80 / 85
79.想い②
しおりを挟む
私がエドの綺麗な右目をまっすぐに見つめると、彼も目を逸らせずにいてくれている。
「さっきも言ったように私はエドの嘘なんて最初から信じなかった。エドにはなんか訳があるんだろうなって思ったから一旦はその場を去ることにしたの。
でも私の耳はとてもいいからあの後の離宮でのエドの慟哭とワンの遠吠えはしっかり聞こえていた。そしてやっぱり何か深い理由があるんだと確信した。
だから私はなにがエドを追い詰めたのかまずは知ることにしたの。何も知らないのにエドに会いに行っても駄目だと思ったから。
何を調べていいのか分からなかったから、とりあえずありとあらゆる情報を集めることにしたわ。
本当に大変だったんだよ。
色々なところに出入りして人脈を広げてさり気なくみんなから話しを聞きだしたり、こっそりと医療記録とか王宮での出来事を綴ったマル秘書類とかを遡れるところまで調べていったんだから。
ふふふ、見つかりそうになって何度もドキドキしちゃった。
たくさんの断片的な情報はそれ一つでは何も意味をなさなかった。でもね、それを繋ぎ合わせていくと朧気だけど何かが見えて来たわ。
でも最後のピースが足りなくて行き詰っていたら父の言葉を思い出したの。
『困ったことがあったら一人で我慢せずに家族を頼りなさい』
家族に相談しようと決めたら、薬師の父がいつも腰に差している似合わない剣と5年前に王宮からなくなった竜殺剣の情報が結びついたの…。
きっと家族が最後の重要なピースになってくれる、これですべてが揃うと思ったわ」
エドは黙ったまま私の話に耳を傾けてくれている。相変わらず辛そうな表情のままだけど、聞いてくれているならいい。あと少しで状況は変わるはず、だからもう少しだけ私に付き合って。
「家族に私は全てを話したわ。エドへの想いや拒絶されたことや王宮で調べて分かったこと、そして私がそれを知りどのような仮説を立てているか。
家族はね…、全部話してくれたわ。15年前のことから今までのことすべてを教えてくれた。
私の身に起こった悲劇を、周りの対応を……」
そう…家族は泣きながら話してくれた、自分達が悪かったのだと謝りながら。少しは自分達に都合よく語ってもいいのに『これは私達の罪だ』と言い切り隠すことなく話してくれた。
全てを語り終わった家族と私は抱き合いながら号泣していた。
私は10年間の記憶はないので、家族の苦しみは想像するしかないけど、この苦しみを私に一欠けらも見せることなく、温かく見守ってくれた両親、トム兄、ミンには感謝しかない。
‥‥かけがえのない家族だ。
もう謝らないで、みんなは悪くなんてないから。
どんなに愛してくれているか、ちゃんと分かっているから。
誰も悪くない…、きっとすれ違ってしまっただけ。お互いを想うあまり考え過ぎてしまっただけ。
あんな結果になったけど、でも私はいま幸せだよ。それは一番近くにいてくれたみんながよく知っているでしょう。
ねえ…だから笑おう。
幸せなんだから笑っていよう…。
父は竜殺剣を私に託し『どう使うかはアンに任せる。自分が信じる道を進みなさい』と背中を押してくれた。
私は首の傷跡を触るが失った記憶を思いだすことはない。この傷を触って思うことは『犬は無罪だったんだな…、ごめん』ということだけだ。
「さっきも言ったように私はエドの嘘なんて最初から信じなかった。エドにはなんか訳があるんだろうなって思ったから一旦はその場を去ることにしたの。
でも私の耳はとてもいいからあの後の離宮でのエドの慟哭とワンの遠吠えはしっかり聞こえていた。そしてやっぱり何か深い理由があるんだと確信した。
だから私はなにがエドを追い詰めたのかまずは知ることにしたの。何も知らないのにエドに会いに行っても駄目だと思ったから。
何を調べていいのか分からなかったから、とりあえずありとあらゆる情報を集めることにしたわ。
本当に大変だったんだよ。
色々なところに出入りして人脈を広げてさり気なくみんなから話しを聞きだしたり、こっそりと医療記録とか王宮での出来事を綴ったマル秘書類とかを遡れるところまで調べていったんだから。
ふふふ、見つかりそうになって何度もドキドキしちゃった。
たくさんの断片的な情報はそれ一つでは何も意味をなさなかった。でもね、それを繋ぎ合わせていくと朧気だけど何かが見えて来たわ。
でも最後のピースが足りなくて行き詰っていたら父の言葉を思い出したの。
『困ったことがあったら一人で我慢せずに家族を頼りなさい』
家族に相談しようと決めたら、薬師の父がいつも腰に差している似合わない剣と5年前に王宮からなくなった竜殺剣の情報が結びついたの…。
きっと家族が最後の重要なピースになってくれる、これですべてが揃うと思ったわ」
エドは黙ったまま私の話に耳を傾けてくれている。相変わらず辛そうな表情のままだけど、聞いてくれているならいい。あと少しで状況は変わるはず、だからもう少しだけ私に付き合って。
「家族に私は全てを話したわ。エドへの想いや拒絶されたことや王宮で調べて分かったこと、そして私がそれを知りどのような仮説を立てているか。
家族はね…、全部話してくれたわ。15年前のことから今までのことすべてを教えてくれた。
私の身に起こった悲劇を、周りの対応を……」
そう…家族は泣きながら話してくれた、自分達が悪かったのだと謝りながら。少しは自分達に都合よく語ってもいいのに『これは私達の罪だ』と言い切り隠すことなく話してくれた。
全てを語り終わった家族と私は抱き合いながら号泣していた。
私は10年間の記憶はないので、家族の苦しみは想像するしかないけど、この苦しみを私に一欠けらも見せることなく、温かく見守ってくれた両親、トム兄、ミンには感謝しかない。
‥‥かけがえのない家族だ。
もう謝らないで、みんなは悪くなんてないから。
どんなに愛してくれているか、ちゃんと分かっているから。
誰も悪くない…、きっとすれ違ってしまっただけ。お互いを想うあまり考え過ぎてしまっただけ。
あんな結果になったけど、でも私はいま幸せだよ。それは一番近くにいてくれたみんながよく知っているでしょう。
ねえ…だから笑おう。
幸せなんだから笑っていよう…。
父は竜殺剣を私に託し『どう使うかはアンに任せる。自分が信じる道を進みなさい』と背中を押してくれた。
私は首の傷跡を触るが失った記憶を思いだすことはない。この傷を触って思うことは『犬は無罪だったんだな…、ごめん』ということだけだ。
272
あなたにおすすめの小説
【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。
夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。
ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。
一方夫のランスロットは……。
作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。
ご都合主義です。
以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。
好きでした、婚約破棄を受け入れます
たぬきち25番
恋愛
シャルロッテ子爵令嬢には、幼い頃から愛し合っている婚約者がいた。優しくて自分を大切にしてくれる婚約者のハンス。彼と結婚できる幸せな未来を、心待ちにして努力していた。ところがそんな未来に暗雲が立ち込める。永遠の愛を信じて、傷つき、涙するシャルロッテの運命はいかに……?
※十章を改稿しました。エンディングが変わりました。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。
前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる