クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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まだまだ続く危険なお風呂回

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「お兄ちゃん頭洗って下さいですう」

「あ、うんそうだね」

 少し熱めのお風呂に浸かり十分に温まる。

 ミイちゃんは赤ら顔で僕に笑顔でそう言った……うーーん可愛いねえ……。

 凛ちゃんはこんなミイちゃんを怖いと言った……その気持ちは今の僕にはわからない……でもトラウマってそう言う物だ。

 透明人間……それが僕のトラウマ……僕は誰にも認識されていない……好かれもせず嫌われもせず……興味を持たれない人間。

 でも今は僕を認識してくれている人がいる……少なくとも二人……僕を見てくれている……好意を持って接してくれている……。

 でも……僕は……泉に……。

「お兄ちゃん?」

「あ、うん、ごめ……」
 いつの間にか浴槽から出ていたミイちゃんはシャワーの前で僕を呼ぶ……えっと……「タオルは?」

「身体を洗うんだからタオルはしないですよ?」

「あ、うん……そうだね……」

 いや、大丈夫……僕はロリコンじゃないから……僕の目の前にはミイちゃんが……座っている。
 白くきめ細かな肌……細くて長い髪……やはり少し熱かったのか全身が少し赤くなっている……そして夏のプールに行っていたのだろうか? 細くて長い手足に残る僅かな日焼けの跡……。

「だだだ大丈夫……全然大丈夫!」

「ん? お兄ちゃん早く洗って下さいですう」

「えっと……うん……今行く」

 僕はそう言うと浴槽の縁に置いておいたタオルを腰に巻き洗い場にサッと出る。

「お兄ちゃん、お婆ちゃんみたいに腰が曲がっているです」

「いや、ちょっと狭かったから……」

「ミイが邪魔だったですか?」
 ミイちゃんは不安そうに僕の顔を見てそう言う……。
 しまった……今ミイちゃんは孤独なんだ……だから一人凛ちゃんの元へ来たんだ……。
 凛ちゃんもミイちゃんも……今頼れるのは僕なんだ、僕だけなんだ……恥ずかしがってる場合じゃない……興……してる場合じゃない! 

「そんな事ないないほら元気元気」
 僕は恥ずかしからずにシャキッと立ち、立ちだよ、難しい方じゃないよ!
 細い腕を曲げ、力コブをミイちゃんにみせつける……まあ殆んど無いけど……。

「お兄ちゃん元気ですうう」

 どこが? と言うオヤジギャグを封印して、僕はミイちゃんの背後に回る。
 ちなみにミイちゃんの髪はかなりのロング、その為髪で色んな所は隠されているので、コンプライアンス的には全く大丈夫です!
 ついでに少々熱めのお湯だったので、浴室内には湯気が充満しているので、更に問題は無い……って僕は誰に言い訳してるんだ?

 僕はなるべくミイちゃんを見ない様にしながら、ミイちゃんの前にあるシャワーを手に取りお湯を出す。温度を手首で調整してもう一度ミイちゃんの背後に回った。

 そうだよ……思い出したけど……何も僕はこういう事が初めてなわけじゃない……。
 泉と一緒に入った事を思い出した……ついこの間の事なのに……何年も経ったような……気がしているけど……。

 あの時の……ハラリと落ちたバスタオル……泉の白い肌……細くて柔らかそうな身体を思い出したら……悪いけどミイちゃんなんてただの子供……。
 僕はロリコンじゃない! そう確信した……さっきのはただの生理現象……。

「はいミイちゃんお目目ギュッと閉じてねえ」

「はいですう」
 ミイちゃんはそう言うと下を向き目をギュッと閉じた。うん……可愛いいなあ……まるで小動物の様だ。

 僕はすっかり子犬を洗うトリマーさんの感覚で、ミイちゃんの髪を洗う……長い髪の毛を丁寧にシャンプーで洗い、トリートメントを丁寧に付ける。
 泉の髪に匹敵する綺麗さ……あの時……泉の髪を洗いたかったと……怪我をした時一緒に入った事を思い出しつつ、すっかりなんとも思わなくなったミイちゃんの髪にシャワーをかけ、トリートメントを洗い流した。

「はい、目を開けていいよ」


「ぷはああああ」

 シャワーをかけてる時、息も止めていたのか? ミイちゃんは顔を上げ深呼吸する。

「お兄ちゃん今度はミイが洗いますう」

「え?」

「今度はミイがお兄ちゃんを洗いますう」

「えっと……じゃ、じゃあ背中をお願い……します」

「はいですう」
 ミイちゃんはそう言うと笑顔で僕を見て、立ち上がる……ぐはっ……。
 髪の毛はさっき流した時全部後ろに……で、でも大丈夫、まだ不思議な湯煙と不思議な光があるから……コンプライアンスは守られている……。

「お父さんの背中みたいで大きいですう」

「そ、そう? 僕身体は小さい方だけど」

「えっとごめんなさいです、お父さんとは一緒に入った事無いからわからないけど……お父さんと入ってるみたいで楽しいですう」

「……そか……じゃあごしごし洗ってくれたまえ」

「はいですうう!」
 ミイちゃんは僕の知らない歌、お風呂の歌を歌いながら嬉しそうに僕の背中を洗い始めた。
 なんだか嬉しい……ミイちゃんに父親代わりにされる事が、嬉しい。
 
 ほぼ父親しか知らない僕……多分母親しか知らないミイちゃん……。

 凛ちゃんにとっては悪い父親だったんだろうけど……ミイちゃんにとっては……良いも悪いもわからずに居なくなってしまった父親。

 健気に、一生懸命僕の背中を洗うミイちゃん……亡き父親に出来ない事をしようとしている様だった……。

 そうか……ミイちゃんは……泉と一緒なんだ……。
 そのミイちゃんの健気な姿が泉とダブった……泉もまたミイちゃんと一緒なのだ……亡き兄を思いながら、亡き兄に出来なかった事をしてくれる……僕に尽くしてくれている。

「だったら……なんで僕は……」

 ミイちゃんにそう思って貰うのは嬉しくて……泉にそう思われるのは悲しい……これって一体……どういう事なんだ?

 目の前の鏡に映る僕に……僕はそう問いかけた……しかしその答えは……返っては来なかった。
 





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