クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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帰らないで……

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 凛ちゃんの手作りハンバーグをご馳走になった僕は、食べ終えた後に凛ちゃんの妹のミイちゃんと一緒にゲームをやっていた。

「あはははは、お兄ちゃんへたくそおお」

「あうううう」
 
 凛ちゃんの部屋は1LDKで、キッチンとリビングがくっついている。
 僕は凛ちゃんが洗い物をしている後ろ姿を眺めつつ、リビングでミイちゃんとマ○オカートをしていた。まさか凛ちゃんがゲーム機を持っているとは……。
 それにしてもミイちゃんが家に来て以来凛ちゃんの様子がおかしい……今も洗い物をしながら何か考え事をしている様な……終止浮かない顔をしていた。

「……さて、ミイ……そろそろお風呂に入りなさい」
 洗い物が終わった凛ちゃんはかけていたエプロンで手を拭きながらミイちゃんにそう言った。僕はその凛ちゃんの姿に一瞬目を奪われた。何かドキドキする……凛ちゃんが僕の奥さんの様な……まるで……僕達の未来の様な……そんな想像をしてしまう。

「うーん、おねいちゃん一緒に入ろう!」

「え?」

「ミイこの家のお風呂入った事無いですう~~」

「──えっと……私まだ片付けが残ってるし……」
 凛ちゃんの目が泳いでいる……一体どうしたんだろうか? こんな凛ちゃんは今まで見た事が無い……いや……ある、一度だけ……あの時と一緒だ……過去の、凛ちゃんの過去を僕に話してくれた……あの時と同じ目……。

「えっとですねえ、じゃあお兄ちゃんが一緒に入ってくれますか?」

「…………は?」

「一緒に入りましょう」
 ミイちゃんは天使の様に微笑みながら僕にそう言った……。

「え、いやえっと……」
 僕はさすがに止めるだろうと凛ちゃんの顔を見るが、凛ちゃんは、そうだそれがいいみたいな顔をしている……いや……えっと……駄目じゃないのかこれって?

「早くいきましょう、お兄ちゃん!」

「いや……えっと……お兄ちゃんね、お姉ちゃんとちょっとお話するから、先に行ける? トイレの隣のお部屋でお洋服脱いで待ってて」

「はいですう~~すぐに来てくださいね」
 そう言うとミイちゃんは直ぐに立ち上がり、リビングの扉を開けてお風呂場にスタスタと歩いて行く。うーーん良い子だなあ……。

 ちなみに凛ちゃんの家のお風呂場はトイレの隣でしっかり脱衣場もあって分かりやすい……ちなみに何で知ってるかというと一度間違えて開けてしまった事があった為で、しかもその際、脱衣場に凛ちゃんの下着が干してあった。
 凛ちゃんは怒らなかったけど、それ以来注意して開ける様にしていた。

「りりり、凛ちゃん! 止めてよ!」

「ん? 何で?」

「いや、だって……」

「ううん、そうよね……子供とはいえ他人だもんね……でもごめんなさい……一緒に入って来てくれない?」

「えええ! な、何で?」
 そりゃ僕はロリコンじゃないし、興奮とかはしない……けど、他人の家の子と入るとか倫理的にどうなのかなって……。

「私……あの子……苦手なの……怖いの……」

「……怖い?」
 凛ちゃんは泣きそうな顔で僕を見た……いつも気の強い、あの凛ちゃんが……よく見ると身体が微かに震えている。

「……思い出すの……あの子を見ていると……どんどん似てきて……」

「似てきて?」
 本当にどうしたんだろうか? なぜ凛ちゃんはあんな小さな女の子を怖がっているのか? そう思ったその時、凛ちゃんは僕の胸元に飛び込んで来る。そしてすがり付く様に僕に言った。

「……あの子の……父親に……どんどん似て来て……怖い……あの子には何も罪はないのはわかってる……でも……駄目……まだ私は……」
 凛ちゃんはそう言って泣き出した……その涙を見て僕は全てを悟った。

 PTSD……虐待のフラッシュバック……凛ちゃんは言っていた……父親に虐待されたと……火傷の跡があると……。

「あの子の父親に?」

「……うん」

「……そか」
 恐らく凛ちゃんはお母さんの連れ子なのだろう……要するによくある養父の虐待……そしてあの子はその相手の子供……もしくは再婚してから生まれた子供……。
 そしてその面影が似ているって事なのだろう……。

 凛ちゃんは詳しく言わなかった、恐らくこれ以上思い出したくないからだろ……。

「……お願い……真君……今日は……帰らないで……居てください……ここに……何でもするから……お願い……」
 僕の胸元で震えていた凛ちゃんは僕にそう懇願しながら、ずるずると下に落ちていく。そして自分の両腕で自らの身体を抱く様にして、その場にしゃがみこんでしまった……。

「大丈夫……大丈夫だから……帰らないよ」
 僕は凛ちゃんの前にしゃがみこんで、同じ目線でそう話しかける。そして凛ちゃんの綺麗な髪を、頭をそっと撫でた。
 
「……本当?」

「うん……僕はいるから……ここにいるから」
 迷子の少女の様な不安な顔で僕を見つめる凛ちゃんに笑顔でそう言った。

「……ありがとう……真くん……」

 僕のその言葉に安心したのか? 凛ちゃんの震えが止まった、そして笑顔で僕を見つめる……その笑顔はとても儚くて……美しくて……僕はドキドキしてしまう。


『おにいちゃん~~まだですかあ~~』
 暫く見つめあっていると、廊下からミイちゃんの大きな声が聞こえて来た。

「今行くよ~~」
 僕はそう返事をして立ち上がる……そう……「これは凛ちゃんの為に仕方なくなんだ……僕はロリコンじゃないから平気だ」

「……真くん……キモい」

「ああああああ、声に出てたああ」

「……」

 凛んちゃんの顔が困惑した表情に、疑いの表情に変わる……だから僕はロリコンじゃないいいいい!

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