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閑話~主人は誰?~
離宮にも南側の日当たりの良い場所に小さな庭園がある。自然の良さを活かしたなんとも心安らぐ場所になっていて、離宮の者達も空いた時間にこの庭園の芝生の上でゴロゴロし、離宮パワースポットとも呼ばれている。
そして今はゴロゴロではなく、『ゴロン、ゴロン』とモフモフのピンクの毛玉が芝生の上で転がっている。
このモフモフ毛玉の正体は綿あめではない、侍女頭メリーの一人息子メロ3歳である。メリーに似て髪の毛が天然アフロなので、ぐるんぐるんと前転すると、まるでモフモフ毛玉が転がっているように見える。
((可愛いー))
シルビアとサーサは、メリーが用事を済ませる間だけお世話を任されたのである。(他の人を蹴散らして勝ち取ったともいう)
「可愛い、癒される!メロを私の子にしたい!」
シルビアはメロに夢中だ、めろめろになっている。
「駄目ですよ、メロは離宮のアイドルです!私の天使です!シルビア様といえども独り占めは許しません」
侍女サーサも一歩も引く気はない、足をダンダンと踏み鳴らし威嚇までしている。足ダンはウサギの威嚇行動である、ウサギ獣人はしない、…サーサよ、いつ『獣人』やめたんだ。
両者一歩も譲らず、もはや主人が誰かなんて関係ない。
「「メロ君、どっちのお姉ちゃんが好き?」」
2人ともメロに向かって、これでもかと両腕を広げ、自分の胸にモフモフメロが飛び込んで来るのを今か今かと待っている。
---いや、もう怖すぎる---小さな虫を捕食しようと葉を広げているハエトリ草にしか見えない。
もちろん小さなメロにもそう見えた。
「ううっ、あーん」ハエトリ草擬きが怖くて、メロが泣き出してしまった。
((まずいわ、まずいわ。来てしまうわ…))オロオロする2人。
ドドドドドーーー地響きが近づいてくる。『至極のモフモフタイム』終了の鐘の音が聞こえてくる、今日の鐘の音は早かった。
「コラー!うちの子に何しやがる、このハエトリ草姉妹がーーー!」
庭師キークが怒鳴りながらもの凄い速さでやって来る、イノシシ獣人のダッシュはマズイ!、命の危機を感じ取ったハエトリ草姉妹は見事なスライディング土下座をする。
「「ごめんなさいーーー」」
もうピクリとも動かない…、動けない。キークはイノシシ獣人であってクマではない、死んだふりは効果がない。
「俺の可愛い息子を泣かすとはいい度胸だ。歯をへし折って、奥歯ガタガタいわせんぞ!」
庭師キーク、シルビアの『肩書』は何処かにすっ飛ばしてしまっている。
「「ヒィー!許してください」」
そっと顔を横にして視界に入ったコリンに口パクで助けを求めるも、逃げられた、目が合ったのに。コリン…私は主人よね?
もう終わりだと走馬灯が見え始めた時、天使母降臨、もう本当に後光が見える気がする。
「あなた、何をしているのかしら…」
メリーが優しくキークに問い掛けているが、目が笑っていない。
キークとメリーは夫婦で『番』でもある。キークはメリーとメリーそっくりなメロを溺愛し、その溺愛ゆえに妻に頭が上がらないのだ。
「いや、これは、その…。メロが泣いてる声がして…」
メロの危機にはすぐさま反応し、地響きダッシュでお世話係から息子を助け出すのは日常茶飯事だった。もはや『地響きダッシュ=至極のモフモフタイム終了の鐘の音』は離宮の常識となっている。
「理由も確認せずに、怒鳴るの駄目ね。分かった?それに主人に話しかける口調でなかったわ」
「はい…」
静かに怒る愛妻メリーに、素直に反省するキーク、これで一件落着かと思われたがそうではなかった。
今度はまだスライディング土下座中のシルビアとサーサの前で屈んで、優しく問い掛ける。
「何がいけなかったか分かりますか?」
「「メロを泣かせてごめんなさい。メロごめんね」」
2人は素直に謝るが、その回答は正解でなかった。
「違います。泣かせたことが悪いのではなく、『どっちが好きか』と小さい子に人を選ばせる質問をしたことです。反省してください、ハエトリ草姉妹」
口調こそ優しいが本気で怒っている、主人であるシルビアと侍女サーサを『ハエトリ草姉妹』扱いしている…。
「「反省してます…」」
---深夜---
シルビアは夜に必ず一日の振り返りを行う、『反省は人を成長させる糧となる』良い教えだ。
今日は色々あって疲れているので、ベットに入りながら、半分寝ぼけて振り返るシルビア。
…あれ?
