どうかこの偽りがいつまでも続きますように…

矢野りと

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59.相応しい平穏を…①〜ルカディオ視点〜

「ゲート伯爵家からの報告によると伯爵夫妻への術は完璧のままで安定しているようです。
娘夫婦と孫に囲まれ穏やかな生活を送っています」

黙ったまま頷き、視線でジェイクに続きを促す。

「それから娘壻のガイアロスも同様に術も感情も安定しております。
政略結婚ながらその意味を理解して努力している為、義両親や妻との関係も良好な状態を保っているそうです」
「そうか、それはなによりだ。
子供のほうも問題はないか?」

シシリアが解術を望まなかった原因は子供の存在があったからだ。
だから術の観察対象ではないが、子供のことも確認事項に入れてある。

「はい、子供はみなから愛情を注がれ健やかに育っているそうです」


5年前から信頼出来る者をゲート伯爵家に数人潜り込ませ、術の綻びを監視させている。ジェイクの報告はその者からの情報なので間違いはないだろう。


あの出鱈目な術の被害者であるゲート伯爵夫妻とガイアロス。
それは彼らに責任はない。

だが術のあとの行動は彼ら自身が決断したこと。
ゲート伯爵夫妻がガイアロスとルーシーの婚約を望んだのも、ガイアロスが元婚約者の妹との婚約をしたのも、術の影響によるものではない。

伯爵夫妻は家と家との関係を重視した。
ガイアロスはそれに加え、貴族としての自身の将来も考えたのだろう。

つまりなのだ。

確かにあの一件がなければ、そんな選択はしなかっただろう。
彼らは善良だから。

だからといって、その後の行動によって生じた現実を消すことも不可能だ。
それが術という偽りのあとのことでも、そうでなくても、その後の現実子供に罪はない。


理不尽かもしれない。
しかし人生とはそもそもそういうものだ。
平等なんて有り得ない。身分も幸運も降り掛かってくる災難も…。


『あれは自分のせいではないから』と過去の一部分だけ切り取って都合良くやり直せもしない。

それは彼らだけでなく、誰にとってもそうだ。


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