てくれていないって、お兄さんの代わりってだけで、その……僕である意味はないんじゃないかなって……」

「あははははははは」

「そこで笑う?」

「だって、面白いんだもん」

「酷い!」

「あのね、まず一つ、裏表の無い人なんていないよ?」

「え?」

「誰に対しても裏表の無い人なんて存在しないの、人は必ずなにかを隠すの、全てオープンなんて人いたら見てみたいよ」

「そうなの?」

「それはそうでしょ? 真君私に隠し事してない?」

「え? 特には……」

「そう? じゃあなんでも隠さずに全部言える?」

「それは…………言えない……事も」

「でしょ?」

「で、でも……泉はずっと元気でずっと明るて、誰に対しても優しくて」

「うんうん」

「だから……」

「あのさ、私前に言ったよね? 泉さんは嘘つきだって」

「え?」

「あの子は嘘つきだよ、人にも自分にも」

「自分にも」

「そう、自分に嘘をついてる」

「どういう事?」

「さあね~~どういう事かな~~?」

「ええええ、なにそれ」

「それにしても、真君ってこの数日で随分と自信がついた事ですなぁ」

「自信?」

「うん、まあ愛真さんと私と泉さんって美少女三人に囲まれれば自信がつくよね~~」

「それ自分で言う? いや、そんな自信なんて全然」

「そう、だって真君って透明人間なんでしょ? そんな事言ってたのに、僕を見くれないって、あはははははは」

「あ……」

「自覚してなかったんかーーーい」

「…………うん」

「あははは、大丈夫だよ、今はちゃんと見てるよ、愛真さんも、泉さんも、そして……私も……ね」
 凛ちゃんはそう言って僕を見つめてくれる……じっと僕の目を、その綺麗な瞳の中に僕がいる。凛ちゃんの中に僕がいる……

「凛ちゃん……」

「あはははははは、やだああ、真剣な顔しちゃって~~」
 真剣な顔から一転いつもの笑顔で僕の肩をバシバシと叩く凛ちゃん、いや、ちょっと、痛い……

「――いや、えっと……あのさ」

「ん?」

「その……ありがと」

「なにが?」

「ううん、言いたかっただけ」

「あはははははは、なにそれ、キモーーい」

「酷い!」

「あはははは、さあて、じゃあそろそろ教室戻ろっか」
 凛ちゃんはそう言うと立ち上がり僕に手を差しのべる。その差しのべられた手を僕は握る……暖かい手……凛ちゃんの暖かさが心の暖かさが伝わってくる。

「あのさ凛ちゃん」

「うん? なあに?」

「ううん……なんでもない」

「そか……」
 凛ちゃんに支えられながら教室に戻る。今、色んな意味で僕を支えてくれる凛ちゃん……僕は今、凛ちゃんの事が、どんどん好きになっている。もちろん友達として……だけど、でも凛ちゃんは僕の事をどう思っているんだろうか?

 そして……泉は……凛ちゃんの言ってる通り、本当に僕の事を見てくれているんだろうか?
 




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