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第1章 幼少期編

1 出会い

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ヤバい。
ここ、前世でプレイしたBLゲームの世界だ。
ってマジか。

俺は前も男だったけど、何でBLゲームなんてプレイしてたかといえば姉貴にやらされていたからだ。
そのゲームはBL恋愛シミュレーションゲームのくせにガチな育成要素があって、主人公が契約する守護獣の育て方やレベリングがストーリー進行やイケメンの攻略に関わってくる。

姉貴はスチル回収やキャラの攻略は好きだったけど他の要素は面倒がるタチで、守護獣の育成パートを俺に押し付けてきた。

俺は俺で育成ゲーは好物だったし、けっこう凝った育成システムに割とあっさりどハマりして姉貴がストーリーを進める合間に育成に励んだ。

最低ランクの雑魚トカゲと言われていた主人公の守護獣が、俺の苦労の果てに神域のグランドドラゴンに究極進化した時はぶっちゃけ少し泣いた。

おかげでトゥルーエンドに行けたってことで姉貴はアイス奢ってくれたし。

そんな思い出も今は遠く、俺は前世の記憶を持ったまま、まるで違う世界で今の人生を送っている。

しかし、元々前世のゲームでありそうな世界だなと思ってはいたけど、ここがあのBLゲームの世界だったなんて。

12歳で奉公に出た屋敷の一室、俺がそう確信した元凶である少年を目の前に驚きでしばし絶句した。

ユーリスフレッド・アルディ・クリスタス
顔立ちからも間違いないだろう。
主人公のライバルキャラだ。
今は10歳だと聴くから、ゲームの時間軸にはあと7年ほどで追いつく計算になる。
確か、主人公が17歳で同級生だったはず。

正直なところ、俺はゲームのストーリー自体はよく知らない。
育成パートしかしてないから。
唯一まともに覚えているのが主人公アキトとその守護獣ミケ、そしてこのライバルキャラの公爵子息ユーリスと守護獣の狼ノスガルデルタだ。

ユーリスは、育成パートを遊んでいると始まる強制イベントによく出てくるキャラクターだから覚えていた。流石にフルネームまでは覚えてなかったから、ここに奉公が決まった時は気付かなかったけど。

目の前のユーリスは、記憶よりずいぶん幼いけれど受ける印象は変わらない。
いけ好かない嫌なやつ。
それがゲームをプレイしていてずっと俺が思っていたことだ。

こっちが一生懸命育成していると、ユーリスは度々現れて平民のアキトを見下し、ミケをバカにして、嫌味を吐いて時には育成を阻害するデバフを付与してくる。

今のユーリスも、偉そうに目を細めてこちらを値踏みするような不躾な視線をじっと送っている。
BLゲームのキャラだけあって顔は美形なので、子供の今も顔立ちだけは綺麗だ。

「どうした?挨拶もできないか?」

言われてハッとした。
あまりに予想外の事態に意識が全てユーリスに行っていたが、今は屋敷の主人の部屋に挨拶に来ているのだ。

跪いたこちらを尊大な態度で見下ろすクリスタス公爵からじろりと睨まれる。

「大変失礼いたしました。田舎の粗忽者でして、旦那様とご子息の高貴なお姿に緊張のあまり言葉を失っていました。この度奉公に上がります、ルコ・ブライトンと申します。何卒よろしくお願いいたします。」

恭しく頭を下げて言った。

「お前は村の子にしては賢いと聞いている。だから無学な農家の息子でもうちに引き取ってやったんだ。役立たずならいつでも出て行ってもらう。賃金の無駄だからな。」

「はい。ありがたきお言葉。全てを捧げ尽くしてお仕えし、この僥倖に報います。」

内心うへぁと思いながら、前世から持ち越した分別で心にもないことをまじめに吐き出す。
この親にしてこの子ありって感じだな。

「ふんっ。もう行け。」

公爵が顎で出て行けと命じるのを見て、付き添いの侍従長が俺を促して退出した。

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