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22.王子観察~午後の部②~

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王宮を抜けて真っ直ぐ10分ほど歩いて行くと緑に囲まれた広大な訓練場があった。そこがララ達の午後の目的の場所であり、タイオン帝国騎士団の訓練場所でもあった。すでに訓練場にはムキムキマッチョの騎士達が集まっていて演習の為の準備を始めていた。その訓練場の周りにはカラフルなドレスを着た女性達がわんさか群がっていた。その様は砂糖を見つけた蟻にそっくりだった。
みんな口々に騎士の誰かの名前を叫んだり、『キャー、こっち見てくれた!」などやかましくしている。

「ウッキ、ウッキッキウキ?」
「駄目よにんにん。午後の観察は女性達に変更はしません。蟻の観察は定番だから簡単そうに思うけどそれは違うの。軍隊蟻といって獲物に集団で襲い掛かる獰猛な蟻もいるんだよ、あの女性達はそっちの部類に入る蟻だから危ないわ。予定通りの王子観察の方が安全だと思うよ」
「ウッキー」
「じゃあ急ごう。訓練場に勝手に入っても大丈夫みたいだから行ってみよう!」

ムキムキマッチョ騎士団と訓練場に群がる女性達を見比べたにんにんは安全そうな蟻観察への変更を希望したが、ララから軍隊蟻の話を聞いて素直に王子観察へと行くことにした。

『キャーキャー』騒いでいる集団を必死にかき分け、二人はゼェゼェしながらなんとか訓練場入口に近付くことが出来た。入口では派手な髪型の令嬢が騎士と揉めていた。

「私は午前のお茶会でトカタオ様やカイ様と親密な関係になったのよ。お二人とも私が近くで応援する事を望んでいるわ、なかに入れなさい!」
「入れるなと命令を受けております」
「あんたなんか首にしてやるわ」
「命令は絶対です」

暫く押し問答を繰り返していたが、令嬢は文句を言いながら訓練場周辺にある観覧席の方へと消えていった。
そのやり取りをつぶさに見ていたララとにんにんは『話が違う!絶対に入れないじゃん』と焦っていた。
二人には選択肢は三つある。
①強行突破して玉砕する?(ムキムキマッチョ手加減してくれるかな…)
②軍隊蟻の観察に切り替える。(無傷で帰れるかな…)
③何もせずに帰る。(途中で投げ出したと叱られそうな予感が…)

どれを選んでもデメリットがあるので決められない。『うーん…』と考えているが名案は浮かばない。【三人寄れば文殊の知恵】とあるがちびっこ竜人とミニ猿だけでは足りない様だ。足りないのはやはり人数なのか、それとも違うものなのか…。『もちろん人数だもん!』『ウキ!』


「よし!腹を括ろう。私達は無敵の【チームにんにん】だもん。強行突破だー」
「ウキー!」

悩むのが面倒になったララとにんにんは投げやりに①を選択する事にした。ララは小さなにんにんをひょいっと抱き上げ両手で胸にしっかりと抱え込む。何があってもにんにんだけは守ろうと心に決めているのだ。


入口の前を守っているムキムキマッチョ騎士に向かってゆっくりと歩いて行くララルーア。その様子は堂々としていて全く慌てていない。もしかしたら何か秘策をドウリアから授けられていたんじゃないかとにんにんは思い始めたその時、ララの大きな声が頭の上から聞こえてきた。

「こんにちはー!今日はいい天気ですね!絶好の訓練観察日かな~と思って来ちゃいました。お邪魔しまーす!」

秘策なんて全くなかった…、ただの元気な挨拶だった。---挨拶は基本です。


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