2 / 28
2.不穏な噂
リデックが騎士団の訓練が終了した後に執務室で副団長としての書類仕事を進めていると、後から戻ってきた団長に話し掛けられた。
「おい、リデック大丈夫か?」
「何がですか?」
団長の質問の意味が分からず、リデックは書類にサインする手を止め首を傾げながら、質問に質問で返した。
団長は少し困った顔をしながら、今度は分かりやすい言葉を口にした。
「あのタチアナ王女が帰還されるんだぞ。気持ちが揺れているだろう?仕事が手につかない様なら早めに帰っていいぞ」
「何を言っているんですか。あれはもう終わったことですから問題なんてありません。変な風に気を回さないでください」
---今更なんだというんだ。あれは過去のことなのに。
リディックは気を使っているつもりの団長を煩わしく感じていた。三年前に終わった恋を面白おかしく話されるのも嫌だが、変に気を使われるのはもっと不愉快だ。
団長はリディックの反応に意外そうな顔をして、『うーん、こんなはずでは…』と言いながら頭を捻っていた。
「おかしいな。タチアナ王女と相思相愛のお前が今回の事を知ったら、動揺するだろうからフォローをするように言われていたんだが…。まったく普段通りの無表情だよな、どういう事だ?」
そうリデックは感情があまり顔に出ない、女性達からは『またその冷たい感じが良いわ』と言われるが、騎士団の仲間からは『美形だと無表情も許さるのか!リデックの馬鹿野郎!』と八つ当たりをされている。
だが今の団長の発言で気になったのは無表情ではなく相思相愛という言葉だった。
確かに王女とリデックは三年前清い関係を貫いていたが相思相愛だった。しかし今のリデックは既婚者なので、そんな言葉を使うのは相応しくないはずだ。
「団長。相思相愛ってどういう意味ですか?俺はもう妻帯者ですよ」
「それはそうだが、お前とタチアナ王女の悲恋は有名だ。別れた後もお互いを想い合って生きてきたんだろう?今回の帰還でその気持ちが抑えられなくなるだろうから、応援するようにと上からも言われているぞ」
「応援?いったい何をですか?」
「それはお前とタチアナ様の苦難を乗り越えた真実の愛の事だろう?貴族の婚姻は政略が多いから真実の愛は妻以外と育むことが認められている。お前も愛のない政略結婚だったからなー」
団長はリデックがまだ王女への恋心を持ち続けていると信じているようだった。一方的に決めつけて『頑張れよ』なんて言って、肩を叩いてくる。
リデックの知らない所で、過去の恋がまた動き始めているようだった。人は悲恋や美談といった噂話を好むものだ、また一部の貴族達がまことしやかに噂を広めて楽しんでいるのだろう。
そんな事は貴族社会ではよくある事だった。それは貴族であるリデックも良く分かっている。
変に否定して回ると噂とは逆に燃え上るのを知っているリデックは、団長の言葉を否定も肯定もせずに黙ったまま書類仕事を続けることにした。
早くに噂を消すにはそれに関わらないのが一番良い方法だと考えたからだった。
「おい、リデック大丈夫か?」
「何がですか?」
団長の質問の意味が分からず、リデックは書類にサインする手を止め首を傾げながら、質問に質問で返した。
団長は少し困った顔をしながら、今度は分かりやすい言葉を口にした。
「あのタチアナ王女が帰還されるんだぞ。気持ちが揺れているだろう?仕事が手につかない様なら早めに帰っていいぞ」
「何を言っているんですか。あれはもう終わったことですから問題なんてありません。変な風に気を回さないでください」
---今更なんだというんだ。あれは過去のことなのに。
リディックは気を使っているつもりの団長を煩わしく感じていた。三年前に終わった恋を面白おかしく話されるのも嫌だが、変に気を使われるのはもっと不愉快だ。
団長はリディックの反応に意外そうな顔をして、『うーん、こんなはずでは…』と言いながら頭を捻っていた。
「おかしいな。タチアナ王女と相思相愛のお前が今回の事を知ったら、動揺するだろうからフォローをするように言われていたんだが…。まったく普段通りの無表情だよな、どういう事だ?」
そうリデックは感情があまり顔に出ない、女性達からは『またその冷たい感じが良いわ』と言われるが、騎士団の仲間からは『美形だと無表情も許さるのか!リデックの馬鹿野郎!』と八つ当たりをされている。
だが今の団長の発言で気になったのは無表情ではなく相思相愛という言葉だった。
確かに王女とリデックは三年前清い関係を貫いていたが相思相愛だった。しかし今のリデックは既婚者なので、そんな言葉を使うのは相応しくないはずだ。
「団長。相思相愛ってどういう意味ですか?俺はもう妻帯者ですよ」
