2 / 85
2.運命の出会い①
しおりを挟む
私が生まれたこの国は何世代も前から獣人と人間が共存する平和な国だった。
お互いの文化や習性を理解し尊重し、次第に種族を超えて愛を育むようになった。その結果、混血も進み外見だけではどちらか分からないことも多々あった。
だがどちらかの種族に優劣をつける事も無く、自然の流れに任せて人々は生きてきた。
それで特に問題も無かった。
王もその時代で最も優れている者が選ばれるので、それに種族は関係なかった。
そして今の王は竜人で長命な種族なので齢300歳を超えている。珍しく純粋な獣人で武力・知力だけでなく人格も優れ『稀に見る賢王』だと評価されている人物だ。
そしてその人が私の運命の人『番』だった。
10年前に街で両親や兄と一緒に買い物していたら偶然巡り合った。
竜王は一目見て私を『番』だと分かり、両親から奪うようにして自分の住む王宮に連れて帰った。
私はその時まだ6歳と幼かったが、外見は人間そのものだが獣人の血が少し入っているので彼が私の『番』だとなんとなく分かったので抵抗することなく抱き締められていた。
両親や兄と離れ離れになる寂しかったが、それよりも『番』と一緒の安心感のほうが勝っていて連れて行かれる事に疑問を待たなかった。
竜王は私を連れて行くときに優しく抱き締めながら、
『お前は私の大切な番、唯一だ。
これからはずっと一緒だ、絶対に離さない。
なにがあろうとこの愛が変わることなど絶対にないからな』
と甘く囁き髪を優しく撫でてくれていた。
まだ幼かった私は彼の言う言葉の意味が良く分かっていなかったけど『好きだ』と言われて嬉しかった。
頷くだけでちゃんと言葉を返すことは出来なかったけれども、心の中で『わたしもすき』と思っていたし、なんとなくそれだけで大丈夫だとそう思っていた。
彼の腕の中で安心していた、何の不安もなかった…この時は。
幼くても番の傍はなによりも安心できる場所だったのだ。
何とも言えない心地よい安らぎを与えられ、体力もなく幼い私は気づかぬうちに眠りに落ちてしまった。
そして目覚めた時には私の番は傍にはもういなかった。
天蓋付きの豪華なベットから飛び出して広く可愛い部屋を探し回るけど見つからない。
知らない大人達に囲まれ私は泣きながら訪ねた。
「ここはどこ?わたしの番はどこにいるの?
どうして一緒にいないの?」
「ここは番様がこれから暮らしていく離宮ですよ。竜王様はお仕事でここにはいませんがすぐに会えますから大丈夫です。泣かないでくださいませ、可愛い番様」
慰められながら私の番は竜王という立場で忙しいのだと教えられた。
周りにいる大人の人達は素敵な玩具や美味しいお菓子を次々と差し出してきた。
見たこともない玩具や特別な日にしか食べたことのないお菓子はとても嬉しかった。
でもそれは最初だけ…。
番のいない淋しさをそれらが埋められるはずはなかった。それに家族もここにはいない。
泣き疲れては眠る日々。
何日も何日も待ったけれども番は私の前に姿を現さなかった。
お互いの文化や習性を理解し尊重し、次第に種族を超えて愛を育むようになった。その結果、混血も進み外見だけではどちらか分からないことも多々あった。
だがどちらかの種族に優劣をつける事も無く、自然の流れに任せて人々は生きてきた。
それで特に問題も無かった。
王もその時代で最も優れている者が選ばれるので、それに種族は関係なかった。
そして今の王は竜人で長命な種族なので齢300歳を超えている。珍しく純粋な獣人で武力・知力だけでなく人格も優れ『稀に見る賢王』だと評価されている人物だ。
そしてその人が私の運命の人『番』だった。
10年前に街で両親や兄と一緒に買い物していたら偶然巡り合った。
竜王は一目見て私を『番』だと分かり、両親から奪うようにして自分の住む王宮に連れて帰った。
私はその時まだ6歳と幼かったが、外見は人間そのものだが獣人の血が少し入っているので彼が私の『番』だとなんとなく分かったので抵抗することなく抱き締められていた。
両親や兄と離れ離れになる寂しかったが、それよりも『番』と一緒の安心感のほうが勝っていて連れて行かれる事に疑問を待たなかった。
竜王は私を連れて行くときに優しく抱き締めながら、
『お前は私の大切な番、唯一だ。
これからはずっと一緒だ、絶対に離さない。
なにがあろうとこの愛が変わることなど絶対にないからな』
と甘く囁き髪を優しく撫でてくれていた。
まだ幼かった私は彼の言う言葉の意味が良く分かっていなかったけど『好きだ』と言われて嬉しかった。
頷くだけでちゃんと言葉を返すことは出来なかったけれども、心の中で『わたしもすき』と思っていたし、なんとなくそれだけで大丈夫だとそう思っていた。
彼の腕の中で安心していた、何の不安もなかった…この時は。
幼くても番の傍はなによりも安心できる場所だったのだ。
何とも言えない心地よい安らぎを与えられ、体力もなく幼い私は気づかぬうちに眠りに落ちてしまった。
そして目覚めた時には私の番は傍にはもういなかった。
天蓋付きの豪華なベットから飛び出して広く可愛い部屋を探し回るけど見つからない。
知らない大人達に囲まれ私は泣きながら訪ねた。
「ここはどこ?わたしの番はどこにいるの?
どうして一緒にいないの?」
「ここは番様がこれから暮らしていく離宮ですよ。竜王様はお仕事でここにはいませんがすぐに会えますから大丈夫です。泣かないでくださいませ、可愛い番様」
慰められながら私の番は竜王という立場で忙しいのだと教えられた。
周りにいる大人の人達は素敵な玩具や美味しいお菓子を次々と差し出してきた。
見たこともない玩具や特別な日にしか食べたことのないお菓子はとても嬉しかった。
でもそれは最初だけ…。
番のいない淋しさをそれらが埋められるはずはなかった。それに家族もここにはいない。
泣き疲れては眠る日々。
何日も何日も待ったけれども番は私の前に姿を現さなかった。
303
あなたにおすすめの小説
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。
さようなら、私の愛したあなた。
希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。
ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。
「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」
ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。
ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。
「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」
凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。
なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。
「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」
こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる