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春秋花壇

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老いを受け入れる

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老いを受け入れる

鏡に映る自分の姿に、思わず目を疑った。深い皺が刻まれた顔、白髪混じりの髪、そして日に日に衰えていく体。

「これが、今の私なのね…」

そうつぶやくと、胸の奥から熱いものがこみ上げてきた。

私は山田光子、78歳。かつてはバリバリ働いていたキャリアウーマンだったが、今は夫と二人暮らしをしている。

若い頃は、老後なんて考えもしなかった。いつまでも若々しく、美しくいたい。そう願っていた。

しかし、現実は残酷だ。年を取ることは誰にでも訪れる。どんなに抗っても、時間は止められない。

最近では、ちょっとしたことで疲れやすくなった。物忘れもひどくなった。そして、何よりも怖いのが、孤独だ。

夫も私と同じように年老いている。子供たちは独立して、遠く離れて暮らしている。

「もし、夫がいなくなったら、私はどうなるんだろう…」

そんな不安が、夜になると頭の中をぐるぐる回る。

ある日、私は公園で一人佇んでいた。すると、一人の老婦人が私の隣に座った。

「何かあったの?」

老婦人の優しい声に、思わず涙が溢れてきた。

私は老婦人に自分の気持ちを吐き出した。老後は怖い、孤独だ、と。

老婦人は私の話を静かに聞いてくれた。そして、こう言った。

「老後は誰でも怖いものよ。でも、それは人生の一部なの。それに、孤独なんてことはないわ。あなたには、私のような友達がいるじゃない。」

老婦人の言葉に、私はハッとした。確かに、私は一人ではない。私には、夫や子供、そして友達がいる。

「ありがとう。あなたは本当に優しい人ね。」

私は老婦人に感謝の気持ちを伝えた。

その日から、私は少しずつ変わっていく。老後を受け入れるように努めた。そして、周りの人たちとの時間を大切にするようになった。

老後は決して楽なものではない。しかし、前向きに捉えれば、自分自身を見つめ直す良い機会にもなる。

私はこれからも、老いを楽しみながら、充実した人生を送っていきたい。

ある日、私はいつものように公園で老婦人と話をしていた。

「最近、何か良いことあった?」

老婦人が私に尋ねた。

私は笑顔で答えた。

「はい、実は最近、ボランティア活動を始めたんです。子供たちに読み聞かせをしているんですよ。」

老婦人は目を輝かせて言った。

「それは素晴らしいわね。あなたには、子供たちを笑顔にする力があるのよ。」

私は老婦人の言葉に、心が温かくなった。

老後は、誰にとっても訪れる。しかし、老後は人生の終わりではない。老後だからこそできること、楽しめることがある。

私はこれからも、老いを恐れずに、自分の人生を歩んでいきたい。

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