78 / 99
全てを受け入れろ、そうすれば全てを手に出来る。
しおりを挟むお風呂から上がり部屋に戻るとパジャマ姿の僕の義妹、泉がベットの上で正座をしていた。
三つ指をつかれてお辞儀でもされたらとドキドキしたが、始まったのは説教だった。
「お兄様、そこに座って下さい」
「は、はい……」
僕は言われた通りベットに上り泉の対面で正座をした。
「お兄様……お兄様は日頃学校ではあんなにおとなしくなされているのに、何故メイドとなるとこうも積極的になられるのですか?」
「いやあ……それほどでも」
「誉めてません……」
「あ……はい」
わかってる、わかってるけどおちゃらけてみた。
泉って真面目というか、こういう洒落みたいな物が通用しないんだよねえ……それがあったらもう少し……。
「お兄様何か言いたい事でも?」
「いえ! ありません」
僕はブンブンと首を横に振る、そのまま頭が1周するんじゃないかってくらい……怒っている時の泉は本当に怖い……いつもは天使なのに……今は悪魔そのものだ。
「……とにかく、お兄様は私の兄なのですからね。
特にお婆様の前であのようなハレンチな事をされては困りますから」
「はーーい」
「返事は短く!」
「は、はい!」
「良くできました」
悪魔の顔から一転天使の微笑みに変わる……ジキルとハイドでもここまで変わらないよ全く……。
「さて、じゃあ足を崩して下さいお兄様」
「あ、うん」
そう言われ僕は正座から胡座に切り替え様としたが、足が痺れて前のめりに……。
『ポスン……』
真っ暗になった視界でぼくの耳からそんな音が聞こえて来た……いや……『ポスン』よりも『ふにゃん』に近いかなぁ……なんて冷静に考えていた。
「…………」
「…………」
暗闇の中で顔が柔らかい感触に包まれる……これって一体……停電? いやなんか微かに明るい……顔の表面はサラサラとした布の感じが……まるでさっき見た泉のパジャマの様な……。
ここに来て僕はようやく思い出す。この前のこうなる前の状況を……そうだった正面には泉が居たんだった! つまりこれは……。
僕は慌てて後退る。視界が戻り目の前には泉の……胸が!!
「ああああああああ!」
僕は泉の胸に顔から飛び込んでいた。
「お兄様? 大丈夫ですか?」
「い、いや、ご、ごめん! ごめんなさい!」
さっき言われたばかりなのに、でもわざとじゃない! そう言って謝りながら泉の顔を見た。場合よってこのまま土下座して謝らなければと思った。しかし泉はさっき様な鬼の形相ではなく、ただただ心配そうな顔をしていた。
「お兄様、足が痺れたのですか? 申し訳ありません」
「え、あ、いや……何で泉が謝る? 僕の方が泉にもっと謝らなきゃいけないと思うんだけど?」
「お兄様が? 何故? そもそも今何故な私に謝られたんですか?」
「いや……泉の胸に顔を付けちゃったから」
「お兄様を受け止められて良かったです」
「……あれ? 怒らないの?」
「何をですか?」
「いや……」
あれ? さっきあんなにハレンチな事はするなって言ってたのに……言われたばかりでまたって怒られるかと……でも泉全く怒る気配が無い。だから僕は恐々だけど泉に聞いてみた。
「あのさ……今、泉の……胸に顔を押し当てちゃったけど……怒らないの?」
まるで泉に怒って下さいと言っている様だけど、何か気になった……いや、前から気になっていたと言った方が良いだろう。
「……怒る? 何故ですか?」
「いやだから、その……顔とはいえ、泉の胸に触っちゃったし」
「はい……それで何故私が怒らないといけないのですか?」
何か話が全然噛み合わない……。
「いや、女の子の胸を触るなんて駄目ですって怒るかと思ったんだけど、怒らないの?」
「勿論怒りますよ?」
なんだか話が堂々巡りになってきた……一体どういう事なのか?
「だから……今、怒ってないじゃ……」
僕はそう言いかけた所で思い付く、いや、そんな事は……でも……まさか……僕は勇気を出して泉に聞いてみた。
「あの……えっと……僕が泉に触るのは問題ないって事?」
「はい勿論ですよお兄様」
泉は笑顔でそう答える…………えええええええええ!
「じゃ、じゃあ……さっきのお風呂で背中流すの……メイド……さんじゃなくて泉だったら……泉に頼むのは良いの?」
「はい勿論ですよ? 妹が兄のお背中を流すのに、いいえ一緒にお風呂に入る事に何か問題でも?」
「…………」
屈託の無い笑顔でそう言われ僕は段々怖くなってきた。
言われてみれば怪我をした時に一緒に入ったし……。
「えっと、僕に見られたり、触られたりするって恥ずかしく無いの?」
「触られるのは全然恥ずかしくありません、でも前に裸を見られた時は少し恥ずかしかったです」
「だよねえ……」
良かった、少しは羞恥心を持ち合わせていたよ、泉の感覚が変だと思った。僕は少しだけ安心した。しかし泉は続けて怖い事を言い出した。
「はい、お見苦しい物をお見せしてしまって、あの時は恥ずかしかったです、申し訳ありません」
「……お見苦しい……お見苦しって…………えっと……じゃあさ、僕以外に裸を見られたら泉ってどう感じるの?」
「そんなのお兄様以外に見せるわけありません!」
「いや、例えば偶然、偶然とかだったら」
「偶然裸を見られるなんてあり得ませんが、恥ずかしいに決まってます!」
「だよね……」
「お兄様ったらさっきから変な質問ばかり、ああ、そうですか先ほど一緒に入りたかったんですか? お見苦しい物をまたお兄様にお見せするのは少し恥ずかしいですが、お兄様さえ良ければ私はいつでも」
「いや、いいです、大丈夫です!」
「そんな否定されなくても……やはりこの間お見苦しかったのですね……」
しょぼんと落ち込む泉に僕思わず言った……言ってしまった。
「見苦しくなんか無い! 泉の身体……綺麗だった」
勿論はっきりと見ていない、頼んだのに誰も書いてくれなかったし……。
「お兄様は本当にお優しいですね、嘘でも嬉しい……」
泉は僕を見てそう言いにっこりと笑った。嘘じゃない……でもそうは言えなかった。
言ったら一体どうなってしまうのか、ここに来てようやく泉という人物がわかってきた。
泉は僕に対して、いや、兄に対して羞恥心は一切ない……触られる事などなんとも思わないのだろう、多分何の要求も受け入れてしまう。
僕を男として認識していないって事だ。
凄く寂しい思いが頭を過るのと同時に僕の脳に悪魔が悪魔の考えが宿った。
もし僕がそれを全て受け入れてしまえば、このブラコン少女の全てを大好きな彼女全てを…………僕の物に……出来るかも知れない……。
0
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる