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11.シンデレラは困惑する…①
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あの舞踏会の翌日の新聞には【スナイル王子、舞踏会で運命的な出逢いか?!】という記事が載せられていた。
国民の間では王子の結婚という喜ばしい話題で持ちきりだった。
「ああ悔しいです!私だってほんの少し遅く生まれていたら、スナイル王子に見初められていたのに…」
相変わらず飛び抜けて前向な発言しているルイーズ。羨ましいなと思うけれども、真似はできないというかしないでおこう。
「でもこの運命のお相手って誰なんでしょうね~?もしかしてお嬢様かもしれませんね、そしたらまさに現代版シンデレラですよ。
『リリミア嬢、君の瞳が忘れられません。
どうか私の妻になってください』
なんて言われたらどうしましょうか、うっふ」
自分のことでもないのにルイーズは年甲斐もなくきゃっきゃとはしゃいでとても楽しそうだ。
舞踏会で見聞きしたことは誰にも言っていない。
スナイル王子には呆れたけれども他言しないことは約束したし、それに彼の事情は男性にとって絶対に隠したいことなのだろう。
男ではないので正直その気持ちは分からないが、八百屋の店主に『夜の営みが早いって男性にとって辛いのかしら?』と何気なく訊ねてみたら『……それは絶対に触れちゃいけない』と真顔で言われた。
「私ではないのは確かだわ。だって王城に行ったけれども、具合が悪くなって舞踏会が始まる前に帰ってきたもの。
それに舞踏会に参加したとしても王子は私のようなしがない子爵令嬢なんて相手にしないわよ。
公爵家や侯爵家にも年頃の令嬢がたくさんいるのだから。
おとぎ話はあくまでも夢物語りでしかないわ。
それより現実可能な幸せを考えるのが一番よ」
ない物ねだりをしていて、身近な幸せを見逃すつもりはない。
「まったくお嬢様は現実的すぎますね。
若いんですからもっと夢を見て『スナイル王子を手籠めにしてやるー』ってくらいの気概を持ってくださいよ。いいですか目標は山のように高くです。そのへんの丘で妥協するのは行き遅れてからです」
独自の基準と偏見にみちたルイーズの発言。
でも本人は自信満々だ。波瀾万丈な恋を楽しんできたと豪語しているだけはある。
………ルイーズ、それは間違ってると思うわ。
手籠にするって使い方も間違っているけど、それを目標に掲げるのはもっと違う気がする。それに婚期を逃した一部の女性を敵に回してしまうだろう。
でも人生の大先輩であるルイーズが楽しそうだから『…はっはは』と笑って誤魔化しておいた。
国中『王子のお相手は誰なのか?!』とお祭り騒ぎだったが、肝心の名前が発表されることはなかった。
人々の間では『名前はまだ分からないらしい。残していったガラスの靴を手掛りに探している最中のようだ』という噂で持ちきりだった。
まるでおとぎ話のシンデレラのような話になっている。
人はこういう話が好きだ。政略結婚よりも『運命的な出逢い』という物語のような話を好意的に受け止める傾向にある。
これも王子の政略結婚をより祝福されるための影の演出なのかと思っているとなぜか三日後、我が家の前に王家の紋章が入った立派な馬車が止まった。
もちろんその中から颯爽と降りてきたのは、あのスナイル王子。
そしてその後ろに控えている護衛騎士は靴が入りそうな大きさの箱を抱えている。
「まあまあ、スナイル王子様♪ムーア子爵家にようこそいらっしゃいました」
継母は普段よりも1オクターブ高い声でそう言いながら屋敷の中へと王子達一行を丁寧に招き入れた。
国民の間では王子の結婚という喜ばしい話題で持ちきりだった。
「ああ悔しいです!私だってほんの少し遅く生まれていたら、スナイル王子に見初められていたのに…」
相変わらず飛び抜けて前向な発言しているルイーズ。羨ましいなと思うけれども、真似はできないというかしないでおこう。
「でもこの運命のお相手って誰なんでしょうね~?もしかしてお嬢様かもしれませんね、そしたらまさに現代版シンデレラですよ。
『リリミア嬢、君の瞳が忘れられません。
どうか私の妻になってください』
なんて言われたらどうしましょうか、うっふ」
自分のことでもないのにルイーズは年甲斐もなくきゃっきゃとはしゃいでとても楽しそうだ。
舞踏会で見聞きしたことは誰にも言っていない。
スナイル王子には呆れたけれども他言しないことは約束したし、それに彼の事情は男性にとって絶対に隠したいことなのだろう。
男ではないので正直その気持ちは分からないが、八百屋の店主に『夜の営みが早いって男性にとって辛いのかしら?』と何気なく訊ねてみたら『……それは絶対に触れちゃいけない』と真顔で言われた。
「私ではないのは確かだわ。だって王城に行ったけれども、具合が悪くなって舞踏会が始まる前に帰ってきたもの。
それに舞踏会に参加したとしても王子は私のようなしがない子爵令嬢なんて相手にしないわよ。
公爵家や侯爵家にも年頃の令嬢がたくさんいるのだから。
おとぎ話はあくまでも夢物語りでしかないわ。
それより現実可能な幸せを考えるのが一番よ」
ない物ねだりをしていて、身近な幸せを見逃すつもりはない。
「まったくお嬢様は現実的すぎますね。
若いんですからもっと夢を見て『スナイル王子を手籠めにしてやるー』ってくらいの気概を持ってくださいよ。いいですか目標は山のように高くです。そのへんの丘で妥協するのは行き遅れてからです」
独自の基準と偏見にみちたルイーズの発言。
でも本人は自信満々だ。波瀾万丈な恋を楽しんできたと豪語しているだけはある。
………ルイーズ、それは間違ってると思うわ。
手籠にするって使い方も間違っているけど、それを目標に掲げるのはもっと違う気がする。それに婚期を逃した一部の女性を敵に回してしまうだろう。
でも人生の大先輩であるルイーズが楽しそうだから『…はっはは』と笑って誤魔化しておいた。
国中『王子のお相手は誰なのか?!』とお祭り騒ぎだったが、肝心の名前が発表されることはなかった。
人々の間では『名前はまだ分からないらしい。残していったガラスの靴を手掛りに探している最中のようだ』という噂で持ちきりだった。
まるでおとぎ話のシンデレラのような話になっている。
人はこういう話が好きだ。政略結婚よりも『運命的な出逢い』という物語のような話を好意的に受け止める傾向にある。
これも王子の政略結婚をより祝福されるための影の演出なのかと思っているとなぜか三日後、我が家の前に王家の紋章が入った立派な馬車が止まった。
もちろんその中から颯爽と降りてきたのは、あのスナイル王子。
そしてその後ろに控えている護衛騎士は靴が入りそうな大きさの箱を抱えている。
「まあまあ、スナイル王子様♪ムーア子爵家にようこそいらっしゃいました」
継母は普段よりも1オクターブ高い声でそう言いながら屋敷の中へと王子達一行を丁寧に招き入れた。
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