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36.守りたいもの③
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『正しい選択をしろ』とルカ様の目が言っている。
彼は怒りに支配されてはいない。
冷静な…いいえ、冷徹で優秀な文官そのもの。
初めて彼から強い圧を感じた。きっとこれが本当の彼なのだろう。
私は彼の一面を知っているに過ぎない。
でも彼は知る必要があることは全て調べているのだろう。どんな詳細なことだって見逃したりはしていないはず。
「施政者の立場なら全体の利益を優先させるべきです。より多くの人のことを考えて行動するのが正しいし、そうでなくてはならないのでしょう。
でも多くの人達は施政者ではありません。全体の利益よりもまずは身近にいる自分にとって大切な人達の利益を考えるのが普通ではないでしょうか?
全体から見たら小さな事かもしれません。でも大切なことなんです、譲れないことなんです!」
ルカ様は黙って聞いてくれている。
頷いたりはしない、でも私の言葉を遮ることはなかったから話しを続ける。
「私はまず最初に大切な人達のことを考えます。全体のことはまず彼らの幸せがあってのことです。
…ルカ様は私の家族や婚約者についても調べていますよね?」
私の問いに彼は『君が思っている以上に詳細に』と言葉短に答える。
「真実を妹に伝えてから解術したら、その後はどうなると思いますか?両親も妹もガイアロスも今回のことを乗り越えられてまた心から笑えるようになりますか?妹に宿った命も含めて幸せになれると思いますか…。
私は思えません…、どう考えても幸せになれない。
真実が人を幸せにするわけではないと思うのです、時には真実が人を押し潰してしまう。
ルカ様はどう思いますか…」
真実を乗り越えてこそ幸せになれるなんて、それこそ綺麗事だ。誰もが強い訳ではない、いろいろな人がいるのだ。だからこそ現実に耐えられなくて命を自ら断ってしまう人も存在する。
「確かにルーシー・ゲートとガイアロス・ブラックは今回のことを乗り越えるよりも苦しみ続ける可能性のほうが高いだろう。特に君の妹は潰れてしまうかもしれない、その可能性は否定しない」
彼は偽りなく答えてくれた。文官として当たり障りのない答えではなく、冷静に分析した結果のままを伝えてくれた。
ありがとうございます…。
誤魔化さずにいてくれて。
彼の誠実さに掛けてみたいと思った。
文官の立場だから情に流されて判断することはないだろうが、彼は人として冷酷ではない。
「私は…偽りから生まれる命ありきの幸せを考えます。これが最善かどうかなんて一生分かりません。だってやり直しなんて出来ませんから…。ですが今の私はこれが最善だと信じて大切な人達を守る道を選びます」
大勢の幸福よりも、自分の大切な人達を守ろうとする事は正しくなくても間違ってはいない。
矛盾しているのも分かっている。でも人には感情がある、正しいことよりも優先したいことはある。
私の言い分など彼は簡単に論破できるだろう。
でも彼はそれをしなかった。
「……シシリア、それでいいのか?君は正しい選択を選べる賢い人のはずだ」
買いかぶり過ぎだ。私は…いつだって間違えてばかりいた。
「愚かですよ、だから解術をしないと決められたんです」
「…本気なのか。きっと後から後悔するだろう、だが今ならまだ間に合う」
私は『もう決めたことです』と静かに首を横に振る。
「君の決断は間違っていると断言する。些細なことも大きな災厄に繋がることだってあるんだ」
強い口調でそう言い切るルカ様。
その表情は『愚か者が…』と言っていた。
彼は怒りに支配されてはいない。
冷静な…いいえ、冷徹で優秀な文官そのもの。
初めて彼から強い圧を感じた。きっとこれが本当の彼なのだろう。
私は彼の一面を知っているに過ぎない。
でも彼は知る必要があることは全て調べているのだろう。どんな詳細なことだって見逃したりはしていないはず。
「施政者の立場なら全体の利益を優先させるべきです。より多くの人のことを考えて行動するのが正しいし、そうでなくてはならないのでしょう。
でも多くの人達は施政者ではありません。全体の利益よりもまずは身近にいる自分にとって大切な人達の利益を考えるのが普通ではないでしょうか?
全体から見たら小さな事かもしれません。でも大切なことなんです、譲れないことなんです!」
ルカ様は黙って聞いてくれている。
頷いたりはしない、でも私の言葉を遮ることはなかったから話しを続ける。
「私はまず最初に大切な人達のことを考えます。全体のことはまず彼らの幸せがあってのことです。
…ルカ様は私の家族や婚約者についても調べていますよね?」
私の問いに彼は『君が思っている以上に詳細に』と言葉短に答える。
「真実を妹に伝えてから解術したら、その後はどうなると思いますか?両親も妹もガイアロスも今回のことを乗り越えられてまた心から笑えるようになりますか?妹に宿った命も含めて幸せになれると思いますか…。
私は思えません…、どう考えても幸せになれない。
真実が人を幸せにするわけではないと思うのです、時には真実が人を押し潰してしまう。
ルカ様はどう思いますか…」
真実を乗り越えてこそ幸せになれるなんて、それこそ綺麗事だ。誰もが強い訳ではない、いろいろな人がいるのだ。だからこそ現実に耐えられなくて命を自ら断ってしまう人も存在する。
「確かにルーシー・ゲートとガイアロス・ブラックは今回のことを乗り越えるよりも苦しみ続ける可能性のほうが高いだろう。特に君の妹は潰れてしまうかもしれない、その可能性は否定しない」
彼は偽りなく答えてくれた。文官として当たり障りのない答えではなく、冷静に分析した結果のままを伝えてくれた。
ありがとうございます…。
誤魔化さずにいてくれて。
彼の誠実さに掛けてみたいと思った。
文官の立場だから情に流されて判断することはないだろうが、彼は人として冷酷ではない。
「私は…偽りから生まれる命ありきの幸せを考えます。これが最善かどうかなんて一生分かりません。だってやり直しなんて出来ませんから…。ですが今の私はこれが最善だと信じて大切な人達を守る道を選びます」
大勢の幸福よりも、自分の大切な人達を守ろうとする事は正しくなくても間違ってはいない。
矛盾しているのも分かっている。でも人には感情がある、正しいことよりも優先したいことはある。
私の言い分など彼は簡単に論破できるだろう。
でも彼はそれをしなかった。
「……シシリア、それでいいのか?君は正しい選択を選べる賢い人のはずだ」
買いかぶり過ぎだ。私は…いつだって間違えてばかりいた。
「愚かですよ、だから解術をしないと決められたんです」
「…本気なのか。きっと後から後悔するだろう、だが今ならまだ間に合う」
私は『もう決めたことです』と静かに首を横に振る。
「君の決断は間違っていると断言する。些細なことも大きな災厄に繋がることだってあるんだ」
強い口調でそう言い切るルカ様。
その表情は『愚か者が…』と言っていた。
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