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すべては幻、隣の庭は枯れ木の庭 3ー6

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同じ所に立てば、子供の頭はルークの胸の位置くらいしか無かった。
抱き締めたら腕の中にすっぽり収まってしまいそうだ。
笑顔で見つめるルークを見上げ、子供は名前を聞いてきた。
「お前、名前を何と言う?何と呼べば良い?」
「ルーク。氏は嫌いなんだ。だから、ただルークって呼んでくれれば良いよ」
「嫌いなのか」
「うん」
「そうか」
子供の癖に『なぜ』と理由を聞いてこないのが大人びていて、お貴族様はこんな小さな時からそんな処世術まで教育されているのかとルークは驚いた。
「私はジェイドという」
「何て呼べば良いかな?ジェイド様?ジェイド坊っちゃん?」
「坊っちゃんてな・・・イヤ、敬称は不要だ。私は子供で、何の権限も無いからな。城の中でもあるまいし、ジェイドと呼び捨てにしてくれ」
子供の『城』という言葉にルークの内蔵が一気に緊張した。
この国で『城』と呼べる所に住んでいるのは、国王の近しい血縁か、国営に直接関わっている身分の貴族、相当高位の身分の家柄の者だけだ。
うそんうそぉ。怪我でもされたら、俺、死刑かも・・・」
ルークが月を眺めてどうやって保護者の元まで連れて行こうかと悩んだ。
「何か申したか?」
怪訝な表情で聞くジェイドに
「いえ、独り言です」
と応えるのがやっとな位どうすれば無事に届けられるのだろうかと悩んだ。
そんなルークの心中などお構いなしの子供改めジェイドは、チラリと夜空の月を見てから、又ルークに視線を戻し、躊躇いがちに別の事を聞いてきた。
「その、る、ルークは、ルークもそういう事をして暮らしているのか?」
キラキラと月の光を反射しているその澄んだ瞳を見つめながら、ルークは呑気に『これは将来相当な美形になるなぁ』などと思った。
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