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12.二人目と三人目の婚約者候補③
前回の観察も充実していてとても有意義な時間を過ごせたけれども、今回は有意義な上に楽しくて仕方がない。
何も観察対象達が面白いことをしているわけではない。
隣にトナがいるから楽しいのだ。彼との会話には上辺だけの美辞麗句やお世辞がない。
今までに社交界でこんなに直球で話してくる人に会ったことはなかった。
今もちゃんと観察しながらもお互いに他愛もない会話を楽しんでいる。
「…エミリア、もう一度兄について詳しく話してくれ」
私が最近の出来事を話しているとなぜかトナは兄のことが気になったようで、もっと詳しく知りたがった。別に隠すことはないので正直に兄の様子を教えてあげる。
「えっ、お兄様のこと?いいわよ。
最近、変なのよ。体調は戻ったんだけど、なんか常に変な感覚が抜けないみたいで『水の中でフワフワと漂っている感じがするんだ…なんでだろう?』て言っているの。
お医者様には異常は無いって診断されたんだけど」
「・・・・・」
トナは黙ったまま真剣な顔で考え込んでいる。もしかしたら彼はこの病についてなにか心当たりがあるのだろうか。
彼は上位貴族だから下位貴族よりも情報を持っているのかもしれない。
「もしかしてこの症状が表れる病気に心当たりがあるの?どこかで流行り始めているの?」
「…いや、流行っていない。心当たりはないような、あるような…」
彼にしては歯切れが悪い。きっと兄の気の病である可能性を考えて言葉を濁してくれているのだろう。
彼は口が悪いけど優しい人なのだ。
それは話してよく分かっていた。
優しい彼にこれ以上気を使わせたら申し訳ないので『大丈夫よ、有り難う』と言ってその話は終わりにした。
そしてまた楽しく二人で観察を続ける。
二人目と三人目の婚約者候補はどちらも美男子だった。天使のひ孫を求める祖父が顔重視で選んだことが丸わかりだ。
伯爵家と子爵家の嫡男で、両家ともにそこそこ裕福で経済的に問題も抱えていない。
礼儀作法も完璧、明るい性格のようで友人達も多い。
今のところ二人ともに好印象と言うしかなかった。
それならばどうして子爵令嬢の婚約者候補にという疑問が浮かんでくる。我が家は裕福でもないし爵位も高くないから相手方にメリットはない。
「お祖父様にどんな弱みを握られているのかしら?」
「さあなー、もしかしたらあの若さですでに隠し子が20人以上いたりしてな。嫁いだらそこは保育所だったなんて笑えるな、はっはっは」
トナは声を上げて笑っているけど私は笑えない。
貴族男性は裏で愛人を囲っている人はたくさんいるので現実としてありそうで怖い。
というかその確率が高そうだ。
見た目良し・性格良し・家も良しなんて優良物件に婚約者がいないほうがおかしい。
『隠し子、愛人ほぼ決定!』と手にしているメモに大きな文字で書き込む。
でもそうだったならどうしよう。
より子供の人数が少ない方にするかそれとも愛人の数が少ないほうがいいか。
はぁ…どっちも嫌すぎて選べない。
悩んでいると隣りにいるトナが『俺なら子供も愛人もいない』とボッソと呟いている。
どんなにトナが誠実な人でも彼は祖父が選んだ候補者たちの中には入っていない。だから彼が婚約者になることはない。
『ズキンッ…』
ちょっと胸が締め付けられる気がした。
もしかしたら私も兄と同じ気の病なのかもしれない。言い方は違うけど、人によって感じ方は異なるものだと聞いている。少しおっとりした兄はフワフワでしっかり者の私はズキンと感じたのだろう。
うん?ちょっとの違いかしら?
