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「どうしたら麒臣君に種付けしてもらえるか教えて下さい!!」
事務所で久々に対面した樺島さんに頭を下げて頼む。
「……タケ、こりゃ一体なんだ。」
樺島さんは相変わらず男前な顔を顰めながら僕を玄関から案内してくれた子分さんに聞いた。
「ひっ……こいつが親分に話があるってんで、親分が喜ぶかと……」
「誰がこのチンチクリンと話して喜ぶんだあ゛あ゛ん?くだらねぇ話聞かせやがって!!」
「すいやせんでしたっ!」
「僕には切実な話なんです!こんな相談できる知り合いのアルファ今の僕には樺島さんしかいなくて……」
「知るか!!縛って上に乗っかるでもなんでもしろ!」
「なるほどその手が……でも僕には麒臣君を縛るなんて出来ないですよ。ちゃんと考えて下さい。」
「し・る・か!!帰ぇれ!」
怒った樺島さんが僕の肘を掴んで追い出しにかかる。
近づいた樺島さんからアルファの匂いが少しした。
当然僕の匂いも届いただろう。
「っ……てめぇ、発情してやがんな。」
「あ、やっぱりわかります?」
「ちっ舐めやがって……タケ!」
控えていた子分が部屋から出て行き扉が閉まる。
2人きりになった部屋で樺島さんの鋭い視線が刺さった。
「発情期にノコノコ来て種付けされてぇたぁ、いい度胸じゃねえか。」
掴んだ肘を引かれて距離を詰められる。
「孕まされたいのは樺島さんにじゃなくて、麒臣君にです。」
「だったら何だ。関係ぇねえな。可愛がってやる。恨むなら考えが足りないオメガのてめぇ自身を恨みな。」
樺島さんが僕の顎を掴んで強引に自分の顔へ引き寄せた。
「考えて樺島さんのとこに来たんです。僕だって華族の端くれですからアルファの当てくらい多少はありますけど、流石に発情中に会うのは危ないんで。」
唇が触れ合うスレスレで説明を続ける。
「俺だって同じだろうが。」
牙を剥いたように樺島さんが睨みつけてくる。
今僕の話をホイホイ聞いちゃってる時点で樺島さんは違うんだよなぁ。
「同じだったら初めてうち来た時に僕を犯してますって。貴方は他のアルファと違います。」
近距離で樺島さんの切れ長の瞳を真っ直ぐ見つめ返して断言する。
「……っ何だよ。」
「樺島さんの気持ち知ってますよ。」
「……。」
ふっふっふ。
「貴方、ドの付くお人好しで本当は人の嫌がることできないんでしょ!」
「てめぇ俺の職業忘れてねぇか?」
あっ、そうかヤクザだった。
「ヤクザ向いてないんじゃないですか?」
樺島さんって見かけによらず実は人が良いからなぁ。
「……はーーーっ、ヤる気失せた。……てめぇに言われたからじゃねえから。もともと菱一を敵に回す気なんざねぇだけだ。」
目を点にしてしばらく固まった後、ポイッと僕の顔を離し乱暴に歩いて自分のデスクチェアに腰掛ける。
「あんなぁ、痴話喧嘩はちゃんと当人でナシつけんだよ。相手が何考えてるかなんて相手しかわかんねぇだろうが。」
踏ん反り返りながら、ちゃんとしたアドバイスをくれた。
「でも、僕が好きじゃないからって言われたら……」
「どんな反応が返ってきても受け止める覚悟も無ぇのに他人の考え変えようとすんな。」
「……はい。」
「分かったら行けっつの。すっぱり振られてから出直してこい。」
ひっ酷いっ!
