クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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泉の本質

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 泉は昨日寝ていないと言っていた、そして僕もあまり寝れていない、とりあえず「少し寝て落ち着こう」と言って泉を自室に行くように、寝る様に言った。

 いや、まあそう言って直ぐに出ていったわけではなく、凛ちゃんの家で寝なくて何をしていた? とか、昨日の凛ちゃんの事とか何で凛ちゃんの家に行ったのか? とか、ミイちゃんの事とか、根掘り葉掘り聞かれた……。

 泉には、本当に何も無かった事を……特にミイちゃんには興味は無い! ロリじゃない! と言う事を強調しておいた。

 本当に興味無いんだからね! 仮にミイちゃんがメイド服を着ても……ミイちゃんがメイド服……ロリメイド……可愛いかも…………いやいや。

 そして最後に今日の事をもう一度謝った……もう二度としないと言って、泉に謝った……でも……泉は僕に謝られても何の事やらと、キョトンとした表情をしていた。

 僕は、泉の事が好きだ……やっぱり諦められない……でも……。

 あんな事を……ベットに押し倒すなんて事をしたのに、何でもない顔をしていた泉……僕は今日少しだけ……ほんの少しだけ……泉が怖くなった。


 とりあえず僕は泉を自室に行かせ、一人自分の部屋で泉の事を考えていた。

 半年……泉が家に来て、僕の妹になって半年。

 奇跡が起きているのはわかっている。
 片思いの相手と、絶対に手の届かない相手と家族になり、一緒に暮らしているなんて奇跡以外にあり得なかった。

 そして半年……僕はこの生活に慣れたばかりに、さらに上を求めてしまった。
 泉の恋人になりたいって。

 そんな分不相応な考えになってしまった。

 僕はベットに寝転びボーッと天井を見上げていた……。
 窓からはどこからか子供のはしゃぐ声が聞こえる、今、学校は冬休み、そしてまだ昼前……。
 その声に少し我に帰った気がした。
 
 昨日から現実離れをしている様な……いや、もうずっと現実じゃない世界にいるような気がしていた、そんな約半年間だった。
 ずっと一人ボッチだったのに……泉と兄妹になり、愛真が帰って来て、凛ちゃんと友達になった。
 
 僕は今凄く幸せなんだろう……去年の僕が今の僕を見たら羨まし過ぎて恐らく悶絶する。


 でも……今、僕は……それほど幸せとは思っていない……。

 
 そして僕は寝返りをうち横向きに寝転ぶ……ベットから微かに泉の香りがする。
 さっき嗅いだ甘い泉の香り……このベットに横たわる泉を思い出す。

 綺麗だった、美しかった、天使の様だった。

 そんな泉を、綺麗な泉を僕は汚そうとした……。

 罪悪感と泉の匂いを感じながら、もうなくなっている温もりを、さっき抱き締められた温もりと柔らかさを思い出しながら……僕は目を瞑る。

 目を瞑りながらこれからの事を考える……。

 やっぱり僕は泉が好きだ……泉を諦めようと、兄妹になろうと頑張ったけど……無理だった……。
 
 一瞬でも妹を襲うとするなんて……全然駄目な証拠だ。

 だから僕は告白した……泉にバカな告白をして終わらせようとした。

 でも……泉は僕の告白を受け入れてしまった……多分……。

 兄からの告白を受け入れてしまう泉……究極のブラコン……。

 今の泉は……多分全てを僕に許してしまう……身体も心も全部……。

 でも……一体それで良いのだろうか? いや、それって絶対に間違えてるよね?
 兄が妹に手を出すとか、どこのエロ小説だよ! それなんて同人だよ!

 だから僕は手を出すわけにはいかない……父さんも義母さんも許す筈がない……。

 でも……。

 泉は究極のブラコン……兄だから好きになる……。
 つまり僕が兄じゃなくなったら……。

 僕は泉の兄にはなりたくない……でも泉は僕が兄だから好きになっている。

「なんなんだよ……一体……」
 
 多分前の……泉の本当の……実のお兄ちゃんが初恋の相手なのだろう……そしてその恋は当然叶わなかった……だから今度は僕で……泉はそういう思いなんだろう……か。

 兄と言う文字が、立場が、泉の恋のフラグ……発動条件……。

 僕はようやく理解してきた……泉という人間の事を。
 はっきり言って……病んでいる……前の兄に心をおかしくされている。
 死んでしまったから……なんだろう……それが恐らく泉の傷に、心の傷になっている。

「それでも……僕は泉が……」

 なんとかしたい……泉の傷を……心を……兄として……家族として……好きな人だから、僕の大好きな人だから……。

 僕はそう思いながら……ゆっくりと眠りに落ちて行った。

 
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