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33.告げる⑤
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『愚かな妹…』
この私の発した言葉を聞き、両親達の目の色が一瞬で変わる。
もともと憎しみがこもった視線だったけれども、今はそれだけで私を殺せそうなほど…。
これほどの憎悪を向けられても私は微笑みを崩すことはなかった。
それどころか見せつけるように更に笑みを深める。
両親は私の態度に怒りをあらわにし、ガイアロスは『なにを言っているんだっ!』と怒りのままに怒鳴りつけてくる。
妹は彼にしがみつきながらも、キッと睨みつけている。
そう…それでいいわ…。
お父様、お母様、ルーシー、…ガイアロス。
それでいいのよ…。
彼らの予想通りの反応に安堵し、そして思いを込めて言葉を紡ぐ。
「ふふふ、何を怒っているのですか?私は本当のことを言っただけ。だってそこにいるルーシーは愚かではありませんか。婚前交渉のうえに妊娠?無責任にもほどがありますわ。
勉強も社交もまだまだ学ぶことはたくさんあるのに、それをせずに婚約者との仲を深めることだけに熱心だなんて、まるで発情期の雌犬のようだわ。
はんっ、こんな子が私の妹なんて嘆かわしい!」
妹を見下し嘲笑う私は誰が見ても高慢な女そのものだ。
『ガッシャン!』
私のすぐ近くで花瓶が砕け散る。
投げつけてきたのは真っ青になって涙を溢している妹だった。
「わっ、わた…しは雌犬なんかじゃ、あ…ません…。ひ…どい、うっうう……」
泣き崩れるルーシーを私の目の前でガイアロスが守るように抱きしめ、『ルーシー、大丈夫だから』と優しく慰める。
私は彼らから目を逸らさなかった。
見なければいけない、もう決めたのだから後戻りはできない。
その大きな手を私は知っている。
彼の手はいつだって温かくてどんな時でも私を包み込んでくれ『ずっと君を守るから』と囁いてくれた。
あの温もりは忘れられない。
でも振り返りはしない。
その手でこれからずっと抱きしめてあげて。
ルーシーは優しいけれど泣き虫なのよ。
ほらこんなふうにすぐに泣いてしまうの…。
本当に…困った子なの。
私はもう慰められないから…。
あなたがそばにいてあげて……。
私ではなく、あの子とお腹の子を守ってあげて。
このまま幸せになって…。
彼には苦しんで欲しくない。
術が解けてもこの現実は決して消えないのだから。
「あらあら、まともに話すことも出来ないなんて相変わらずね。みっともないわ」
泣きじゃくる妹に容赦ない言葉をぶつける。
酷いこと言ってごめんなさい。
利用してごめんね、ルーシー。
許してなんて言わないから。
許さなくていいから、軽蔑していいから。
だから一生憎み続けて…。
お腹の子を守るのは母であるあなたの役目。
もっと強くなって、もう泣くのはやめなさい。
本当に困った子、でも大切な私のたった一人の妹。
妹を傷つけている私にガイアロスが怒りをぶつけてくる。
「いい加減にしろっ!
何様のつもりだ、犯罪者のくせに。王家が寛大な心で許したからといって、犯した罪が消えたわけではないんだぞ。
反省もせずに、今度は血の繋がった実の妹を傷つけるのかっ!どこまで性根が腐っているんだ。お前のような女が義姉になると思うと反吐が出る」
そう…それでいいわ。
どこまでも憎んで、怒りをぶつけ……。
彼の真っ直ぐなところは変わっていない。
婚約者を全力で守ろうとする、そんな人なのだ私の愛した人は…。
…これでいい、間違っていない。
「私だって暴言を吐く人の義姉になんてなりたくはないわ。でも私だってゲート伯爵家の者だから仕方がないのよ。はぁ…、なんでこんな家に生まれてしまったのかしら…」
そう言ってため息をつきながら『この家にはうんざりしているんですよ』と両親のほうを向いて苦笑いしてみせる。
父も母も優しく善良そのもの。そして大切な娘を傷つける者は許さない。
そして『大切な娘』は今は妹だけ。
私はもう違う、…『憎むべき娘』だ。
父がこれから言う事は分かっている。
ずっと父に守られてきた、大切な娘だった私だからこそ分かるのだ。
優しい父が迷わないように、後悔したりしないように、その背中をそっと優しく押してあげよう。
