R18/短編/出戻り平凡令息は忠実スパダリ従者の溺愛から免れられない

ナイトウ

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そろそろ陽も傾き出す昼下がり、僕はハルにだき抱えられながら馬に乗り、トーリア領内のザーハルツ家の城を目指している。

……何故こんな事に!?

王都からトーリアまでは訓練した伝令馬でも3日かかるから、極秘とはいえ調査を命じられた僕も遅い馬車ではなく長距離馬を乗り継いでトーリアまできた。
だからお城までも自分で馬に乗って行くつもりだったけど、トーリア領内でそんなことさせられないとハルが断固反対。
休んでいた宿場町から馬車で行く事になった。

問題は、用意した馬車の御者席にハルが乗り込もうとした事だ。
今度は僕が男爵に御者をさせるわけにはいかないと断ったけど、ハルは僕が乗るなら自分がやると言って聞かない。

正直なんでそんなことしたがるのかわからないけど馬車を使うわけにもいかず、結局ハルと一緒に馬に乗る形で妥協した。

馬は早くも遅くもない速さで領内を駆けていく。
だから領内の様子がよくわかるけど、8年前と比べてもだいぶ良くなっている印象だ。

田畑はよく手入れされ、集落も以前より大きく建物も綺麗な家が増えた。
トーリアの税収が年々右肩上がりなのは領地が発展しているからなのがよく分かる。

「あっ!代行様だ。ご機嫌よう。」

「代行様ー!このリーク良ければ持って行ってください。」

「代行様、チーズはいかがですか?」

ハルは領地では代行と呼ばれている。
侯爵の代理ってことだ。
通る先々で領民から作物がおすそ分けされるので、積荷が凄い事になった。
ハルってみんなに好かれてるんだな。

「わぁ!アモル様だ!ようこそトーリアへ!」

「アモル様だ!いらっしゃい!」

「ようこそ!」

にしても領地に全く顔を出していない僕の認知度がやたら高いのは何故。

「みんな何で僕のこと知っているの?」

ハルに聞いてみた。

「学校でしっかり教えていますから。臣民教育は領地の基盤でございます。領民が自らの主人を日々敬うよう、侯爵様から定期的にザーハルツ家の肖像画をお借りして領内の印刷所でエッチングにして領民に配布しております。」

「なるほど……」

「アモル様の肖像画もたくさんお借りして複製いたしましたが……」

そう言って前に座る僕をじっと見下ろす。

「本物に敵うべくもありませんね。」

ほう……とハルが満足気な溜息を吐いた。

確かに、領主の顔を領民が覚えるなら、領内をめぐって顔を見せるのが一番なんだろうな。

ハルと僕は、日が暮れる頃に沢山のお裾分けと共に無事城に到着した。

城に着けば、城で働く下男や侍女が世話係として待っている。
あとはその人たちに任せて今日は休めばいい。

と、思っていた。

けど実際はハルがいつまでも僕のそばに引っ付いてきてまるでフットマンのように着替えや食事の世話をしてくる。
僕の世話係兼護衛として一緒にきていた人たちすらいつの間にかいなくてどういうことだ。

何度ハルにそんなことしなくていいと言ってもだいたい丸め込まれて最後は受け入れてしまう。



けど、これは流石に……

僕は浴室でお湯が張られて湯気が立ち上るバスタブを見た。

「これもハルが用意してくれたの?」

「左様でございます。アモル様に旅の疲れを癒して頂きたく。」

「ありがとう、ハルにそんな事までさせてごめんね。使わせてもらうね。」

城に来てから身支度に食事、荷解きまで全部ハルが完璧にやってくれるんだけど、ハルって何でもできるんだな。
凄いや。

「ではあちらの脱衣スペースへどうぞ。」

ハルが僕を浴室内の衝立の裏に誘導してくれ、自分も後ろからぴったり付いて来る。

「あの、わかったからもう出て行って大丈夫だよ。ちゃんと終わったら教えるし……」

「入浴もお手伝いさせて頂きます。さ、脱衣しましょう。」

ハルが僕の襟元のスカーフを解きだした。

「ええ!?ハル、そんな事しなくていいよ!一人で入れるからっ。」

慌てて今日何度目かの断りを入れる。
王都でも背中を洗って貰う時以外お風呂くらい一人で入ってるし。

「この城でアモル様お一人で入浴させるなどそんな無礼な事いたしかねます。」

いやいや、無礼でも何でもない。普通。普通ーですよー!!

「無礼だと思わないから。ね?」

「アモル様、私の奉仕にご不満があるのですか?だからいつも断られるのでしょうか……。不足があれば何でも仰ってください。」

ハルが冷たいタイル敷きの床に跪いて見上げてきた。
こちらに向けられた眼帯に、今日何度目かの罪悪感がこみ上げる。

「不満なんてないよ。ただハルがする事じゃないから……」

「私の使命はアモル様にお仕えする事です。アモル様には私の全てを捧げておりますので、どうか拒まないでください。」

ハルが僕の手を取り、優しく自分の眼帯に押し当てた。
う、ううう……。

「わ、わかった。お願いします。」

「はい。お脱がせしますね。」

ハルは薄く微笑むと軽やかに立ち上がってまた襟元を緩め始め、僕はあっという間に全裸にされた後布に包まれてバスタブ脇に連れていかれた。

そこにはバスタブとは別に大きな桶に張られたお湯と小さい手桶、あと木製の小さなスツールの足元に石鹸と海綿が用意してある。
そのスツールに座らされて布を剥がれた。
そこまで寒い季節じゃないし、お湯の熱が十分室内を温めているので寒くはない。

「長旅で汚れも溜まっているでしょうから、湯船に入る前にこちらでしっかり洗いましょう。」

確かに、田舎は風呂のある宿は少ないから髪も体もお湯で流すか濡れ布巾で拭くくらいしか旅立ってからはしてない。

頷くと、ハルは僕の体に手桶でお湯を掛けながら濡らしていく。
その後石鹸を海綿で泡立てて、泡に包まれた手で僕の左腕を擦り始めた。肘先から丁寧に撫で、泡で洗う。

嫌な予感がした。

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