なんかだいぶ違う気がするけど。
でも表現って難しいから、個性の違いが反映されている?でいいわよね。
私はトナがの声が聞こえなかったふりをして観察に勤しむことにした。
だが時間が経過するにつれ違和感を感じ、私とトナの会話は減っていく。別に私達の間に違和感があるのではない、違和感があるのはあっち側、つまり観察対象達だった。
何も観察対象達が面白いことをしているわけではない。
隣にトナがいるから楽しいのだ。彼との会話には上辺だけの美辞麗句やお世辞がない。
今までに社交界でこんなに直球で話してくる人に会ったことはなかった。
今もちゃんと観察しながらもお互いに他愛もない会話を楽しんでいる。
「…エミリア、もう一度兄について詳しく話してくれ」
私が最近の出来事を話しているとなぜかトナは兄のことが気になったようで、もっと詳しく知りたがった。別に隠すことはないので正直に兄の様子を教えてあげる。
「えっ、お兄様のこと?いいわよ。
最近、変なのよ。体調は戻ったんだけど、なんか常に変な感覚が抜けないみたいで『水の中でフワフワと漂っている感じがするんだ…なんでだろう?』て言っているの。
お医者様には異常は無いって診断されたんだけど」
「・・・・・」
トナは黙ったまま真剣な顔で考え込んでいる。もしかしたら彼はこの病についてなにか心当たりがあるのだろうか。
彼は上位貴族だから下位貴族よりも情報を持っているのかもしれない。
「もしかしてこの症状が表れる病気に心当たりがあるの?どこかで流行り始めているの?」
「…いや、流行っていない。心当たりはないような、あるような…」
彼にしては歯切れが悪い。きっと兄の気の病である可能性を考えて言葉を濁してくれているのだろう。
彼は口が悪いけど優しい人なのだ。
それは話してよく分かっていた。
優しい彼にこれ以上気を使わせたら申し訳ないので『大丈夫よ、有り難う』と言ってその話は終わりにした。
そしてまた楽しく二人で観察を続ける。
二人目と三人目の婚約者候補はどちらも美男子だった。天使のひ孫を求める祖父が顔重視で選んだことが丸わかりだ。
伯爵家と子爵家の嫡男で、両家ともにそこそこ裕福で経済的に問題も抱えていない。
礼儀作法も完璧、明るい性格のようで友人達も多い。
今のところ二人ともに好印象と言うしかなかった。
それならばどうして子爵令嬢の婚約者候補にという疑問が浮かんでくる。我が家は裕福でもないし爵位も高くないから相手方にメリットはない。
「お祖父様にどんな弱みを握られているのかしら?」
「さあなー、もしかしたらあの若さですでに隠し子が20人以上いたりしてな。嫁いだらそこは保育所だったなんて笑えるな、はっはっは」
トナは声を上げて笑っているけど私は笑えない。
貴族男性は裏で愛人を囲っている人はたくさんいるので現実としてありそうで怖い。
というかその確率が高そうだ。
見た目良し・性格良し・家も良しなんて優良物件に婚約者がいないほうがおかしい。
『隠し子、愛人ほぼ決定!』と手にしているメモに大きな文字で書き込む。
でもそうだったならどうしよう。
より子供の人数が少ない方にするかそれとも愛人の数が少ないほうがいいか。
はぁ…どっちも嫌すぎて選べない。
悩んでいると隣りにいるトナが『俺なら子供も愛人もいない』とボッソと呟いている。
どんなにトナが誠実な人でも彼は祖父が選んだ候補者たちの中には入っていない。だから彼が婚約者になることはない。
『ズキンッ…』
ちょっと胸が締め付けられる気がした。
もしかしたら私も兄と同じ気の病なのかもしれない。言い方は違うけど、人によって感じ方は異なるものだと聞いている。少しおっとりした兄はフワフワでしっかり者の私はズキンと感じたのだろう。
うん?ちょっとの違いかしら?
なんかだいぶ違う気がするけど。
でも表現って難しいから、個性の違いが反映されている?でいいわよね。
私はトナがの声が聞こえなかったふりをして観察に勤しむことにした。
だが時間が経過するにつれ違和感を感じ、私とトナの会話は減っていく。別に私達の間に違和感があるのではない、違和感があるのはあっち側、つまり観察対象達だった。
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