どうかこの偽りがいつまでも続きますように…

矢野りと

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37.交換条件①

「申し訳ありません。…ですが譲れません」

ルカ様が発する圧力に怯みそうになる、でも必死で堪える。
なにかを見極めようとしている彼の鋭い眼差しからも目を逸らさなかった。

沈黙がしばらく続いた。

ふと彼の纏う雰囲気が変わり、私が知っているルカ様に戻っていた。

「今回、君に力を貸したのは慈善事業ではない。
最初に伝えた通り、危険な芽を早期に刈り取るというメリットがマイナス側にもあったから協力していたんだ。お互いに利益が一致していたから。だが君の心変わりによって今は違う。
こちらとしては君の意思を無視して強引に計画を進めることも可能だ」

そうだろう、マイナスにはその術と力がある。術の影響を受けている者達に及ぶかもしれない危険を考慮する理由は彼ら側にはない。

「だがそれとは別の案の用意もある、お互いに利益が一致するものだ。文官としてはどんな事態にも柔軟に対応出来るようにしておくのは基本だからね」

彼は新たな提案をしてくれた。強引にではなく、あくまで平和に話を進めるのがマイナス流なのだろうか。
いいえ違う、そんなに甘くはないだろう。マイナスに不利になることを提案するはずがない。

『用意周到』なのだ。
きっといくつものパターンを事前に考えていた。そして今の私もその一つなのだろう。

彼の掌の上で踊らされている気がする。

でもこの状況では私に選択肢はない、だから言うべき言葉は決まっている。

「聞かせてください、別の案とはどのようなものですか?」

彼は私がそういうと思っていたのだろう、頷くと同時に口を開く。

「もう一つの案は今回のことを研究材料にするということだ。君に掛けられた魔術は出鱈目だといっただろう、つまりマイナス側としてもよく分かっていない部分がある。だから今後のために解術せずにと考えている」

彼は『お互いに利益が一致する案だ』と言っていた。でもこれでは私の望みだけが通った形になっている、ではない。
これからなにかを求められるはずだ。

「……なにをすればいいんですか?」

私がそう言うと『シシリアは話が早くて助かるよ』と言いながらルカ様は本題に入った。


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作品の結末をどう捉えるかは読者様によって違うと思っております。
これから迎える結末にどんなタグをつけるのかは読者様一人ひとりにお任せしますという意味を込め、あえてタグを付けておりません。

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