どうかこの偽りがいつまでも続きますように…

矢野りと

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12.真相の究明①

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本当は隠したいことだってたくさんあった。

生徒会役員とのことだって優秀な文官である彼が聞けば『もっと良い方法はあっただろう』と呆れられるかもしれない。
家族に見捨てられ、私の元婚約者は妹と新たに婚約を結び直したと冷静に伝える自信もない。それにまだ私が…、妹の婚約者となったガイアを愛していることを伝えるのも惨めすぎる。

でも本当のことを全て言わなければ、見落とすことがあるかもしれない。それでは意味がないのだ。
 
だから全てを曝け出す覚悟で話した。取り繕ったせいで手掛かりが見つからなければ、何も変われない。

 変わりたいっ…。
 また元に戻りたい、愛されたい。
 愛することを許されたい……。


家族や婚約者と仲が良かった頃から話し始め、生徒会とのこと、罪を被せられ魅了を封じる茶番に付き合い開放されたこと。それから大切な人達から拒絶され、親しかった友人達も離れていき、いつしか諦めることを受け入れ孤独に生きてきたこと。

なるべく冷静に話そうとは努力していた。でも話しているとあの頃の気持ちが蘇ってきて感情的になってしまった。

嗚咽しながら話す声はどんなにか聞きづらかっただろう。

でも彼は私が話し終えるまで口を挟むことなく最後まで静かに耳を傾けてくれていた。


自分で覚えていることはすべて伝えたと思っていたけれども、『これはどうだったのか教えて欲しい』と彼から質問され、何度か話し忘れていたことを付け足し、話し終えたのは学園が閉門するぎりぎりの時間になっていた。


「すまない、かなり遅くなってしまったな。帰りは大丈夫だろうか」

一応は貴族なので両親も迎えの馬車を取り上げはしなかったので、帰りは問題ない。

「はい、大丈夫です。それより今日は有り難うございました。これから私は何をすればいいでしょうか?」

少しでも私が役に立つことがあるなら手伝いたい。

「そうだな、シシリアの話しは覚えたつもりだが、名前を聞き間違えているといけないので君に関わった人物の名前を記したリストを作って欲しい。あとこれが重要なんだが、今まで通りに過ごして欲しいんだ」

「今までで通り…ですか?」

一体どういうことだろう。

「今回のことで気持ちが前向きになっていると思うが、それを表には一切出さないで欲しい。魔術を掛けた相手がどんな意図をもっているかも分からない以上、相手が何で刺激されかも分からない。
もしかしたらどん底の君のままでいて欲しいのかもしれない。だとしたら君の変化を察して新たに術を掛ける可能性もある。それを避ける為だ」

確かに彼の言う通りだった。掛けた術の結果を考えれば、術者が私に好意を持っているとは到底思えない。

「分かりました、今まで通りに全てを諦めているように振る舞います。あとこちらからも一つお願いがあるのですが…」


手にしたのは本当に微かな希望。
今の段階では叶うかどうかも分からない。

それでも可能性が少しでもあるならと思ってしまう。
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