壊れた玩具と伝説の狼

人食い湖の住人２ー１９

セイラが身の危険を感じる前に、アヤが一歩足を踏み出してガチガチと牙を鳴らした。
「俺の番に手を出したら、それ相応の仕返しをされると覚悟しろ」
アヤは地響きがしそうな程低く恐ろしい声で海月を脅した。
「分かってるよ。他人の番に手なんか出さないよ。私は欲張りだけど、そんな悪食じゃない。
　それで、何でそんな蜜月真っ只中に、大事な番を連れて私の所に来たのさ？理由を言いなよ。話が進まないじゃないか」
海月が『これだから狼は独占欲が強くてつまらない』とか小声でブツブツ良いながらアヤに話の先を促した。
「本当だろうな？！嘘だったら承知しないからな！」
未だ言うアヤに海月がジト目で見つめて言った。
「うるさいなぁ。何の手土産もなく人の愛の営みを邪魔しておいて、用が無いなら帰って欲しいんだけど」
アヤと海月、両者は暫し見つめ合い。先に口を開いたのはアヤだった。
「セイラの体に染み込んだ薬を抜きたいんだ。何か良い方法は無いか？」
「薬？え、抜いちゃうの？勿体ない。そのままで良くない？」
「おい」
セイラの体に染み込んだ薬を抜きたいというアヤの相談内容に、海月は『何でそんな必要が？』と、心底不思議だといった表情で聞き返した。
呆れてアヤが聞き咎めたが、海月は理解できないと言った。
「だって、見た感じ内臓も外側も、骨も、全部アヤの力で回復してるから命に別状は無いし、凄く可愛いでしょう？自分の番が酔っぱらってエッチおねだりしてくるの」
そう言いきる海月の後ろでは海月の触手に拘束され派手に犯されて喜び喘いでる人間達がいる。
「俺は良いけど、コイツが辛れぇだろうが」
アヤは嗜めたがやはり海月はキョトンとしながら小首を傾げた。