真夜中の太陽 ルークの初恋

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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すべては幻、隣の庭は枯れ木の庭 3-15

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それから二人はまた少し、お互いの話をした。
二人共少しずつ嘘をついた。友達で居るために。
カサリと何処かで枯れ葉を踏む音がした気がしてルークが音のした方を見て、何も見つけられず、ジェイドを振り返ると、ジェイドは月を見上げていた。
月を見上げて、ジェイドは一息ため息をついた。
「もうこんな時間か、流石に帰らないと不味いな」
「送るよ」
ジェイドの『帰る』という言葉に、ルークはすかさず反応した。こんな治安の悪い街のしかも夜中に、貴族の子供を一人で帰すわけにはいかない。
「僕は物心着くか付かないかの内から武道を習っている、ルークよりずっと強いぞ!」
ジェイドはルークに守る様な態度を取られたのが気に入らないのか、胸を張って言った。
「強さの問題じゃ無いだろ?それに弱くったっておとりとか、使い道は色々ある」
「ルーク!君は僕が君を囮にして自分だけ逃げる様な男だと思っているのかい!?」
ルークの言葉を聞いて、ジェイドはさらに憤慨し始めた。
「まさか」
いくらルークが無学でも、冗談でもここで『はい、思ってます』なんて言っちゃいけない事位判る。
それに、ジェイドがそんな性格じゃない事も、もう分かっていた。
でも、きっと何か大切な物がかかったら別だ。
プライドとか。
どんなに素晴らしい人に見えても、貴族と庶民は根底の心の作りが違う。住んでいる世界が違う、彼らは庶民には到底理解出来ない事で死に、到底理解出来ない事で殺意を抱く、そういうものだ。
「いくら僕達の気持が親友でも、他人はそうは思わないよ。ジェイド、きみが本当に貴族という身分なら、僕らがどんなに隠そうとも、今夜の事は明日の朝には君の親しい大人達の知る事になる。ここで君を一人で返したら、僕縛り首にされかねないよ」
嘘や大袈裟な言い回しをしている訳じゃない。
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