あなたの『番』はご臨終です!

矢野りと

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39.女の花道?②

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ギッギギーー。
ララの部屋の扉がまた少しだけ開き一枚の紙が差し出されてきた。
【ドウリアとにんにんは入室してもいいよ】
その紙を読んだにんにんは扉の隙間から意気揚々と入っていき、残される者達を振り返りもしなかった。けれども入室を許されたもう一人の人物ドウリアは違った。その紙を読むなり悲壮感を溢れさせ護衛のカイに掴みかかり『どうして俺は入室を許されん!』と叫んでいる王子に目をやり、このまま自分だけ入室していいものかと思案している。

「よし、それなら俺はドウリアの代わりになってララの部屋に入室をする。ドウリアすぐに侍女服を脱いで俺に渡せ。その服を着たら俺も問題なく入室できるはずだ」

((いやいや問題ありです、大ありです!))

ツカツカツカ、ギッギーーバタン!

ドウリアは王子の馬鹿げた提案を聞くなり、ララの部屋へと足を進め王子を振り返ることなく黙って扉を閉めた。常識人として当然の判断である。女装のチャンスを無くしたトカタオは『不敬罪だぞ』と叫んでいるようだが、カイによって強制的に黙らされたようだ。王子の側にも常識人カイがいて本当に良かった…。


入室したにんにんとドウリアはマオからララとの話の内容を聞き、絶句していた。もちろんララの初恋相手がトカタオだという事ではなく、【女の花道】云々に関することにである。

『ララ様、それでいいのですか。清い初恋がなんかくすんで見えますが…』

ドウリアとにんにんが兄であるマオにこんな事に本当に協力するんですかと目で訊ねているが、マオは『可愛いのに残念な妹ですまん』と両手を合わせて謝っている。

これでララの【女の花道】をみんなで応援する事が決まった。

(((はぁ~…)))

「ララ様は王子から告白されて恋人同士になりたいという認識で間違いありませんね?」
「うん、なにか名案はあるかな~?」
「ウッキウッキー。ウッキキイウ?」
「にんにんの案は定番中の定番ですが、お色気作戦はまだ子供のララ様には早すぎる手法かと思いますよ」
「そんな破廉恥な作戦は駄目だ!ミニ猿、何を考えている。天使のララは清き存在なんだからな」

にんにん提案のお色気作戦はドウリアとマオの反対で却下されてしまったが、ララだけは不満そうにブーブー言っている。『私その作戦出来るのにー。もう立派なレディなんだからね』無い胸を寄せてだっちゅ~のポーズでアピールしている。
だが誰もその案の再考はしなかった、提案者であるにんにんさえもお色気作戦は無理だとララのポーズを見て悟っていた。

「では定番の焼きもち作戦はどうですか?男性は気になる女性に他の男の影が見えると取られたくなくて焦って告白をするものです。王子はララ様の存在を大層気にしている様子なので上手くいくと思いますよ」
「それなら妥当だな。ララどうする?」
「うん、これやってみる!でも他の男って誰に頼もうかな~。ゴリさんなんてどうかな?」
「ブッキー×!ウッキッキイイイ!」
「ゴリさんは駄目?!変態だから本気にされたら後が大変か。にんにんがそういうなら止めておくね」
「危ない奴に頼むのはいかんな。にんにんよくぞ止めてくれた、有り難う」

その後も何人かの名前が上がったが様々な理由で没となっていった。もう決まらないのかと誰もが諦め始めた時、『灯台下暗し』の名前が上がった。

「にんにんでどうでしょう?男の子ですし、常にララ様のお側にいるので適任ではないですか」
「にんにんか考えてもいなかったが、意外といい案だな。ララに本気でちょっかいを出してくる心配はないし、俺は賛成だ」
「ウッキ。ウッキウッキウラブキー」
(いいよ。でも僕に間違っても本気で惚れるなよー)

ドウリアの提案にマオとにんにんは賛同している。本心ではもう【女の花道】作戦を考えるのが疲れて来たのだろう。このまま多数決で影の男役『にんにん』に決定しようとした時、ララが待ったを掛けた。

「なんか違うもん!にんにんは素敵なミニ猿だけど、私が求めている相手役じゃないもん!」
「竜人でも獣人でも人でも恋愛は自由に行われます。タブンミニザルデモ…。ララ様、まさか種族差別をするのですか。そんな事はし・ま・せ・ん・よ・ね?」
「………し、しないもん」

またしてもララはドウリアの無理矢理な正論に屈服し、相手役にんにんで女の花道に臨むこととなった。この配役に大いに不満はあるが、決まったことは覆せない。もうやけくそで前進あるのみである。

とりあえず明日から焼きもち作戦レッツゴー!!---ミニ猿に焼きもちを焼く男なんているのか?

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