77 / 99
お背中流します!
しおりを挟む「し、真様、お風呂の準備が……」
「あ、ありがとう」
「いえ……」
メイド様Bさんが僕の部屋に再びやってきた。
時間的に食事の後のお風呂になったけど……まあ、あまりこだわっていないのでと僕は着替えを鞄から取り出し部屋をでる。
メイド様Bさんがやはり案内してくれるらしく、前を歩く……。
エレベータには乗らずに通り過ぎ、部屋とは反対側の廊下の端の扉を開ける。
ちなみに、部屋にはトイレと洗面は付いていたが、やはりホテルではないので、お風呂までは付いていない。
「こちらでございます」
扉を開けると広々した脱衣場……はっきり言って僕の家の部屋よりも大きい。
「あ、ありがとう」
そう言って中に入り、服を脱ごうと……服を脱ごうと……服を……。
「えっと……あの?」
「ふぁ! ふぁい!! お手伝いでしょうか!!」
「なんの手伝いだよ……、あの……」
「ふぁ!ふぁい!! お背中を……流せばいいのでしょうか?」
「いや、だから頼んでないんだけど」
「私はメイド長から真様のお手伝いをしなさいと頼まれています! な、な、なんなりとお申し付けくださいいいいいい」
「いや……そういうのは……」
メイド様が背中流してくれるとか、凄く凄く興味があるけど、多分泉に怒られるから……。
「大丈夫だから、何かあったら呼ぶから」
「私ではお役にたたないと……」
メイド様Bさんはそう言うとメソメソと泣き出す。
「いや、あの……」
「私……まだ入りたてで、なんのお役にも立てなくて……奥様にもメイド長にもなにも恩返しできなくて……」
「あ、えっと……それは」
それは可哀そうだけど、そんな事を僕に言われても……。
「初めてのお客様のお世話係なんです! 私役に立ちたいんです! なんでもお申し付けください!」
必死の懇願……ていうか初めてが僕って、安桜さん…僕で練習させるつもりか?
今一納得がいかない……でもまあ、僕なら身内みたいな者だし……。
かといって男嫌いのメイド様にして貰う事なんて……。
「うーーーーん」
「真様! 私なんでも頑張ります! 男の人が苦手なのも克服したいんです!」
「いや、でも」
メイド様に懇願されると僕も何かしてもらわなければって思うんだけど、まさか一緒にお風呂に入るわけにもいかない……かといって脱がして貰うとか、どこの世界の王様だよってなるし、何よりそんな事が泉に知れたら……。
「真様……」
涙ながらに懇願される……ああ、メイド様を泣かしてしまった。
「じゃあ……背中だけ流して貰おうかなあ……」
ああ、言ってしまった……でも夢のメイド様のお背中流し……。
「!!……はい……かしこまりました」
メイド様Bさんはそう言うとメイド服を!
「いいから! 服は脱がなくて良いから!」
「でも……それでは」
「そんな簡単に脱がないでよおおお」
どこのエロゲーだよ全く……メイド様はメイド服を着てるからメイド様で、脱いだらただの人に……。
「ちょっと後ろを向いてて……恥ずかしいから」
「はい……」
メイド様Bさんが後ろを向いているのを確認して僕は素早く服を脱ぎバスタオルをきつく腰に巻いた。
「いいよ……」
「はい……きゃああああああああああああ!」
「ええええええええええ!」
「は、裸……男性の……裸かあああああああ……」
「ああああああああ!」
顔を真っ赤にしてその場でに倒れこむメイド様Bさん。
くれぐれも言っておくけど、下半身はバスタオルを巻いているからね! 上半身裸なだけだからね!
僕はメイド様Bさんに近づき彼女を抱き起した。
「えっと、大丈夫?」
目は開き、意識はあるようだけど、メイド様Bさんの瞳がグルグルと回っている。
「ふえええええええ……、らい、らいじょうぶうですうう」
グルグルの回る目が、焦点がゆっくりと僕の顔に集まる。
「ち、ちか、近いいいいいいいい!!」
今度は気を失ってしまうメイド様Bさん
「ええええええ! ちょ、ちょっと!!」
僕はメイド様Bさんをゆさゆさと揺らしなんとか起こそうとしたが、完全に気を失ってしまっている。
ゆさゆさと揺する度に、ゆさゆさとメイド様Bさんの胸が……
ゆさゆさ、フルフル、ゆさゆさ、フルフル……
「結構大きいな……」
「何がですか? お兄様?」
「うわああああああああああああああああ!」
「お兄様? これはどういう状況下かご説明してくださいますか?」
「い、泉なぜここに」
「お部屋にお伺いした所いらっしゃらなかったので、廊下に出ましたら叫び声が聞こえました」
「ああ、なるほど……」
「それで、これは?」
「えっと、あの……彼女がどうしてもお世話がしたいって言うから、その……背中を流して貰おうかなあって」
「それで?」
「えっと、とりあえず上半身だけ、タオルも巻いてならって、そうしたら倒れちゃって……」
「それで?」
「えっと、抱き起したら、今度は気を失っちゃって……」
「それをいい事に、彼女の胸で遊んでいたと」
「あ、遊んでなんて…………ごめんなさい……」
遊んではいないけど、いないけど……
「全くお兄様は……とりあえず彼女は私が連れていきます、お兄様はそのままお風呂にお入りください」
「え! あ、うん……」
「それとも私がお兄様のお背中を流せばいいですか?」
にっこりと笑う泉の目は全く笑っていなかった。とっとと入れ!と目が語る。こわ!!
「いいえ、滅相もございません!」
「はい、ではごゆっくり」
そう言うと泉はひょいと彼女を起こし、彼女の肩を抱え、脱衣室を出ていく……
……泉って……結構、力あるんだなあ。
あの細い身体で、自分よりも大きい身体の(胸じゃないから、言ってないから)女子を軽がると……
ここに来て、泉の色々な面が見れて嬉しいやら怖いやらで……そしてこの後どうなってしまうのか……
「泉の説教は長いんだよなあ……」
今夜は色々と長い夜になりそうな予感が、そんな心配をしながら僕はお風呂場に入って行った。
0
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる