愚か者は幸せを捨てた

矢野りと

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12.愚かな… マキタ視点

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俺はサラと晴れて婚姻を結ぶことが出来た。俺が最初の結婚を無効にしたことは知れ渡っているので、二度目の結婚式は俺とサラのふたりだけで王都のはずれにある小さな教会でひっそりと挙げた。
二人だけの静かな式だったが、俺にとっては最高の式だった。夢にまで見たこの幸せを噛みしめ二度とサラを離さないと誓った。

『今度こそ永遠の愛にしてみせる』


魅了に囚われサラを絶望に追いやった俺をサラが前のように愛していないのは分かっている。誰だってそんな奴を愛し続ける事なんてできやしない。
分かっている、分かっているんだ…。
でも決して手放せない存在がサラだった。
俺の存在は愛する彼女を傷つけるのに、どうしても諦める事が出来ないんだ。
自分がどんなに愚かな事をしているのか分かっていても。

『許さなくていいから、憎んでいいから、俺の側で笑っていてくれ』

サラの心がこれから俺の元に戻って来るのか分からない。強引に事を運んだのは俺自身だ、戻ってこない覚悟もしている。


聡いサラは俺のやった事をどこまで知っているのだろうか。もしかしたら全部分かっているのかもしれない。そのうえでサラはこんな俺を、そしてこの状況を全てを受け入れているのだろう。それが諦めから来てるとしても。
…それでもいい。

『サラは以前と同じ様に俺に微笑んでくれている。
そうだ俺はこの笑顔を見たかったんだ。
これで元に戻ることが出来た』

これからはこの幸せを失わない様に同じ過ちを決して繰り返さない。
サラの心を取り戻すため誠心誠意、愛を伝える続けるだけだ。
俺の愛がいつかサラに届くことを願って。

『もしかしたらサラの愛を得ることなく一生を惨めに終えるかもしれないな』

でもこれは俺が求めた結果なんだ。今度は俺がすべてを受け入れる番だろう。
たとえ苦しみと共にある幸せでも。

『俺なら出来る。必ず受け入れる』

実の両親を非情な手段で葬り、真実を闇に葬り去った俺なら…。
後悔なんてしていない、失った幸せが何よりも大切なものだったのだから、それ以上に大切なものなんて俺には存在しない。

『サラ愛している。愚かな俺と一緒に生きてくれ』


代償は大きかったが、愚かな俺は幸せを取り戻すことが出来たはず…だ。



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