壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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人食い湖の住人2ー20

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よく分からない、とでも言い出しそうな海月の表情を見て、アヤがため息をついた。
「飯を食べたり、体が暖まったりする度に発情するんだ」
「まぁ、ここまで薬が染み込んでいればそうなるだろうね」
アヤの言葉を聞いても、海月は『だから何?』という表情で相づちを打つだけだった。
「セイラは捕まって薬漬けにされるまでは、普通の暮らしをしてたんだ」
アヤの『薬漬け』という言葉を聞いてセイラの心ギシリと悲鳴を上げた。
(そうだ、僕は六年間も・・・)
辛くて、少しでも現実から目を背けたくて自らもねだった。
改めて自分が何をされたのか、今更ながらに自覚した。
「私の恋人達だって大半そうだよ?」
「お前の恋人達の事は別に俺の気にする所じゃない、お前達でよろしくやっていれば良いじゃないか」
海月の要領を得ない相槌に、アヤはジリジリとしながら話した。
当事者のセイラの方が、二人が喧嘩を始めるのでは無いかとハラハラする位に二人の話は噛み合わなかった。
アヤと海月の噛み合わない問答は暫く続いた。
「一日の内に何回も発情して、こんな華奢な体で可哀そうじゃ無いか」
「生命力の塊みたいな山の王の番いなんて、四六時中発情してる位で丁度いいじゃない。別に君が対応しきれない位激しいセックスしたがっているワケじゃないんでしょう?」
「俺が対応しきれない位って、人間にそこまでの事出来るワケ無いだろう。うーん。だがなぁ、何か良くない気がするんだよ。セイラの今の状態は」
「良く無いの?」
「良く無いなぁ。四六時中酷い幻覚を見て、辛そうなんだ」
「それを早く言いなよ。うーんでもなぁ」
セイラが幻覚を見ている聞いて、海月はやっとセイラに治療が必要なのだと認めた。

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