『帝国第五王女の結界は、婚約破棄では解けません』

登場人物紹介

登場人物紹介

■ セラフィーナ・ヴァルモンド（18）

帝国皇帝の第五王女。
幼少期から強い魔力を持ち、結界術・防御魔術に秀でる。才能は父皇帝にも高く評価されているが、本人は誇りよりも「役に立ちたい」という静かな願いの方が強い。

王宮で育った彼女は、愛＝忠誠ではないことを体で知っている。
幼い頃、母妃が政略で失脚した経験があり、愛情に対し用心深い。

名門公爵家の願いにより、公爵子息レオンと婚約。異国での暮らしに戸惑いながらも、結婚に夢を持ち、家族として努力しようとした。

だが婚約生活は過酷だった。
雑務・庭の手入れ・無理な買い出し・身の回りの雑役。公爵家の者たちは、王女である彼女に敬意を払うどころか、**「魔力があるなら家事が楽だろう」**と当然のように押しつける。

彼女は傷つきながらも、静かに耐える。
なぜなら——

「婚約とは、相手に恥をかかせない努力」

そう信じていたから。

しかし繰り返される消耗で魔力は薄れ、魔力コンテストの頃には、ほとんど火花程度にまで衰弱していた。

それでも彼女は一切言い訳しない。
その沈黙こそが物語の火種となる。

強み：耐性・責任感・結界術
弱点：無言の献身・境界線を引くのが苦手
物語の変化：婚約破棄を境に「沈黙＝忠誠」ではなく、「沈黙＝自己犠牲」だと悟る。

■ レオン・アルステッド（19）

アルステッド公爵家・嫡男。セラフィーナの婚約者。
容姿端麗で温厚、魔術の才能は高い。王都社交界で人気がある。

だが、致命的な欠点がある。

「幼馴染を切れない」

セラフィーナとの婚約は名誉であり帝国への恩義でもあったが、彼の心は幼馴染の男爵令嬢ミレーユに縛られている。

レオンは悪人ではなく、むしろ罪悪感は常に持っている。
だが、その罪悪感が行動を伴わない。

ミレーユが頼めば、

庭の整備

掃除・食材の買い出し

家の雑務

学園での雑役

をセラフィーナに押しつける。
レオン自身は「たった少し頼んだだけ」と思っているが、積み重なれば王女の魔力が衰えるほどの重労働だ。

そして学園行事である魔力コンテストの日、レオンはミレーユの策略に気づかない。
セラフィーナが魔力を吸われても、彼は公衆の面前で平然と告げた。

「婚約を解消したい。帝国第五王女が、この程度とは思わなかった」

その一言で、彼は一生後悔を背負うことになる。

強み：品位・魔法・才能
弱点：優柔不断・情に流される・責任転嫁
物語の変化：彼は、婚約破棄後に初めて真の恐怖と贖罪を知る。

■ ミレーユ・グランツ（18）

男爵家令嬢。レオンの幼馴染。
気弱そうな顔をしているが、計算力が鋭い。

ミレーユは、自らの美しさと涙を武器にできる人間。
セラフィーナに嫉妬しているが、それは単純な恋の嫉妬ではない。

「なぜ、努力しないで魔力と血統を持つのか」

彼女は自尊心を保つため、周囲にこう吹聴する。

「あの王女さまは、公爵家の仕事を知らない。雑務ができない」

真実は逆。
セラフィーナができすぎるから、雑務はすべて押しつけられる。

魔力コンテストの日、ミレーユは密かに魔道具を使い、セラフィーナの魔力を吸い取る。
その目的はコンテストで勝つことではない。

「婚約破棄の口実をつくること」

ミレーユは学園全体を味方につける方法を知っている。
彼女の野心は小さく見えて、実は深い。

強み：計算、涙、情報戦
弱点：自罰感情、嫉妬、境界線の欠如
物語の変化：帝国軍の到来と、結界の残留を前に、自分の人生が終わったことを悟る。

■ 皇帝アルキミオン（50代）

帝国の皇帝にして、セラフィーナの父。
強大でありながら、娘には驚くほど優しい。

セラフィーナには自由に生きることを望んでいたが、公爵家がどうしても婚約を所望したため、政略の恩義として娘を送り出した。

だが、帝国の掟がある。

「帝国王家の血統は、どの国より必要以上に傷つけてはならない」

セラフィーナの魔力衰弱と婚約破棄を知った瞬間、皇帝は激怒した。

帝国は即座に軍を動かす。
兵1万人、学園に雪のように降り立つ。

皇帝は冷ややかに公爵へ告げる。

「婚約破棄は構わぬ。しかし――王女の結界は解けぬ。
それは王家の記録であり、侮辱の証となる」

皇帝にとって守りたいものはただ一つ。
娘の尊厳。

強み：威厳、結界術、政治力
弱点：娘に甘い
物語の変化：娘の帰還を祝福する父として物語を締める。

■ エトワル（23）

帝国直属の近衛魔術師。
セラフィーナの護衛であり、幼馴染に近い関係。

物語の前半には登場しない。
婚約破棄後、結界が揺らいだ瞬間に現れる。

彼は静かだが怒っている。

「あなたは黙りすぎました。境界を引くのは、あなたを守るためです」

エトワルは公爵家に冷ややかに言い放つ。

「王女の沈黙を、献身と勘違いする愚かさに、いつ気づくのです？」

セラフィーナに忠誠ではなく、敬意を払う人物。
恋愛的な匂いを入れることも可能（必要なら第7話以降）。

◆ 人間関係・対立図（わかりやすい）
セラフィーナ
   └─（婚約者）→ レオン（情に流される）
                       └─（執着）→ ミレーユ（嫉妬と操作）

セラフィーナ
   └─（父）→ 皇帝（軍1万人）

セラフィーナ
   └─（護衛/敬意）→ エトワル


婚約破棄後、セラフィーナは自分を取り戻していき、
レオンは “結界の意味” を初めて知り、
ミレーユは 人生の潮が引く瞬間 を味わい、
皇帝は 父としての怒りの形 を示す。