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雪解けの春
9.夜中の遭遇
しおりを挟むいつの間にか、暗闇の夜空にポツンと浮かぶ弓なりの月が学院を見守っていた。
案の定個別読書室にて時間を忘れてしまったレオは、あの後司書のナミアが閉館を知らせてくれるまで机にかじりついていた。じゃあその後、寮へ帰るかと思いきや、ノートとペンを持って魔法演習場に行き、またそこで一人研究に没頭していたのであった。
そして今や、いつの間にか時刻は夜の九時。手に持っていた懐中時計をポケットに閉まった。
さすがにそろそろお腹が空いたな、と腹を抑える。レオの手を止めたのは腹の虫だったようだ。
寮に帰るため正門に向かって学院内を歩いている時、ふと視界の端で仄かな光がチラつく。
「ん?」
足を止めて光の方を見上げると、視線の先は騎士科校舎だった。またぼんやりと光が浮かび、レオはあっと声をあげた。誰かがいるのは、間違いなかった。
こんな時間に誰が。すると、そう考えていたレオの肩に、ポンっと手が置かれ、驚いて振り返った。
「うわっ!」
「うおっ?」
「って、あぁ、なんだ君か……。フィリップ」
レオが振り向いた先で、目を見開いていたフィリップもまた驚いた声をあげた。
「こんな時間に何をしているんだ、さっさと帰れ」
「お互い様だろ?」
「俺はきちんと居残り申請もしているし、これから帰るところだ。お前のことだから、どうせ居残り申請もせずに正門を飛び越える気だったんだろう」
「ご名答」
「何がご名答だ……まったく。ほら、帰るぞ」
「あ、待ってくれ。なあ、あそこを見てくれよ」
「あ?」
先程光の見えた方を指さすと、どうしてか光は見えなかった。もう出ていってしまったのだろうか。
「なんだと言うんだ?」
「いや、さっきまであそこら辺の部屋が光って……あっ、ほら」
「む、本当だな。あそこは……」
また見えた。
光の動きから、部屋の中を動き回っているように思える。何かを探しているような。こくりと黙り込んで思考に入ってしまったフィリップをレオは大人しく待った。
「あそこは、職員室だ」
「職員室? まさか」
「……ああ、もしかしたら始業式の時の犯人が再び事を起こしている可能性がある。だが、そうでない場合も……何にせよ、少し見に行ってくる」
「分かった、俺も行くよ」
「は? 何故お前まで来るんだ」
「だって、フィリップが居ないと正門から出れないだろ?」
「……ふっ、それもそうだな」
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