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しおりを挟む「ノリちゃんは……あ、あの女のことが、好き……なの?」
アマネの部屋には入るなり玄関扉に体を押しつけられて尋ねられる。
そんな話題をアマネとするのは初めてだったから、とっさに答えに詰まってしまった。
「そんなん、いいだろ別になんでも。」
「よくない!だって、こんな事初めてじゃん、俺に黙って女の子と遊びに行くなんて……」
アマネが声を震わせながら言う。
「何でそんなことわかんだよ……って、お前!位置情報ってなんだよ!俺のスマホに変なもんいれんな!ったく。」
いつから入れてたんだ。そもそも何のために?
「消しちゃ駄目だよ。消したら体に発信器埋め込むから。」
「ひっ……」
顔がマジなんだが。もう訳わからん。こいつは何を考えているんだ。
「ね、答えて。好きなの?」
しつこく聞いてくるアマネ。これは答えないとらちがあかないな。
「まあ、向こうが俺のこと好きなら、付き合ってやってもいいとは思ったかな。そこそこ可愛いし、バカでもなさそうだから、合格ラインだったし。」
俺が言うとアマネは結構ガチで引いた顔をした。
「え、何それ最低。そんなこと相手に思ってたの。すごい失礼だよ。」
「うっさい!お前が答えろっていうから……!」
「ノリちゃん、それって好きじゃないよ。いい?ノリちゃんはあの女のことなんて好きじゃないから、もう会ったらだめだよ。」
「偉そうに。お前だって好きな子いないだろうが。」
アマネだってずっと俺といたんだし大した経験値無いはずなのに何をしったかぶっているのか。
「いるよ。ずっと好きな人いる。」
「え……嘘だろ……。」
「嘘じゃない。」
じっとみつめられて言われたアマネの言葉に衝撃が走る。
誰なんだろう。全然気がつかなかった。アマネが好きになったら、どんな相手だって応じるに決まってる。
良いことじゃないか。ずっとアマネと連んでるのは良くないって思ってた所だし。
でも何か、アマネに特別な誰かが出来た事はすごく寂しく感じる。
「そっか……付き合ったら教えてくれ、よ?」
どうにか言葉を絞って言った。
「何言ってるの?俺が好きなのはノリちゃんだよ。俺は可愛いし、バカでもないし、ノリちゃんのこと好きなんだから、ノリちゃんは当然俺にも『付き合ってやってもいい』って思うよね?ね?だけん今から俺たち付き合いましょうね。」
アマネはそう畳みかけるように言って扉に押し付けていた俺の体をぎゅっと抱きしめた。
「もーそれなら早く言ってよ~」なんてのんきに言っている。
「そーはならんやろ……。」
「なっとるやろがい。はい、今日は泊まってね帰さないから。」
「は?え?」
あれよあれよとリビングに連れ込まれてソファに座らされる。
「飲み物いる?アイステイーしかなかったんだけどいいかな?」
「それ言われたらぜってぇ飲まねぇよ。」
その台詞はネットミームになったホモビのもので、作中のアイステイーには睡眠薬が入っているのだ。
「そう?でも俺きっとこの後のセックスで長年の片思いで募ったクソデカ愛をぶつけちゃうと思うからちょっとくらい意識ない方がいいかもよ?」
「いいわけないだろ。そもそも、俺のことが好きとかいきなり言われても……」
そう言えば、アマネがソファに座る俺の目の前にしゃがんで諭すように言った。
「ノリちゃん。好きじゃない相手のスマホにスパイアプリ仕込まないよ。」
「アマネ……。いや、好きでも仕込むなよ。」
「そういう考えもあるよね。」
「そういう考えしかねぇから多様性で片付けんな。……いつから?」
「初めてノリちゃんがポムカしよって誘ってくれた時からだよ。」
「エンカウントからかよ……。」
俺は頭を抱えた。全然気がつかなかった。今思い返せば友達にしてはかなりスキンシップ多かったけど、中学からの付き合いだしそんなもんかなって……
「おい。今まで触ってきたのって、もしかして友情じゃなくて性欲?」
俺が聞けばアマネはばつが悪そうな顔をした。
「……ちょっとは……。」
まじか……何かショックだ。これがぬいペニってやつか……?言葉を聞いた時はまた女がバカなこと言ってるって腹が立ったけど、今ならちょっと気持ちが分かるというか……。
「因みに、俺の一番のオカズは中三でした抜きっこだから。」
「したなあぁ!そんなことなぁ!」
最悪だ。あの黒歴史がアマネには貴重なオカズだったとか。
俺は頭を抱えたまま丸まった。
「……俺のこと気持ち悪い?」
アマネの悲しそうな声にはっと顔を上げる。
「あ、アマネ、そんなことは……」
「ごめんね、本当は今言うつもり無かったんだ。ノリちゃんに大学4年間何も実績を積み上げさせないで俺ん家の会社に就職するしかなくして、マイナンバーや社会保険まで掌握してから告白するつもりだったのに。」
「ひっ、気持ちわる……」
「やっぱり……」
「うん、ごめん。フォローしたかったけど思った以上に気持ち悪かった。」
「そう……。ごめん。」
しばしの沈黙が流れる。俺の足下にしゃがんでうなだれているアマネを促し、隣に座らせた。
「もっとこう……普通に付き合おうぜ?マイナンバーとか考えない感じで。」
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