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13.愚かな… サラ視点①
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私はマキタと再婚する事を決めた、いや正確にはお互い再婚ではなく初婚になるのだが。
『フフフ、二人の間には子供もいるのにおかしな関係になっているわね』
二年前、私は何かに囚われたマキタに傷つけられ絶望し、彼から離れて暮らすことを選んだ。お腹の中に子がいたからこそ、最愛の人との別れを決心する事が出来たんだろう。
そうでなかったら私はあの時に間違いなく死を選んでいたと思う。それほどまでも愛していたのだ、愛おしく愚かなマキタを…。
『この気持ちは誰にも理解されないだろう、私だって理解できていない』
彼との婚姻無効が成立した後は大変だった。世間からは厳しい目で見られ、辛い現実が待っていた。だが両親と弟は私を温かく受け入れ支えてくれた。こんな私を自慢の娘だと言い、生まれてきたマキタそっくりな子も大切な孫だと可愛がってくれた。
家族の存在に私は救われ、いつしかマキタの事を思い出さない日もでてきた。
『このまま平凡な幸せが続いて行くのだろうな。それもいいわね』
そんな風に思える様にもなっていた。我が子の成長を両親と共に見守る穏やかな毎日、そこには確かに幸せがあった。
ある日マキタから連絡が来たが、私の心は揺れることなどなかった。今の幸せを守ることが何よりも大切だったから。
『さようなら、マキタ』
私の拒絶に絶望する彼を残してその場から去ることが出来た。私の後ろ姿を見送る彼には私の涙は見えていない、震える手にも気づいていない。
これがなんの涙かなんて考えなかった。
兎に角、今の幸せが保たれる事に安堵し、胸の痛みは忘れることにした。
『これで良かったのよ。あの子にとっても、私にとっても…』
彼は子供の養育費を送ってくれたが、きっぱりと断った。彼との繋がりを持ってしまったらこの平穏は崩れてしまう気がしたから…。またチクリと胸が痛んだが気づかないふりをした。
『この幸せを守ることがなによりも大切よ』
彼が熱心に仕事に取組み以前のような信用を取り戻しつつあると噂で知った頃、公爵夫妻から連絡が来るようになっていた。私がマキタに言い寄らない様に釘を刺してきたのだ。
『あの人達はなにも変わってないのね』
愚かな公爵夫妻を憐れに思ったが、ただそれだけだった。私は彼と連絡を取っていないのだから、堂々としていれば良いと思っていた。だが公爵夫妻はそれでは安心できなかったのだろう、連絡もなしに子爵家に乗り込み、その時に子供を見られてしまった。
公爵家では子供の存在を把握していたが私の産んだ子に関心など持っていなかった、しかしマキタそっくりな子供を見るなり態度が豹変した。
法的になんの権利もないのに公爵家はあの手この手で子供を奪い取ろうとしてきた。…きっとそのことを彼は知らないのだろうが。
最初は毅然とした態度で突っぱねていたが、次第に子供が奪われる恐怖に怯えるようになった。
『あの人達ならどんな手を使っても子供を奪う。それだけは絶対にさせない。この子は私とマキタの大切な子なのだから』
『フフフ、二人の間には子供もいるのにおかしな関係になっているわね』
二年前、私は何かに囚われたマキタに傷つけられ絶望し、彼から離れて暮らすことを選んだ。お腹の中に子がいたからこそ、最愛の人との別れを決心する事が出来たんだろう。
そうでなかったら私はあの時に間違いなく死を選んでいたと思う。それほどまでも愛していたのだ、愛おしく愚かなマキタを…。
『この気持ちは誰にも理解されないだろう、私だって理解できていない』
彼との婚姻無効が成立した後は大変だった。世間からは厳しい目で見られ、辛い現実が待っていた。だが両親と弟は私を温かく受け入れ支えてくれた。こんな私を自慢の娘だと言い、生まれてきたマキタそっくりな子も大切な孫だと可愛がってくれた。
家族の存在に私は救われ、いつしかマキタの事を思い出さない日もでてきた。
『このまま平凡な幸せが続いて行くのだろうな。それもいいわね』
そんな風に思える様にもなっていた。我が子の成長を両親と共に見守る穏やかな毎日、そこには確かに幸せがあった。
ある日マキタから連絡が来たが、私の心は揺れることなどなかった。今の幸せを守ることが何よりも大切だったから。
『さようなら、マキタ』
私の拒絶に絶望する彼を残してその場から去ることが出来た。私の後ろ姿を見送る彼には私の涙は見えていない、震える手にも気づいていない。
これがなんの涙かなんて考えなかった。
兎に角、今の幸せが保たれる事に安堵し、胸の痛みは忘れることにした。
『これで良かったのよ。あの子にとっても、私にとっても…』
彼は子供の養育費を送ってくれたが、きっぱりと断った。彼との繋がりを持ってしまったらこの平穏は崩れてしまう気がしたから…。またチクリと胸が痛んだが気づかないふりをした。
『この幸せを守ることがなによりも大切よ』
彼が熱心に仕事に取組み以前のような信用を取り戻しつつあると噂で知った頃、公爵夫妻から連絡が来るようになっていた。私がマキタに言い寄らない様に釘を刺してきたのだ。
『あの人達はなにも変わってないのね』
愚かな公爵夫妻を憐れに思ったが、ただそれだけだった。私は彼と連絡を取っていないのだから、堂々としていれば良いと思っていた。だが公爵夫妻はそれでは安心できなかったのだろう、連絡もなしに子爵家に乗り込み、その時に子供を見られてしまった。
公爵家では子供の存在を把握していたが私の産んだ子に関心など持っていなかった、しかしマキタそっくりな子供を見るなり態度が豹変した。
法的になんの権利もないのに公爵家はあの手この手で子供を奪い取ろうとしてきた。…きっとそのことを彼は知らないのだろうが。
最初は毅然とした態度で突っぱねていたが、次第に子供が奪われる恐怖に怯えるようになった。
『あの人達ならどんな手を使っても子供を奪う。それだけは絶対にさせない。この子は私とマキタの大切な子なのだから』
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