真夜中の太陽 ルークの初恋

過去の話 ０－１

これは、ルークがルークの『真夜中の太陽』に初めて出会った話。

丁度、秋も深まった。広葉樹の葉が薄く色づき始めたそんな９歳の季節の事だった。
父親からのいつも折檻にルークは襲われていた。
切っ掛けは他愛も無い事だった。

ルークが家で割り着けられている食器洗いの仕事を、この日、少し手を付けるのが遅れたのだ。
家は貧しいのにも関わらず、高価な魔道鏡が一台あった。
魔道鏡っていうのは魔術で音や映像を送受信する機械で、それを使って国の政治家や歌手なんかが国民に向けて色々な事を発信していた。
基本的に家庭内での地位の低いルークに魔道鏡を見る権利は無く、下手に見ると殴られた。
その日、ルークはどうしても見たい物があったのだ。
そしてその日は、ルーク以外の家族が全員不在になる日でもあった。
母親が留守の間に済ませた二日ぶりの風呂上り、ドキドキしながら魔道鏡を着けた。
食器洗いはその後にする計画だった。
しかし、そんな日に限って父親が早く帰って来て黙ってルークの見ていたチャンネルを変えてしまった。
思わず『あっ』っと小さく声が出た。

それがいけなかった。

その日、父親は酷く虫の居所が悪かったのだ。
突然父親は起ち上がると、いきなり横にあったテーブルを蹴り飛ばした。
物凄い音がして、次に来るだろう痛みにそなえ、ルークの体が硬直した。