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第3章 学園編
25 頼みごと
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研究科の教室に入り席に向かうと、ミレーユが気付いてこちらを見た。
「ミレーユ、頼みがあるんだ。出来ればバージニスタス様とガーデンシア様にもお願いさせて下さい。」
席に座る3人を順に見て告げた。
他の生徒も何事かと顔を上げてきたので、念のため以前ジキスに謝罪した倉庫に来てもらう。
「書庫の整理にお力添え頂けないでしょうか。書籍の要約に時間がかかっているのですが、どうしても早く終わらせたいのです。」
3人を真っ直ぐ見つめて言うと、ミレーユがぷっと吹き出した。
「えー、そこぉ?何で急いでるの?」
「それが終わったら、好きな人に告白します。」
俺の言葉に3人が顔を見合わせる。
「え、誰。」
少し意外なことにルドルスから尋ねられた。
やっぱり、頼む以上この3人にはそこはちゃんと話しておかなきゃならないだろう。
「ユーリスフレッド坊っちゃまです……。」
ルドルスが目を見開く。その反応に少し緊張した。
書庫の整理が終わるまで俺の気持ちをユーリスに知られるわけにはいかない。これを伝えるのは、俺にとってある意味賭けだった。でも、みんななら黙っててくれるんじゃないかって思ってる。
「本気なのか?」
ジキスが訝しげに尋ねてくる。
彼にしてみたら、そう思うのも当然だ。
「はい。お伝えすれば、もう学園にいられなくなるかもしれません。ですので、先に書庫の整理を終えたいのです。」
執事の仕事がなくなっても、部屋を追い出されても、しつこく告白するなんて煙たがられて次は流石に屋敷を追い出されるかもしれない。
公爵家の後ろ盾がなくなったら、いくら過去に例があっても守護獣を持たない自分が学園に居続ける事は難しいだろう。
「んー。それでルコの気が済むならいいんじゃない?ジキス手伝ってあげなよ。」
「貴様自分は何もしないつもりか。」
ジキスがじろりとミレーユを睨め付ける。
「や、だって俺全然書庫の本読んだことないし、要約なんて無理。寝ちゃう。」
「あの、ミレーユには日が落ちた後にレイラの目を使ってカード目録を作った本を指定する棚に戻して欲しいんだ。今は日が落ちると作業出来ないんだけど、ミレーユに手伝って貰えたらもっと捗ると思う。」
「あんま遅くなるのは嫌だよ?」
「うん。日没後半刻くらいでいいから。」
「じゃあいいよ。レイラちゃんの能力が頼りにされちゃね。」
「ありがとう。」
ミレーユの首元で、レイラがチロチロ舌を出した。
次いでジキスに目をやって返事を待つと、眉間にしわを寄せたまま目を細める。
「私だって全冊頭に入ってるわけじゃない。読み返さず書けるやつだけだぞ。」
「はい。十分でございます。感謝いたします。」
最後に、ルドルスに視線をやった。
どうにか味方になってくれと念じる。
「……確かにユーリスに言えばお前は書庫にかまけてるどころじゃないな。あれは便利だから完成した方が良い。僕の分担はお前に任せる。」
「あっありがとうございます!」
最後に3人に深く頭を下げた。
完全に前世で染み付いた挙動だけど、この方が気持ちが伝わると思った。
この学園に残せるものを残して、ユーリスとちゃんと向き合って、その結果は全部自分で受け止めよう。
その先自分がどうするかは正直分からないけど、やり切れば後悔はないはずだ。
そして週末になり、手元にはまた支援対象の生徒が提出したレポートがやって来た。
心なしか少し厚みが増えた気がする。
中を見てみると、最初のレポートより熱心に書き込んで質問も沢山してくるレポートが結構あった。
それと2年のレポートにはいくつか、前回の添削に強く反発するようなレポートもある。
1年間講義で教えられた育成法を覆すような内容に添削することもあったから、批判が出るのも十分理解できた。
今週の各支援対象の観察メモを参照しながらそれら一つ一つにまた添削をつけていく。