「それはそうだが、お前とタチアナ王女の悲恋は有名だ。別れた後もお互いを想い合って生きてきたんだろう?今回の帰還でその気持ちが抑えられなくなるだろうから、応援するようにと上からも言われているぞ」
「応援?いったい何をですか?」
「それはお前とタチアナ様の苦難を乗り越えた真実の愛の事だろう?貴族の婚姻は政略が多いから真実の愛は妻以外と育むことが認められている。お前も愛のない政略結婚だったからなー」
団長はリデックがまだ王女への恋心を持ち続けていると信じているようだった。一方的に決めつけて『頑張れよ』なんて言って、肩を叩いてくる。
リデックの知らない所で、過去の恋がまた動き始めているようだった。人は悲恋や美談といった噂話を好むものだ、また一部の貴族達がまことしやかに噂を広めて楽しんでいるのだろう。
そんな事は貴族社会ではよくある事だった。それは貴族であるリデックも良く分かっている。
変に否定して回ると噂とは逆に燃え上るのを知っているリデックは、団長の言葉を否定も肯定もせずに黙ったまま書類仕事を続けることにした。
早くに噂を消すにはそれに関わらないのが一番良い方法だと考えたからだった。
あなたにおすすめの小説
口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く
ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。
逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。
「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」
誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。
「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」
だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。
妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。
ご都合主義満載です!
婚約する前から、貴方に恋人がいる事は存じておりました
Kouei
恋愛
とある夜会での出来事。
月明りに照らされた庭園で、女性が男性に抱きつき愛を囁いています。
ところが相手の男性は、私リュシュエンヌ・トルディの婚約者オスカー・ノルマンディ伯爵令息でした。
けれど私、お二人が恋人同士という事は婚約する前から存じておりましたの。
ですからオスカー様にその女性を第二夫人として迎えるようにお薦め致しました。
愛する方と過ごすことがオスカー様の幸せ。
オスカー様の幸せが私の幸せですもの。
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
【完結】貴方の望み通りに・・・
kana
恋愛
どんなに貴方を望んでも
どんなに貴方を見つめても
どんなに貴方を思っても
だから、
もう貴方を望まない
もう貴方を見つめない
もう貴方のことは忘れる
さようなら
【完結】婚約者は私を大切にしてくれるけれど、好きでは無かったみたい。
まりぃべる
恋愛
伯爵家の娘、クラーラ。彼女の婚約者は、いつも優しくエスコートしてくれる。そして蕩けるような甘い言葉をくれる。
少しだけ疑問に思う部分もあるけれど、彼が不器用なだけなのだと思っていた。
そんな甘い言葉に騙されて、きっと幸せな結婚生活が送れると思ったのに、それは偽りだった……。
そんな人と結婚生活を送りたくないと両親に相談すると、それに向けて動いてくれる。
人生を変える人にも出会い、学院生活を送りながら新しい一歩を踏み出していくお話。
☆※感想頂いたからからのご指摘により、この一文を追加します。
王道(?)の、世間にありふれたお話とは多分一味違います。
王道のお話がいい方は、引っ掛かるご様子ですので、申し訳ありませんが引き返して下さいませ。
☆現実にも似たような名前、言い回し、言葉、表現などがあると思いますが、作者の世界観の為、現実世界とは少し異なります。
作者の、緩い世界観だと思って頂けると幸いです。
☆以前投稿した作品の中に出てくる子がチラッと出てきます。分かる人は少ないと思いますが、万が一分かって下さった方がいましたら嬉しいです。(全く物語には響きませんので、読んでいなくても全く問題ありません。)
☆完結してますので、随時更新していきます。番外編も含めて全35話です。
★感想いただきまして、さすがにちょっと可哀想かなと最後の35話、文を少し付けたしました。私めの表現の力不足でした…それでも読んで下さいまして嬉しいです。