クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

文字の大きさ
97 / 99

質問!

しおりを挟む

 泉は、今までに見た事のない程の満面の笑みをたたえながら僕をじっと見ている。
 そして、よく躾けられた子供が嬉しさを我慢しているかの様に、正座のまま左右小刻みに身体を揺らす。
「ふふふ、ふふふふ、ふふふふふふふふ」
 さらに聞く人が聞くと不気味な笑い方をし始める泉……完全にキャラがブレている様な気が……。

「えっと……その……楽しそうですね……」
 さっき泣き喚いた恥ずかしさが、泉を押し倒すなんて暴挙に出た情けなさがこみ上げている僕は、なんとなく照れ隠し、罪の意識を隠すかの様に、そう泉に聞いた。

「はい! だって……お兄様と相思相愛になれたんですもの」

「……相思相愛」
 あくまでも兄として、という枕営業……違った枕言葉がつくのだが、泉にとって兄と言うのは最上級の相手……他の誰よりも……好きって事では今の僕と変わらない……変わらないんだけど……。
 
 でも……これって喜んでいいのか本当にわからない……。
 何故なら、そこに僕の人格が存在しているとは思えないから。
 
 
 つまり……泉は兄ならば、誰でもでも良いって、誰でも良かったという事なのだから。

「お兄様……」
 泉はそう言いながら膝の上で手を合わせもじもじとしだす……。可愛い、その仕草も態度も声も全てかわいい……けど。

「えっと……あのね……その……もし父さんと義母さんが結婚してなかったら、僕たちは兄妹にならなかったんだよね? そうしたら泉は僕の事を好きにならなかったって事だよね?」
 もう、いたたまれなくなり僕は泉にそうはっきり聞いた。

「!なんて事を! ありえません! 運命は変えられないんです! つまり私たちは最初から、そう……あの受験の日から、こうなる運命だったんです!」
 泉はそう言って強くこぶしを前に突き上げる……。
 なんか、さっきまでのシリアスな展開はなんだったんだろう……僕はすっかり涙が出なくなった目頭を軽く押さえた。

「そうしたら……えっと、泉は僕のなにが好きなのかなあ?」
 ああ、もう全部聞いてしまえとばかりに立て続けに泉に質問をかます。

「全部です!!」

「いや、えっと……その中でも?」

「そうですねえ……お兄様はお優しくて、思いやりがあって、かっこよくて、お兄様で……だから全部好きです! 大好きです!」

「あ、うん……ありがとう……やっぱりお兄様だから……」

「ああ、まだ言い足りないので、もっと言ってもいいですか?!」

「あ、うん……えっと……それはまた今度で……」

「そうですか……残念です……」
 しょんぼりする泉……なんか性格まで変わってない?

「ああ、そうです……お兄様! 私も質問してもよろしいですか?」
 俯いていた泉が思い出したかの様に、僕にそう言って来た……まあ僕ばっかりじゃ駄目だよね……泉もなにか聞きたい事があるだろうし……。

「えっと……うん、いいよ」
 僕は泉と同じく正座をして姿勢を正してそう聞いた。
 泉の好きな所なんていくらでもあるし……でも泉は僕の思っていた事と全然違う……いや。、ある意味必然とも言える質問をしてきた。

「ありがとうございます。えっとお兄様……さっき抱き付かせて頂いた時、いつもとは違う香りがしました。家のシャンプーとは違う香りが……昨日はどちらにいらっしゃったのですか?」

「え! あ……えっと……漫画きっ……」

「それとこの背中についていた髪の毛はどなたの物ですか?」
 僕がそう嘘を付こうとするのをかぶせる様にいつのまにか指で掴んでいた髪の毛を僕の前に見せつける。

「え!」

「しかも2種類……一本は非常に細いんですが……」

「2種類……細い」
 さっき抱き付いた時にそこまで僕の身体を隅々まで観察をしていたって事なのか? それとも鎌をかけているのか?

「私……さっきお兄様をお迎えに行こうと思っていたんです……昨晩色々多方面に電話かけたり、少しお婆さまの力をお借りして調べたりして……お兄様が行く所はいらっしゃる所ははもうあそこしかないと思って……」

「……えっと……それは……どこかなあ?」

「……凛さんの、一萬田さんの家です!」

「……」

「昨日一萬田さんの家に泊まられましたね?」
 某名探偵も真っ青の推理……てか、まさか携帯に何か仕掛けが?
 昨日凛ちゃんの家で携帯の電源を切ったので、まさかお婆さんの力……財力を使ってそれを調べたとか?
 背筋が凍る思いとはこの事か……僕はもう嘘はつけないと観念したが、とりあえず見の潔白を晴らすべく言い訳をした。
 
「ち、違う! いや、そうだけど! 二人っきりじゃなかったから! 神に誓って!」

「そうですか……それではどなたと?」

「えっと……そう! ミイちゃん! ミイちゃんっていう凛ちゃんの妹と一緒に泊まったんだよ! 本当に!」

「ミイちゃん……まさか女性二人とだったなんて……」

「いやいや、ち、ちがう、いや、違わないけど……ミイちゃんは子供、小学生の小さい女の子だったから!」
 僕は慌ててそう言った、二人きりじゃない、ましてや女性二人とでもないと、だって本当の事だし、なにも……やましい事は無かったし。

「うううう……私が……あんなにお兄様の事が心配で心配で……全然眠れなかった時に……お兄様は楽しくお泊り会だったんですね……」
 今度は泉がメソメソと泣き出す……いや、楽しくは、なくななかったけど……あれはどっちかと言うと……。

「違うんだ! その、凛ちゃんはミイちゃんが苦手で、妹が苦手で一緒に居てくれって言われて、だから……ああ! そう、ベビーシッターみたいな事で、大変だったんだ! そう、ミイちゃんと遊ばなきゃいけなかったり、お風呂に入れたり……あ」

「……お風呂? お兄様いま……お風呂に入れたって」

「いや、違う、子供だから、子供をお風呂に……」

「小学生の女の子とお風呂に? へーーー……そうですか……」
 泉はそう言うと僕から少しだけ……ほんの少しだけ身体を遠ざけた……。

 ああ、泉が……泉の目が……蔑んだ目に変わった……さっき泉は一度として僕をそんな目で見た事は無いって言って言ったのに……。

「えっと……いや、その……」
 違う、違うんだ、僕はロリコンじゃない……違うんだあああああああああ!!



 


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...