異世界街道爆走中〜転生したのでやりたい仕事を探します。

yuimao

文字の大きさ
60 / 84
第三章 悩める剣士との出会い

閑話 アリシア・ラインハート

しおりを挟む
 霧が立ち込める森の中。

 あちこちで聞こえる剣戟。

 足元には己が剣を振るって倒した魔獣。

 剣から滴る血に染まった自分の手。

 そして・・・驚愕の顔でこちらを見ながら倒れる見知った顔・・・

 ・・・・・・・・・

「ハッ!・・・またか・・・」

 もう何度目か分からないほど同じ夢を見たアリシアはゆっくり体を起こした。
 この夢を見ると決まって嫌な汗をかく。

 ぐっしょりと濡れた寝間着を見て、ため息をつくと体を洗うために井戸へ向かうことにした。

 ベットから立ち上がった自身の体が強張っているは、夢の見ている間中力が入っていたからだろう。

 バシャ!バシャ!

 気分を変える為に何度も頭から水を被り、全身を濡らす。
 鍛え上げられた肢体についた気持ち悪い汗が冷たい水で洗い流されるのがわかる。

 以前は長かった金色の髪は、王都を出る時にバッサリ切った。けじめのつもりで髪を短くしたが、一体何にけじめをつけたのたか自分でも分からない。

「・・・私はどうしたらいいのだろう」

 明け方の空。
 だんだんオレンジ色に染まるシップブリッジの剣術道場で、髪から滴る水を見ながらアリシアが呟いた。

 ・・・その問いに誰も応えてくれる者はいない。

 ・・・・・・・・・

 アリシア・ラインハート

 剣聖ギャリオン・ラインハートの長女として生まれ、将来の剣聖候補として育った。

 英雄ザリオン・ラインハートの直径の子孫であるアリシアは、その才を受け継ぎ幼い頃からメキメキと実力をつけていく。

 アドレーヌと一緒に通っていた王都の学園でも卓越した才能を発揮し、剣術大会では入学初年度から優勝を飾る。

 いつの間にかその美貌と強さから「剣姫」、「妖精姫」などのあだ名が付けられていた。

「アリシアは次の剣聖間違いなしね。学園では敵う人がいないもの」
「私などまだまださアドレーヌ・・・お父様には敵わない」
「それ以上強くなってどうするのよ?本当に結婚出来なくなってしまうわ」
「私より強い人がいれば結婚してもいい」
「はぁー・・・これは一生独身かもしれない・・・まっ!どっちにしろ私の近衛騎士になってもらうけど」
「その時はアドレーヌが貰ってくれるか?」
「い、いやそれはちょっと・・・」
「ハハハ!冗談だ!」

 学園にある上流階級が使うテラスで、こちらを困り顔で見つめるアドレーヌはいつもと変わらない。

 幼い頃からずっと一緒の従兄弟のアドレーヌは親友でもある。
 近寄りがたい雰囲気を持つアリシアになんの気兼ねもなく話しかけてくる人物はあまりいないからだ。

「もうっ本当に心配しているんだからね!・・・そうだ!今度、第一騎士団の遠征に付いていくんでしょ?」
「ああ。実戦を経験できる貴重な機会だから楽しみだ」
「その興味を少しでも殿方に向いてくれればなぁ」
「残念ながら今は剣が恋人だな」
「・・・さすがにそれは引くわね」

 16歳になったアリシアが学園の剣術大会で優勝したのを見ていた父親のギャリオンが、騎士団に見習いとして遠征に参加することにさせた。

 もちろんこの歳で第一騎士団の見習いに推薦されるのは異例であり、親のコネを揶揄する声もあるが、それを黙らせる実力をアリシアは持っていた。

 ミルフィーユ王国において剣聖は特別な意味を持つ存在だ。
 王国最強の騎士であることはもちろんのこと、その人柄や振る舞いは常に注目を集め、ミルフィーユ王国の象徴として他国への外交に行くこともある。

 剣聖になるためには2つの条件がある。
 3年に一度の御前試合で剣聖に勝つこと。
 そして、妖精に愛される素質を持っていること。

 これは100年前の精魔大戦後に初代剣聖になったザリオン・ラインハートが卓越した剣技と木の妖精ノーミーと契約していたことに由来している。

 初代から数えて三代目の剣聖である父のギャリオンも御前試合おいて二代目でアリシアの祖父を打ち破り剣聖となった。

 代々妖精と高い適性を持つ王族が剣聖を就任してきたが、ギャリオンがその方針を変えた。
 国民から才能があり、妖精と適性がある者も剣聖にしようとしたのだ。

 その原因は剣聖になった者が木の妖精ノーミーと契約できなかったから。

 二代目も三代目もザリオンが亡くなってから王都を出て、始まりの森へ引きこもってしまったノーミーと契約しようと交渉するが姿も現さない。

 一応形式として、木の神殿で剣聖の証ある聖剣ローズセイバーを承る事で剣聖とされるが、本来の意味の剣聖ではない事にギャリオンは疑問を抱き、自分の次の代にはノーミーと契約できる人物を探そうとしていた。

 ・・・・・・・・・

「今度の御前試合はトーナメントにするって叔父様が言っていたわよ」
「ああそのようだな。私も参加するように言われたよ」
「アリシアが優勝するに決まっているわ!」
「私はまだ見習い騎士だぞ。力試しのつもりで受けてみるさ」
「もう!あなたの相手ができるのは副団長のザックスくらいって聞いたわよ」
「確かにザックス様はお強い。次の剣聖候補だな」
「・・・本当にそう思っているのが怖いわ」

 アドレーヌが叔父のギャリオンに聞いたことを思い出す。

「アリシアの実力は計り知れない。剣技では自分に劣るものの、魔法を使用した戦いではどうなるか分からない・・・つまり本気を出していない」

「お話中失礼しますアドレーヌ様。アリシア!!招集が掛かった!東の森で霧の魔獣が確認された。急いで第一騎士団に合流してくれ」
「ハッ!すぐに参ります!」

 アドレーヌが叔父の言葉を思い出していると、鎧姿の副団長のザックスが声をかける。

「ザックス様よ・・・」
「カッコいい!」
「なんでアリシアなんかに・・・」

 ざわつく学園のテラスの中でザックスの堂々した振る舞いに黄色い声や怨嗟の声も聞こえるが、ザックスは真っ直ぐにアリシアを見つめている。

「というわけだアドレーヌ!行ってくる!」
「ええ・・・気をつけてね」

「・・・アドレーヌとザックス・・・まぁありといえばありかもね」

 金色の髪を靡かせ颯爽と去っていくアリシアの後ろ姿に呟く。

 その招集から1週間後アリシアは王都から姿を消した。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

処理中です...