あなたの『番』はご臨終です!

矢野りと

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23.王子観察~午後の部③~

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「どうぞ、お入りください」
「えっ!…ど、どうも」

なんとムキムキマッチョ騎士はすんなりとララ達を訓練場の中に入れてくれたのだ。門前払いされると覚悟していたが、騎士は大きな体をすっと右に動かし入口の扉を手で押さえて、ララ達がスムーズに中に入るように気まで使ってくれている。
それを見ていた蟻令嬢達は『ずるいわ、私も入れて!』『なにあのピンクの子豚。生意気だわ』と喚いている。
前半のセリフはどうでもいいが、ララは後半のセリフは聞き逃さなかった。
お気に入りのドラマで学んだ【やられたら倍返しだ】をララは即実践することにした。『あらなんか蟻がいるのかしら~』と言いながらピンクの尻尾を後ろにいる蟻令嬢達に向かってブルンブルンと振り回した。たちまち砂がわんさか舞い上がり後ろにいた令嬢達は全身砂まみれとなり『ゴホッゴホッ。なにこれー。もうっ』と逃げ回っていた。---倍返しではなく十倍返しでは?
上手に倍返しが出来たララはご機嫌で訓練場へと入っていった。


訓練場には入口の騎士よりも更に厳つい男達が揃っていて、そこはムキマッチョパラダイスになっていた。外にいる令嬢達はこれに夢中のようだが、ララとにんにんにはどうでもいい事だった。

「なんかお父様みたいなのがうじゃうじゃいるー。暑苦しいね、にんにん」
「ウキウキ」
「とりあえず王子を探して半径五メートル以内に行こうね」
「ウッキー」

だがいくら探してもマッチョの中にトカタオは見つからなかった。いつも王子の側を離れない護衛騎士カイもいないので、どうやらまだ訓練場に到着していない様だ。---諸事情によりヘロヘロになり遅れています。

侍女のドウリアから『まず最初に安全場所を確保してください』と厳命されていたが王子がいないとそれが出来ない。どうしたものかと考えていると、ムキマッチョの中でも一番のゴリマッチョがララ達にずんずんと近づいてきた。

「あれ~、ゴリさんどうしてここにいるの?」
「ララよく来たな!俺はこの騎士団団長をやっているんだ。ドウリアから話は聞いている、好きにやっていいぞ」
「ありがとう。ゴリさんが団長だなんて知らなかったよ、凄い人なんだね!」
「ハッハッハ、ララに褒めてもらえると照れるな」

実はこのゴリさんことバロン・タイオンは竜王弟にしてタイオン帝国騎士団団長であり『黒き盾』という二つ名まであるお偉いさんなのだ。
なぜララが団長と知り合いなのかと言うと、団長は昼休みの食堂でララの可愛さに悶えていた中の一人だった。その時にララから『筋肉をすごーい!』と言われ、思わず『ゴリさんと呼んでくれ』と言ってしまったお馬鹿さんでもあった。名前の中にゴリさん要素は全くないが、可愛いララに覚えてもらいたくて咄嗟に出たのがゴリさんだったのだ。ちなみに【ララファンクラブ】にもすでに入会済である。

ララと団長のやり取りを見ていた騎士達は『あの団長がゴリさん…』『でもあの子とミニ猿、可愛いぞ』と団長のデレデレ具合に驚き半分、ララ達の小動物特有の可愛さに同調半分といったところだった。
自然と騎士達がララと団長の周りに集まって来たので、訓練前にララ達を紹介する事になった。

「みんな聞いてくれ。この可愛い子達はララとにんにんだ。今日は王子の側で訓練の見学をする予定だ。見学と言っても遊びじゃない、ララの仕事だから決して邪魔はしないように!可愛いからって見とれて訓練をサボる奴は許さんからな」

前半はまともな紹介だが、後半のセリフには(((誰に言っているんだ、自分自身が気をつけろ)))とデレデレしている団長に騎士達は冷たい視線を投げかけていた。


まだ二名ほど来ていないが訓練開始時刻となったので演習を始めることになった。今日の演習は二チームに分かれての戦闘訓練だ、刃を潰した剣を使用するがマッチョ達が本気でぶつかり合うので危ないことに変わりはない。

「じゃあ今日の詳細を発表する。二チームに分かれて戦うのはいつも通りだが、今日はちょっとスパイスを効かせることにした。可愛い姫を悪チームから善チームが守るという設定だ。
当然可愛い姫はララで、王子が入るチームが善チームになる。もう一つが悪チームだ。ララは今日王子の半径五メートル以内に居るが両チームとも決して姫を傷つけてはならん!分かったなー!」
「「「オオーーー!!!」」」

目新しい設定に騎士達のやる気も俄然上がっていく、『ララ姫よろしく。守り抜くからな』『ララ姫、必ず奪いに行くぞー』と盛り上がっている。
ララも『わぁーい♪姫役嬉しいな』とやる気満々で、『にんにんは弟王子役ね』『ウキキイー』と勝手に新しい役まで作り始めている。

団員達がガヤガヤと準備に掛かっているとトカタオとカイが少しヘロヘロしながら訓練場に入ってきた。
遅れてきたトカタオはララルーアの存在に気がつくと、グアッと目を見開いて叫んでいた。

「このちびがどうしてここにいるんだーーーー!」

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