壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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伝説の狼1―5

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極限状態のセイラの体には、湯と小麦粉だけののり粥でも随分と美味しく感じた。
食べ終えると、狼は今度は『眠れ』とセイラを急かした。
「回復には睡眠が重要なんだ。無理にでも眠らなくては」
そうは言っても、昏倒から目が覚めたばかりのセイラは殆ど眠くない、ただ体は疲れていたので大人しく横にはなった。
ガチャリ
セイラの首に嵌められたままのダイアスの首輪が、セイラが寝ころんだ拍子に物騒な音を立てた。
継ぎ目の無い、魔封じの首輪、こんな物さえ嵌められていなければ、いくらセイラだってとっくの昔に逃げられたのに・・・。
情けなくて、喉が詰まった。
六年分の惨めな記憶が一気にセイラを襲った。
「っあの、さ」
「ん?」
泣き声に近い声で話し始めたセイラに、寝ころんだセイラの横に伏せた狼が優しい声で返事をした。
「僕が死んだらさ、食べる時はこの首輪だけは一緒に食べたりしないでくれるかな、あと、僕が死んだら最初に首引きちぎって、この首輪を取って捨ててくれると、凄く嬉しい」
そう言ったルークに狼は不機嫌そうに言った。
「何だその自殺でもほのめかしているみたいな言葉は!俺は死にたがりやや、自分の生死を脅しに使う行為は大嫌いだ!しかも何だそのいけ好かない匂いのする首輪は、死んだ後の始末を気にするほど大事な物なのか!?」
本当に嫌いなのだろう、狼はセイラが怖がらない様に努めて穏やかに声を出していたが、それでも少し怖かった。
狼が不機嫌な眼差しでセイラを見つめている。
「大事なもんか、こんなもの」
セイラは両腕で目を隠すと勝手に溢れて来る涙を懸命に堪えながら言った。
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