『…本当にみすぼらしい家族』と私は聞こえるように呟きながら完璧に嘲笑ってみせた。
この私の発した言葉を聞き、両親達の目の色が一瞬で変わる。
もともと憎しみがこもった視線だったけれども、今はそれだけで私を殺せそうなほど…。
これほどの憎悪を向けられても私は微笑みを崩すことはなかった。
それどころか見せつけるように更に笑みを深める。
両親は私の態度に怒りをあらわにし、ガイアロスは『なにを言っているんだっ!』と怒りのままに怒鳴りつけてくる。
妹は彼にしがみつきながらも、キッと睨みつけている。
そう…それでいいわ…。
お父様、お母様、ルーシー、…ガイアロス。
それでいいのよ…。
彼らの予想通りの反応に安堵し、そして思いを込めて言葉を紡ぐ。
「ふふふ、何を怒っているのですか?私は本当のことを言っただけ。だってそこにいるルーシーは愚かではありませんか。婚前交渉のうえに妊娠?無責任にもほどがありますわ。
勉強も社交もまだまだ学ぶことはたくさんあるのに、それをせずに婚約者との仲を深めることだけに熱心だなんて、まるで発情期の雌犬のようだわ。
はんっ、こんな子が私の妹なんて嘆かわしい!」
妹を見下し嘲笑う私は誰が見ても高慢な女そのものだ。
『ガッシャン!』
私のすぐ近くで花瓶が砕け散る。
投げつけてきたのは真っ青になって涙を溢している妹だった。
「わっ、わた…しは雌犬なんかじゃ、あ…ません…。ひ…どい、うっうう……」
泣き崩れるルーシーを私の目の前でガイアロスが守るように抱きしめ、『ルーシー、大丈夫だから』と優しく慰める。
私は彼らから目を逸らさなかった。
見なければいけない、もう決めたのだから後戻りはできない。
その大きな手を私は知っている。
彼の手はいつだって温かくてどんな時でも私を包み込んでくれ『ずっと君を守るから』と囁いてくれた。
あの温もりは忘れられない。
でも振り返りはしない。
その手でこれからずっと抱きしめてあげて。
ルーシーは優しいけれど泣き虫なのよ。
ほらこんなふうにすぐに泣いてしまうの…。
本当に…困った子なの。
私はもう慰められないから…。
あなたがそばにいてあげて……。
私ではなく、あの子とお腹の子を守ってあげて。
このまま幸せになって…。
彼には苦しんで欲しくない。
術が解けてもこの現実は決して消えないのだから。
「あらあら、まともに話すことも出来ないなんて相変わらずね。みっともないわ」
泣きじゃくる妹に容赦ない言葉をぶつける。
酷いこと言ってごめんなさい。
利用してごめんね、ルーシー。
許してなんて言わないから。
許さなくていいから、軽蔑していいから。
だから一生憎み続けて…。
お腹の子を守るのは母であるあなたの役目。
もっと強くなって、もう泣くのはやめなさい。
本当に困った子、でも大切な私のたった一人の妹。
妹を傷つけている私にガイアロスが怒りをぶつけてくる。
「いい加減にしろっ!
何様のつもりだ、犯罪者のくせに。王家が寛大な心で許したからといって、犯した罪が消えたわけではないんだぞ。
反省もせずに、今度は血の繋がった実の妹を傷つけるのかっ!どこまで性根が腐っているんだ。お前のような女が義姉になると思うと反吐が出る」
そう…それでいいわ。
どこまでも憎んで、怒りをぶつけ……。
彼の真っ直ぐなところは変わっていない。
婚約者を全力で守ろうとする、そんな人なのだ私の愛した人は…。
…これでいい、間違っていない。
「私だって暴言を吐く人の義姉になんてなりたくはないわ。でも私だってゲート伯爵家の者だから仕方がないのよ。はぁ…、なんでこんな家に生まれてしまったのかしら…」
そう言ってため息をつきながら『この家にはうんざりしているんですよ』と両親のほうを向いて苦笑いしてみせる。
父も母も優しく善良そのもの。そして大切な娘を傷つける者は許さない。
そして『大切な娘』は今は妹だけ。
私はもう違う、…『憎むべき娘』だ。
父がこれから言う事は分かっている。
ずっと父に守られてきた、大切な娘だった私だからこそ分かるのだ。
優しい父が迷わないように、後悔したりしないように、その背中をそっと優しく押してあげよう。
『…本当にみすぼらしい家族』と私は聞こえるように呟きながら完璧に嘲笑ってみせた。
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