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14.真相の究明③
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「お姉様、挨拶が済んだならもうお部屋に戻られたらどうですか……」
睨むように見ているが、その口調は強くなかった。もともとルーシーはきつい言い方が出来るような子ではない。
私はなにも答えずにいた。
妹を無視していたわけではなく、ただ妹の隣にいるガイアから目が離せなかった。
彼の冷たい眼差しが揺らぐことはない。
でもその瞳の奥深くに、他の感情を探そうとしてしまう。
あなたが以前抱いてくれていた想いはどこにあるの?
消えてなんかいないわよね?
ガイア、どうか思い出して…。
きっとあるはずなの、心の奥にあの想いが。
…だって私達は愛し合っていたわ。
彼の冷たい視線と私の縋るような視線。
意図せずに見つめ合うような形になっている。
全てを諦めていた時とは違う。
今はまだ一方通行だとしても辛さだけじゃなかった。わずかだが希望があるから。
彼に声を掛けようかと迷っていると、彼の腕から離れずにいるルーシーが口を開いた。
「ガイアロス様だって元婚約者がいたら、気を使って楽しめなくなりますわ。そんなことも分からないのですか?!
お姉様は昔から賢いと褒められてきたくせに…。
少しは空気を読んでください!そんな事もできないなんて恥ずかしくないんですか!」
さっきとは違って責めるような口調。
あまりの言い様に思わず姉として注意をしてしまう。
「ルーシー、そんな言い方は良くないわ。以前のあなたは優しい話し方をする子だったのに…」
そこには妹を心配する以外の思いはなかった。
だがルーシーはそう受け取らなかった。
「やめてください、私のことを心配するふりしてまで、ここに居続けたいのですか…。
いったい何をしたいの?
そんな目で私の婚約者を見ないで!
もう無駄なんですよ。お姉様は……もう魅了は使えない、封じられてしまったのだから!」
目の前にいるのは『お姉様』と慕ってくれていた可愛い妹ではなかった。
ルーシーは婚約者を取られまいとする一人の女性だった。
あのとき見てしまった『恋をしている』と感じた妹の表情を思い出す。
忘れようとしていたのに…。
「私は魅了なんて使ってないわっ」
…使っていない。
今だって昔だって、一度たりとも。
それにそんな目でガイアを見ないでっ。
お願い…ルーシー。
誰も私の言葉を信じてはくれない。
ルーシーに続き父も母もガイアも責めるような言葉を投げつけてくる。
分かっている、まだ何も変わっていないのだから…。
……もう少し、もう少しの我慢よ。
これはきっと今だけだから…。
お父様、お母様、ガイア。
そうよね…?……大切な妹ルーシー。
彼らからの罵倒を背に受けながら居間から出ていく私は気づかれないようにそっと涙を拭いていた。
『こんなことも、きっとこれが最後…』だと自分自身に言い聞かせながら。
でも心には新たな不安が芽生えていた。
**********************
お気入り登録・感想有り難うございます♪
執筆の励みにさせて頂いております( ꈍᴗꈍ)
読んで頂いている読者様への感謝を込め、今日は連続投稿してみました(*´ω`*)
睨むように見ているが、その口調は強くなかった。もともとルーシーはきつい言い方が出来るような子ではない。
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でもその瞳の奥深くに、他の感情を探そうとしてしまう。
あなたが以前抱いてくれていた想いはどこにあるの?
消えてなんかいないわよね?
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…だって私達は愛し合っていたわ。
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意図せずに見つめ合うような形になっている。
全てを諦めていた時とは違う。
今はまだ一方通行だとしても辛さだけじゃなかった。わずかだが希望があるから。
彼に声を掛けようかと迷っていると、彼の腕から離れずにいるルーシーが口を開いた。
「ガイアロス様だって元婚約者がいたら、気を使って楽しめなくなりますわ。そんなことも分からないのですか?!
お姉様は昔から賢いと褒められてきたくせに…。
少しは空気を読んでください!そんな事もできないなんて恥ずかしくないんですか!」
さっきとは違って責めるような口調。
あまりの言い様に思わず姉として注意をしてしまう。
「ルーシー、そんな言い方は良くないわ。以前のあなたは優しい話し方をする子だったのに…」
そこには妹を心配する以外の思いはなかった。
だがルーシーはそう受け取らなかった。
「やめてください、私のことを心配するふりしてまで、ここに居続けたいのですか…。
いったい何をしたいの?
そんな目で私の婚約者を見ないで!
もう無駄なんですよ。お姉様は……もう魅了は使えない、封じられてしまったのだから!」
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あのとき見てしまった『恋をしている』と感じた妹の表情を思い出す。
忘れようとしていたのに…。
「私は魅了なんて使ってないわっ」
…使っていない。
今だって昔だって、一度たりとも。
それにそんな目でガイアを見ないでっ。
お願い…ルーシー。
誰も私の言葉を信じてはくれない。
ルーシーに続き父も母もガイアも責めるような言葉を投げつけてくる。
分かっている、まだ何も変わっていないのだから…。
……もう少し、もう少しの我慢よ。
これはきっと今だけだから…。
お父様、お母様、ガイア。
そうよね…?……大切な妹ルーシー。
彼らからの罵倒を背に受けながら居間から出ていく私は気づかれないようにそっと涙を拭いていた。
『こんなことも、きっとこれが最後…』だと自分自身に言い聞かせながら。
でも心には新たな不安が芽生えていた。
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