クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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全てを受け入れろ、そうすれば全てを手に出来る。

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 お風呂から上がり部屋に戻るとパジャマ姿の僕の義妹、泉がベットの上で正座をしていた。

 三つ指をつかれてお辞儀でもされたらとドキドキしたが、始まったのは説教だった。

「お兄様、そこに座って下さい」

「は、はい……」
 僕は言われた通りベットに上り泉の対面で正座をした。

「お兄様……お兄様は日頃学校ではあんなにおとなしくなされているのに、何故メイドとなるとこうも積極的になられるのですか?」

「いやあ……それほどでも」

「誉めてません……」

「あ……はい」
 わかってる、わかってるけどおちゃらけてみた。
 泉って真面目というか、こういう洒落みたいな物が通用しないんだよねえ……それがあったらもう少し……。

「お兄様何か言いたい事でも?」

「いえ! ありません」
 僕はブンブンと首を横に振る、そのまま頭が1周するんじゃないかってくらい……怒っている時の泉は本当に怖い……いつもは天使なのに……今は悪魔そのものだ。

「……とにかく、お兄様は私の兄なのですからね。
特にお婆様の前であのようなハレンチな事をされては困りますから」

「はーーい」

「返事は短く!」

「は、はい!」

「良くできました」
 悪魔の顔から一転天使の微笑みに変わる……ジキルとハイドでもここまで変わらないよ全く……。

「さて、じゃあ足を崩して下さいお兄様」

「あ、うん」
 そう言われ僕は正座から胡座に切り替え様としたが、足が痺れて前のめりに……。

『ポスン……』
 真っ暗になった視界でぼくの耳からそんな音が聞こえて来た……いや……『ポスン』よりも『ふにゃん』に近いかなぁ……なんて冷静に考えていた。
 
「…………」

「…………」
 暗闇の中で顔が柔らかい感触に包まれる……これって一体……停電? いやなんか微かに明るい……顔の表面はサラサラとした布の感じが……まるでさっき見た泉のパジャマの様な……。
 ここに来て僕はようやく思い出す。この前のこうなる前の状況を……そうだった正面には泉が居たんだった! つまりこれは……。

 僕は慌てて後退る。視界が戻り目の前には泉の……胸が!!

「ああああああああ!」
 僕は泉の胸に顔から飛び込んでいた。

「お兄様? 大丈夫ですか?」
 
「い、いや、ご、ごめん! ごめんなさい!」
 さっき言われたばかりなのに、でもわざとじゃない! そう言って謝りながら泉の顔を見た。場合よってこのまま土下座して謝らなければと思った。しかし泉はさっき様な鬼の形相ではなく、ただただ心配そうな顔をしていた。

「お兄様、足が痺れたのですか? 申し訳ありません」

「え、あ、いや……何で泉が謝る? 僕の方が泉にもっと謝らなきゃいけないと思うんだけど?」

「お兄様が? 何故? そもそも今何故な私に謝られたんですか?」

「いや……泉の胸に顔を付けちゃったから」

「お兄様を受け止められて良かったです」

「……あれ? 怒らないの?」

「何をですか?」

「いや……」
 あれ? さっきあんなにハレンチな事はするなって言ってたのに……言われたばかりでまたって怒られるかと……でも泉全く怒る気配が無い。だから僕は恐々だけど泉に聞いてみた。

「あのさ……今、泉の……胸に顔を押し当てちゃったけど……怒らないの?」
 まるで泉に怒って下さいと言っている様だけど、何か気になった……いや、前から気になっていたと言った方が良いだろう。

「……怒る? 何故ですか?」

「いやだから、その……顔とはいえ、泉の胸に触っちゃったし」

「はい……それで何故私が怒らないといけないのですか?」
 何か話が全然噛み合わない……。

「いや、女の子の胸を触るなんて駄目ですって怒るかと思ったんだけど、怒らないの?」

「勿論怒りますよ?」
 なんだか話が堂々巡りになってきた……一体どういう事なのか?

「だから……今、怒ってないじゃ……」
 僕はそう言いかけた所で思い付く、いや、そんな事は……でも……まさか……僕は勇気を出して泉に聞いてみた。

「あの……えっと……僕が泉に触るのは問題ないって事?」

「はい勿論ですよお兄様」
 泉は笑顔でそう答える…………えええええええええ!

「じゃ、じゃあ……さっきのお風呂で背中流すの……メイド……さんじゃなくて泉だったら……泉に頼むのは良いの?」

「はい勿論ですよ? 妹が兄のお背中を流すのに、いいえ一緒にお風呂に入る事に何か問題でも?」

「…………」
 屈託の無い笑顔でそう言われ僕は段々怖くなってきた。
 言われてみれば怪我をした時に一緒に入ったし……。

「えっと、僕に見られたり、触られたりするって恥ずかしく無いの?」

「触られるのは全然恥ずかしくありません、でも前に裸を見られた時は少し恥ずかしかったです」

「だよねえ……」
 良かった、少しは羞恥心を持ち合わせていたよ、泉の感覚が変だと思った。僕は少しだけ安心した。しかし泉は続けて怖い事を言い出した。

「はい、お見苦しい物をお見せしてしまって、あの時は恥ずかしかったです、申し訳ありません」

「……お見苦しい……お見苦しって…………えっと……じゃあさ、僕以外に裸を見られたら泉ってどう感じるの?」

「そんなのお兄様以外に見せるわけありません!」

「いや、例えば偶然、偶然とかだったら」

「偶然裸を見られるなんてあり得ませんが、恥ずかしいに決まってます!」

「だよね……」

「お兄様ったらさっきから変な質問ばかり、ああ、そうですか先ほど一緒に入りたかったんですか? お見苦しい物をまたお兄様にお見せするのは少し恥ずかしいですが、お兄様さえ良ければ私はいつでも」

「いや、いいです、大丈夫です!」

「そんな否定されなくても……やはりこの間お見苦しかったのですね……」
 しょぼんと落ち込む泉に僕思わず言った……言ってしまった。

「見苦しくなんか無い! 泉の身体……綺麗だった」
 勿論はっきりと見ていない、頼んだのに誰も書いてくれなかったし……。


「お兄様は本当にお優しいですね、嘘でも嬉しい……」
 泉は僕を見てそう言いにっこりと笑った。嘘じゃない……でもそうは言えなかった。
 言ったら一体どうなってしまうのか、ここに来てようやく泉という人物がわかってきた。

 泉は僕に対して、いや、兄に対して羞恥心は一切ない……触られる事などなんとも思わないのだろう、多分何の要求も受け入れてしまう。

 僕を男として認識していないって事だ。
 凄く寂しい思いが頭を過るのと同時に僕の脳に悪魔が悪魔の考えが宿った。

 
 もし僕がそれを全て受け入れてしまえば、このブラコン少女の全てを大好きな彼女全てを…………僕の物に……出来るかも知れない……。
 

 


 

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