愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと

文字の大きさ
24 / 57

24.近づく距離③

彼が未婚の女性達に囲まれている姿を想像してしまい、なぜか心が落ち着かなくなる。

彼が誰といようとそれは彼の自由であって、自分には関係がないことなのにどうしたのだろうか。

 彼にはこれから相応しい出会いがあるわ。
 邪魔はしたくない。
 私ではない誰かと…いるべきだわ。


彼は侯爵家の嫡男なのだから、いつか相応しい人が彼の隣に立つのは当たり前のこと。

それはきっと遠くない未来に起こる現実。

ちゃんと理解している、それは侯爵家にとっても彼にとっても必要なことだと。

それなのに…その姿を見たくないと思ってしまう。

無関係な自分がそんなことを考えること自体が意味のないこと。

それにヒューイには幸せになって欲しいと思っているのに、なぜ彼の幸せな姿を見ることを私は拒むのだろうか。


なんだか今日の私は変だ。貴族令嬢の私らしくない。

彼の幸せを願いながらそれに反する思いも抱くなんて。


だからなのか口から出てきたのは気の利いた断りの台詞ではなく、自分の過去を考えての後ろ向きな発言だった。


「…離縁した私なんかを連れて行かなくてもヒューイと一緒に参加したい素敵な令嬢はたくさんいるわ」

なんだか拗ねているような言葉。
気遣ってくれた彼に返す言葉ではない。

伯爵令嬢としても人としても失礼な言い方だった。

 こんなことを言うつもりなんてなかったのに…。
 私ったらどうかしているわ。


我に返り言い直そうとするが、その前に彼が口を開いた。

「つまりマリアは噂がある一緒に夜会へは参加したくはないのかな…?
口数の少ない男だと言われている俺と一緒ではつまらないだろうから、断られても仕方がないな…。
残念だが俺はまた一人寂しく夜会に参加しよう」

彼は私を見つめたまま、がっかりした表情を浮かべる。

そんな風に思ってなんかいない。
彼の口から出た『俺となんか』という言葉を今すぐに否定したい。
私が断ったのは彼ではなく、私のほうの問題。
『私なんか』では釣り合わないから断わっただけ。


『本当は彼の…隣にいたい』


私の気持ちを誤解されたくなんかない。



「そんなこと思っていないわ、『俺となんか』と言わないちょうだい。そんな貶めるような言い方は貴方自身であっても許さないわ。だってヒューイは素晴らしい人よ、いつでも真っ直ぐで誰に対しても態度を変えないし、媚もしない。ちゃんと自分自身を持っている。
それに貴方との会話はとても楽しくていつまでも話していたいぐらい。今まで伝えてはいなかったけど、いつも私はそう思っていたのよ。

ヒューイにエスコートして貰えたらとても嬉しいし、貴方となら夜会にだって参加したいと思っているわ!」

思わず大きな声でそう言ってしまった。
人は慌てると偽りではなく本音が出てしまう。

ハッと我に返った時にはもう遅かった。
口から出た言葉は取り返しがつかないのだから。






**********************
(作者のひとり言)
お気に入り登録、感想有り難うございます。
執筆の励みにしております♪

本日は読者様に感謝を込めてもう一話更新予定です(*´∀`*)

あなたにおすすめの小説

氷の貴婦人

恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。 呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。 感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。 毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです

・めぐめぐ・
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。 さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。 しかしナディアは全く気にしていなかった。 何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから―― 偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。 ※頭からっぽで ※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。 ※夫婦仲は良いです ※私がイメージするサバ女子です(笑) ※第18回恋愛小説大賞で奨励賞頂きました! 応援いただいた皆さま、お読みいただいた皆さま、ありがとうございました♪

旦那様は離縁をお望みでしょうか

村上かおり
恋愛
 ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。  けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。  バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。

幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました

ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。 けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。 やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。 ――もう、この結婚には見切りをつけよう。 夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。 身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。 一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。 幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜

矢野りと
恋愛
『少しだけ私に時間をくれないだろうか……』 彼はいつだって誠実な婚約者だった。 嘘はつかず私に自分の気持ちを打ち明け、学園にいる間だけ想い人のこともその目に映したいと告げた。 『想いを告げることはしない。ただ見ていたいんだ。どうか、許して欲しい』 『……分かりました、ロイド様』 私は彼に恋をしていた。だから、嫌われたくなくて……それを許した。 結婚後、彼は約束通りその瞳に私だけを映してくれ嬉しかった。彼は誠実な夫となり、私は幸せな妻になれた。 なのに、ある日――彼の瞳に映るのはまた二人になっていた……。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・