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第三章 悩める剣士との出会い
閑話 アリシア・ラインハート
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霧が立ち込める森の中。
あちこちで聞こえる剣戟。
足元には己が剣を振るって倒した魔獣。
剣から滴る血に染まった自分の手。
そして・・・驚愕の顔でこちらを見ながら倒れる見知った顔・・・
・・・・・・・・・
「ハッ!・・・またか・・・」
もう何度目か分からないほど同じ夢を見たアリシアはゆっくり体を起こした。
この夢を見ると決まって嫌な汗をかく。
ぐっしょりと濡れた寝間着を見て、ため息をつくと体を洗うために井戸へ向かうことにした。
ベットから立ち上がった自身の体が強張っているは、夢の見ている間中力が入っていたからだろう。
バシャ!バシャ!
気分を変える為に何度も頭から水を被り、全身を濡らす。
鍛え上げられた肢体についた気持ち悪い汗が冷たい水で洗い流されるのがわかる。
以前は長かった金色の髪は、王都を出る時にバッサリ切った。けじめのつもりで髪を短くしたが、一体何にけじめをつけたのたか自分でも分からない。
「・・・私はどうしたらいいのだろう」
明け方の空。
だんだんオレンジ色に染まるシップブリッジの剣術道場で、髪から滴る水を見ながらアリシアが呟いた。
・・・その問いに誰も応えてくれる者はいない。
・・・・・・・・・
アリシア・ラインハート
剣聖ギャリオン・ラインハートの長女として生まれ、将来の剣聖候補として育った。
英雄ザリオン・ラインハートの直径の子孫であるアリシアは、その才を受け継ぎ幼い頃からメキメキと実力をつけていく。
アドレーヌと一緒に通っていた王都の学園でも卓越した才能を発揮し、剣術大会では入学初年度から優勝を飾る。
いつの間にかその美貌と強さから「剣姫」、「妖精姫」などのあだ名が付けられていた。
「アリシアは次の剣聖間違いなしね。学園では敵う人がいないもの」
「私などまだまださアドレーヌ・・・お父様には敵わない」
「それ以上強くなってどうするのよ?本当に結婚出来なくなってしまうわ」
「私より強い人がいれば結婚してもいい」
「はぁー・・・これは一生独身かもしれない・・・まっ!どっちにしろ私の近衛騎士になってもらうけど」
「その時はアドレーヌが貰ってくれるか?」
「い、いやそれはちょっと・・・」
「ハハハ!冗談だ!」
学園にある上流階級が使うテラスで、こちらを困り顔で見つめるアドレーヌはいつもと変わらない。
幼い頃からずっと一緒の従兄弟のアドレーヌは親友でもある。
近寄りがたい雰囲気を持つアリシアになんの気兼ねもなく話しかけてくる人物はあまりいないからだ。
「もうっ本当に心配しているんだからね!・・・そうだ!今度、第一騎士団の遠征に付いていくんでしょ?」
「ああ。実戦を経験できる貴重な機会だから楽しみだ」
「その興味を少しでも殿方に向いてくれればなぁ」
「残念ながら今は剣が恋人だな」
「・・・さすがにそれは引くわね」
16歳になったアリシアが学園の剣術大会で優勝したのを見ていた父親のギャリオンが、騎士団に見習いとして遠征に参加することにさせた。
もちろんこの歳で第一騎士団の見習いに推薦されるのは異例であり、親のコネを揶揄する声もあるが、それを黙らせる実力をアリシアは持っていた。
ミルフィーユ王国において剣聖は特別な意味を持つ存在だ。
王国最強の騎士であることはもちろんのこと、その人柄や振る舞いは常に注目を集め、ミルフィーユ王国の象徴として他国への外交に行くこともある。
剣聖になるためには2つの条件がある。
3年に一度の御前試合で剣聖に勝つこと。
そして、妖精に愛される素質を持っていること。
これは100年前の精魔大戦後に初代剣聖になったザリオン・ラインハートが卓越した剣技と木の妖精ノーミーと契約していたことに由来している。
初代から数えて三代目の剣聖である父のギャリオンも御前試合おいて二代目でアリシアの祖父を打ち破り剣聖となった。
代々妖精と高い適性を持つ王族が剣聖を就任してきたが、ギャリオンがその方針を変えた。
国民から才能があり、妖精と適性がある者も剣聖にしようとしたのだ。
その原因は剣聖になった者が木の妖精ノーミーと契約できなかったから。
二代目も三代目もザリオンが亡くなってから王都を出て、始まりの森へ引きこもってしまったノーミーと契約しようと交渉するが姿も現さない。
一応形式として、木の神殿で剣聖の証ある聖剣ローズセイバーを承る事で剣聖とされるが、本来の意味の剣聖ではない事にギャリオンは疑問を抱き、自分の次の代にはノーミーと契約できる人物を探そうとしていた。
・・・・・・・・・
「今度の御前試合はトーナメントにするって叔父様が言っていたわよ」
「ああそのようだな。私も参加するように言われたよ」
「アリシアが優勝するに決まっているわ!」
「私はまだ見習い騎士だぞ。力試しのつもりで受けてみるさ」
「もう!あなたの相手ができるのは副団長のザックスくらいって聞いたわよ」
「確かにザックス様はお強い。次の剣聖候補だな」
「・・・本当にそう思っているのが怖いわ」
アドレーヌが叔父のギャリオンに聞いたことを思い出す。
「アリシアの実力は計り知れない。剣技では自分に劣るものの、魔法を使用した戦いではどうなるか分からない・・・つまり本気を出していない」
「お話中失礼しますアドレーヌ様。アリシア!!招集が掛かった!東の森で霧の魔獣が確認された。急いで第一騎士団に合流してくれ」
「ハッ!すぐに参ります!」
アドレーヌが叔父の言葉を思い出していると、鎧姿の副団長のザックスが声をかける。
「ザックス様よ・・・」
「カッコいい!」
「なんでアリシアなんかに・・・」
ざわつく学園のテラスの中でザックスの堂々した振る舞いに黄色い声や怨嗟の声も聞こえるが、ザックスは真っ直ぐにアリシアを見つめている。
「というわけだアドレーヌ!行ってくる!」
「ええ・・・気をつけてね」
「・・・アドレーヌとザックス・・・まぁありといえばありかもね」
金色の髪を靡かせ颯爽と去っていくアリシアの後ろ姿に呟く。
その招集から1週間後アリシアは王都から姿を消した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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あちこちで聞こえる剣戟。
足元には己が剣を振るって倒した魔獣。
剣から滴る血に染まった自分の手。
そして・・・驚愕の顔でこちらを見ながら倒れる見知った顔・・・
・・・・・・・・・
「ハッ!・・・またか・・・」
もう何度目か分からないほど同じ夢を見たアリシアはゆっくり体を起こした。
この夢を見ると決まって嫌な汗をかく。
ぐっしょりと濡れた寝間着を見て、ため息をつくと体を洗うために井戸へ向かうことにした。
ベットから立ち上がった自身の体が強張っているは、夢の見ている間中力が入っていたからだろう。
バシャ!バシャ!
気分を変える為に何度も頭から水を被り、全身を濡らす。
鍛え上げられた肢体についた気持ち悪い汗が冷たい水で洗い流されるのがわかる。
以前は長かった金色の髪は、王都を出る時にバッサリ切った。けじめのつもりで髪を短くしたが、一体何にけじめをつけたのたか自分でも分からない。
「・・・私はどうしたらいいのだろう」
明け方の空。
だんだんオレンジ色に染まるシップブリッジの剣術道場で、髪から滴る水を見ながらアリシアが呟いた。
・・・その問いに誰も応えてくれる者はいない。
・・・・・・・・・
アリシア・ラインハート
剣聖ギャリオン・ラインハートの長女として生まれ、将来の剣聖候補として育った。
英雄ザリオン・ラインハートの直径の子孫であるアリシアは、その才を受け継ぎ幼い頃からメキメキと実力をつけていく。
アドレーヌと一緒に通っていた王都の学園でも卓越した才能を発揮し、剣術大会では入学初年度から優勝を飾る。
いつの間にかその美貌と強さから「剣姫」、「妖精姫」などのあだ名が付けられていた。
「アリシアは次の剣聖間違いなしね。学園では敵う人がいないもの」
「私などまだまださアドレーヌ・・・お父様には敵わない」
「それ以上強くなってどうするのよ?本当に結婚出来なくなってしまうわ」
「私より強い人がいれば結婚してもいい」
「はぁー・・・これは一生独身かもしれない・・・まっ!どっちにしろ私の近衛騎士になってもらうけど」
「その時はアドレーヌが貰ってくれるか?」
「い、いやそれはちょっと・・・」
「ハハハ!冗談だ!」
学園にある上流階級が使うテラスで、こちらを困り顔で見つめるアドレーヌはいつもと変わらない。
幼い頃からずっと一緒の従兄弟のアドレーヌは親友でもある。
近寄りがたい雰囲気を持つアリシアになんの気兼ねもなく話しかけてくる人物はあまりいないからだ。
「もうっ本当に心配しているんだからね!・・・そうだ!今度、第一騎士団の遠征に付いていくんでしょ?」
「ああ。実戦を経験できる貴重な機会だから楽しみだ」
「その興味を少しでも殿方に向いてくれればなぁ」
「残念ながら今は剣が恋人だな」
「・・・さすがにそれは引くわね」
16歳になったアリシアが学園の剣術大会で優勝したのを見ていた父親のギャリオンが、騎士団に見習いとして遠征に参加することにさせた。
もちろんこの歳で第一騎士団の見習いに推薦されるのは異例であり、親のコネを揶揄する声もあるが、それを黙らせる実力をアリシアは持っていた。
ミルフィーユ王国において剣聖は特別な意味を持つ存在だ。
王国最強の騎士であることはもちろんのこと、その人柄や振る舞いは常に注目を集め、ミルフィーユ王国の象徴として他国への外交に行くこともある。
剣聖になるためには2つの条件がある。
3年に一度の御前試合で剣聖に勝つこと。
そして、妖精に愛される素質を持っていること。
これは100年前の精魔大戦後に初代剣聖になったザリオン・ラインハートが卓越した剣技と木の妖精ノーミーと契約していたことに由来している。
初代から数えて三代目の剣聖である父のギャリオンも御前試合おいて二代目でアリシアの祖父を打ち破り剣聖となった。
代々妖精と高い適性を持つ王族が剣聖を就任してきたが、ギャリオンがその方針を変えた。
国民から才能があり、妖精と適性がある者も剣聖にしようとしたのだ。
その原因は剣聖になった者が木の妖精ノーミーと契約できなかったから。
二代目も三代目もザリオンが亡くなってから王都を出て、始まりの森へ引きこもってしまったノーミーと契約しようと交渉するが姿も現さない。
一応形式として、木の神殿で剣聖の証ある聖剣ローズセイバーを承る事で剣聖とされるが、本来の意味の剣聖ではない事にギャリオンは疑問を抱き、自分の次の代にはノーミーと契約できる人物を探そうとしていた。
・・・・・・・・・
「今度の御前試合はトーナメントにするって叔父様が言っていたわよ」
「ああそのようだな。私も参加するように言われたよ」
「アリシアが優勝するに決まっているわ!」
「私はまだ見習い騎士だぞ。力試しのつもりで受けてみるさ」
「もう!あなたの相手ができるのは副団長のザックスくらいって聞いたわよ」
「確かにザックス様はお強い。次の剣聖候補だな」
「・・・本当にそう思っているのが怖いわ」
アドレーヌが叔父のギャリオンに聞いたことを思い出す。
「アリシアの実力は計り知れない。剣技では自分に劣るものの、魔法を使用した戦いではどうなるか分からない・・・つまり本気を出していない」
「お話中失礼しますアドレーヌ様。アリシア!!招集が掛かった!東の森で霧の魔獣が確認された。急いで第一騎士団に合流してくれ」
「ハッ!すぐに参ります!」
アドレーヌが叔父の言葉を思い出していると、鎧姿の副団長のザックスが声をかける。
「ザックス様よ・・・」
「カッコいい!」
「なんでアリシアなんかに・・・」
ざわつく学園のテラスの中でザックスの堂々した振る舞いに黄色い声や怨嗟の声も聞こえるが、ザックスは真っ直ぐにアリシアを見つめている。
「というわけだアドレーヌ!行ってくる!」
「ええ・・・気をつけてね」
「・・・アドレーヌとザックス・・・まぁありといえばありかもね」
金色の髪を靡かせ颯爽と去っていくアリシアの後ろ姿に呟く。
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