でも、話し合えと言われればその通りなので、大人しく部屋を出るしかない。
外には案内してくれた子分さんがいて、僕を見て目を丸くした。
「あれ?ヤられなかったんですかい?」
「貴方の親分さんは人の嫌がることしない人ですから。」
「いやそりゃねぇっす。単にやっぱり気に入らなかったのかな?まあならいっか。旦那、恋の悩みなら良いトコ知ってますよ。」
「え?」
「長代橋近くあたりにときわビルヂングってあるんすけど、そこの地下1階に星彦って占い師の店があるんでさぁ。恋煩いから賭け事まで何でも当たるしちょっとアレな依頼も出来るって評判らしいっすよ。」
「そうなんですか……ありがとうございます。」
あんまり占いとかに頼る気は無いけどな。とりあえず樺島さんに言われたし、今日話し合いしてみよう。
長代橋か……話のきっかけに最近話題になってる浅川のカリーパンでも買ってくか。
事務所で久々に対面した樺島さんに頭を下げて頼む。
「……タケ、こりゃ一体なんだ。」
樺島さんは相変わらず男前な顔を顰めながら僕を玄関から案内してくれた子分さんに聞いた。
「ひっ……こいつが親分に話があるってんで、親分が喜ぶかと……」
「誰がこのチンチクリンと話して喜ぶんだあ゛あ゛ん?くだらねぇ話聞かせやがって!!」
「すいやせんでしたっ!」
「僕には切実な話なんです!こんな相談できる知り合いのアルファ今の僕には樺島さんしかいなくて……」
「知るか!!縛って上に乗っかるでもなんでもしろ!」
「なるほどその手が……でも僕には麒臣君を縛るなんて出来ないですよ。ちゃんと考えて下さい。」
「し・る・か!!帰ぇれ!」
怒った樺島さんが僕の肘を掴んで追い出しにかかる。
近づいた樺島さんからアルファの匂いが少しした。
当然僕の匂いも届いただろう。
「っ……てめぇ、発情してやがんな。」
「あ、やっぱりわかります?」
「ちっ舐めやがって……タケ!」
控えていた子分が部屋から出て行き扉が閉まる。
2人きりになった部屋で樺島さんの鋭い視線が刺さった。
「発情期にノコノコ来て種付けされてぇたぁ、いい度胸じゃねえか。」
掴んだ肘を引かれて距離を詰められる。
「孕まされたいのは樺島さんにじゃなくて、麒臣君にです。」
「だったら何だ。関係ぇねえな。可愛がってやる。恨むなら考えが足りないオメガのてめぇ自身を恨みな。」
樺島さんが僕の顎を掴んで強引に自分の顔へ引き寄せた。
「考えて樺島さんのとこに来たんです。僕だって華族の端くれですからアルファの当てくらい多少はありますけど、流石に発情中に会うのは危ないんで。」
唇が触れ合うスレスレで説明を続ける。
「俺だって同じだろうが。」
牙を剥いたように樺島さんが睨みつけてくる。
今僕の話をホイホイ聞いちゃってる時点で樺島さんは違うんだよなぁ。
「同じだったら初めてうち来た時に僕を犯してますって。貴方は他のアルファと違います。」
近距離で樺島さんの切れ長の瞳を真っ直ぐ見つめ返して断言する。
「……っ何だよ。」
「樺島さんの気持ち知ってますよ。」
「……。」
ふっふっふ。
「貴方、ドの付くお人好しで本当は人の嫌がることできないんでしょ!」
「てめぇ俺の職業忘れてねぇか?」
あっ、そうかヤクザだった。
「ヤクザ向いてないんじゃないですか?」
樺島さんって見かけによらず実は人が良いからなぁ。
「……はーーーっ、ヤる気失せた。……てめぇに言われたからじゃねえから。もともと菱一を敵に回す気なんざねぇだけだ。」
目を点にしてしばらく固まった後、ポイッと僕の顔を離し乱暴に歩いて自分のデスクチェアに腰掛ける。
「あんなぁ、痴話喧嘩はちゃんと当人でナシつけんだよ。相手が何考えてるかなんて相手しかわかんねぇだろうが。」
踏ん反り返りながら、ちゃんとしたアドバイスをくれた。
「でも、僕が好きじゃないからって言われたら……」
「どんな反応が返ってきても受け止める覚悟も無ぇのに他人の考え変えようとすんな。」
「……はい。」
「分かったら行けっつの。すっぱり振られてから出直してこい。」
ひっ酷いっ!
でも、話し合えと言われればその通りなので、大人しく部屋を出るしかない。
外には案内してくれた子分さんがいて、僕を見て目を丸くした。
「あれ?ヤられなかったんですかい?」
「貴方の親分さんは人の嫌がることしない人ですから。」
「いやそりゃねぇっす。単にやっぱり気に入らなかったのかな?まあならいっか。旦那、恋の悩みなら良いトコ知ってますよ。」
「え?」
「長代橋近くあたりにときわビルヂングってあるんすけど、そこの地下1階に星彦って占い師の店があるんでさぁ。恋煩いから賭け事まで何でも当たるしちょっとアレな依頼も出来るって評判らしいっすよ。」
「そうなんですか……ありがとうございます。」
あんまり占いとかに頼る気は無いけどな。とりあえず樺島さんに言われたし、今日話し合いしてみよう。
長代橋か……話のきっかけに最近話題になってる浅川のカリーパンでも買ってくか。
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