もう寝る時間を削るような無茶はしないことに決めて、週末は書庫整理は一旦置いて、レポートに集中した。
「ミレーユ、頼みがあるんだ。出来ればバージニスタス様とガーデンシア様にもお願いさせて下さい。」
席に座る3人を順に見て告げた。
他の生徒も何事かと顔を上げてきたので、念のため以前ジキスに謝罪した倉庫に来てもらう。
「書庫の整理にお力添え頂けないでしょうか。書籍の要約に時間がかかっているのですが、どうしても早く終わらせたいのです。」
3人を真っ直ぐ見つめて言うと、ミレーユがぷっと吹き出した。
「えー、そこぉ?何で急いでるの?」
「それが終わったら、好きな人に告白します。」
俺の言葉に3人が顔を見合わせる。
「え、誰。」
少し意外なことにルドルスから尋ねられた。
やっぱり、頼む以上この3人にはそこはちゃんと話しておかなきゃならないだろう。
「ユーリスフレッド坊っちゃまです……。」
ルドルスが目を見開く。その反応に少し緊張した。
書庫の整理が終わるまで俺の気持ちをユーリスに知られるわけにはいかない。これを伝えるのは、俺にとってある意味賭けだった。でも、みんななら黙っててくれるんじゃないかって思ってる。
「本気なのか?」
ジキスが訝しげに尋ねてくる。
彼にしてみたら、そう思うのも当然だ。
「はい。お伝えすれば、もう学園にいられなくなるかもしれません。ですので、先に書庫の整理を終えたいのです。」
執事の仕事がなくなっても、部屋を追い出されても、しつこく告白するなんて煙たがられて次は流石に屋敷を追い出されるかもしれない。
公爵家の後ろ盾がなくなったら、いくら過去に例があっても守護獣を持たない自分が学園に居続ける事は難しいだろう。
「んー。それでルコの気が済むならいいんじゃない?ジキス手伝ってあげなよ。」
「貴様自分は何もしないつもりか。」
ジキスがじろりとミレーユを睨め付ける。
「や、だって俺全然書庫の本読んだことないし、要約なんて無理。寝ちゃう。」
「あの、ミレーユには日が落ちた後にレイラの目を使ってカード目録を作った本を指定する棚に戻して欲しいんだ。今は日が落ちると作業出来ないんだけど、ミレーユに手伝って貰えたらもっと捗ると思う。」
「あんま遅くなるのは嫌だよ?」
「うん。日没後半刻くらいでいいから。」
「じゃあいいよ。レイラちゃんの能力が頼りにされちゃね。」
「ありがとう。」
ミレーユの首元で、レイラがチロチロ舌を出した。
次いでジキスに目をやって返事を待つと、眉間にしわを寄せたまま目を細める。
「私だって全冊頭に入ってるわけじゃない。読み返さず書けるやつだけだぞ。」
「はい。十分でございます。感謝いたします。」
最後に、ルドルスに視線をやった。
どうにか味方になってくれと念じる。
「……確かにユーリスに言えばお前は書庫にかまけてるどころじゃないな。あれは便利だから完成した方が良い。僕の分担はお前に任せる。」
「あっありがとうございます!」
最後に3人に深く頭を下げた。
完全に前世で染み付いた挙動だけど、この方が気持ちが伝わると思った。
この学園に残せるものを残して、ユーリスとちゃんと向き合って、その結果は全部自分で受け止めよう。
その先自分がどうするかは正直分からないけど、やり切れば後悔はないはずだ。
そして週末になり、手元にはまた支援対象の生徒が提出したレポートがやって来た。
心なしか少し厚みが増えた気がする。
中を見てみると、最初のレポートより熱心に書き込んで質問も沢山してくるレポートが結構あった。
それと2年のレポートにはいくつか、前回の添削に強く反発するようなレポートもある。
1年間講義で教えられた育成法を覆すような内容に添削することもあったから、批判が出るのも十分理解できた。
今週の各支援対象の観察メモを参照しながらそれら一つ一つにまた添削をつけていく。
もう寝る時間を削るような無茶はしないことに決めて、週末は書庫整理は一旦置いて、レポートに集中した。
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