まず侍女サーサには足ダンされて、次に庭師キークから怒鳴られ歯をガタガタされそうになって、侍女コリンに助けを求めるも見捨てられ、最後に侍女頭メリーに『ハエトリ草姉妹』扱いされた…。
…私って、いつ主人やめたんだっけ…?
そして今はゴロゴロではなく、『ゴロン、ゴロン』とモフモフのピンクの毛玉が芝生の上で転がっている。
このモフモフ毛玉の正体は綿あめではない、侍女頭メリーの一人息子メロ3歳である。メリーに似て髪の毛が天然アフロなので、ぐるんぐるんと前転すると、まるでモフモフ毛玉が転がっているように見える。
((可愛いー))
シルビアとサーサは、メリーが用事を済ませる間だけお世話を任されたのである。(他の人を蹴散らして勝ち取ったともいう)
「可愛い、癒される!メロを私の子にしたい!」
シルビアはメロに夢中だ、めろめろになっている。
「駄目ですよ、メロは離宮のアイドルです!私の天使です!シルビア様といえども独り占めは許しません」
侍女サーサも一歩も引く気はない、足をダンダンと踏み鳴らし威嚇までしている。足ダンはウサギの威嚇行動である、ウサギ獣人はしない、…サーサよ、いつ『獣人』やめたんだ。
両者一歩も譲らず、もはや主人が誰かなんて関係ない。
「「メロ君、どっちのお姉ちゃんが好き?」」
2人ともメロに向かって、これでもかと両腕を広げ、自分の胸にモフモフメロが飛び込んで来るのを今か今かと待っている。
---いや、もう怖すぎる---小さな虫を捕食しようと葉を広げているハエトリ草にしか見えない。
もちろん小さなメロにもそう見えた。
「ううっ、あーん」ハエトリ草擬きが怖くて、メロが泣き出してしまった。
((まずいわ、まずいわ。来てしまうわ…))オロオロする2人。
ドドドドドーーー地響きが近づいてくる。『至極のモフモフタイム』終了の鐘の音が聞こえてくる、今日の鐘の音は早かった。
「コラー!うちの子に何しやがる、このハエトリ草姉妹がーーー!」
庭師キークが怒鳴りながらもの凄い速さでやって来る、イノシシ獣人のダッシュはマズイ!、命の危機を感じ取ったハエトリ草姉妹は見事なスライディング土下座をする。
「「ごめんなさいーーー」」
もうピクリとも動かない…、動けない。キークはイノシシ獣人であってクマではない、死んだふりは効果がない。
「俺の可愛い息子を泣かすとはいい度胸だ。歯をへし折って、奥歯ガタガタいわせんぞ!」
庭師キーク、シルビアの『肩書』は何処かにすっ飛ばしてしまっている。
「「ヒィー!許してください」」
そっと顔を横にして視界に入ったコリンに口パクで助けを求めるも、逃げられた、目が合ったのに。コリン…私は主人よね?
もう終わりだと走馬灯が見え始めた時、天使母降臨、もう本当に後光が見える気がする。
「あなた、何をしているのかしら…」
メリーが優しくキークに問い掛けているが、目が笑っていない。
キークとメリーは夫婦で『番』でもある。キークはメリーとメリーそっくりなメロを溺愛し、その溺愛ゆえに妻に頭が上がらないのだ。
「いや、これは、その…。メロが泣いてる声がして…」
メロの危機にはすぐさま反応し、地響きダッシュでお世話係から息子を助け出すのは日常茶飯事だった。もはや『地響きダッシュ=至極のモフモフタイム終了の鐘の音』は離宮の常識となっている。
「理由も確認せずに、怒鳴るの駄目ね。分かった?それに主人に話しかける口調でなかったわ」
「はい…」
静かに怒る愛妻メリーに、素直に反省するキーク、これで一件落着かと思われたがそうではなかった。
今度はまだスライディング土下座中のシルビアとサーサの前で屈んで、優しく問い掛ける。
「何がいけなかったか分かりますか?」
「「メロを泣かせてごめんなさい。メロごめんね」」
2人は素直に謝るが、その回答は正解でなかった。
「違います。泣かせたことが悪いのではなく、『どっちが好きか』と小さい子に人を選ばせる質問をしたことです。反省してください、ハエトリ草姉妹」
口調こそ優しいが本気で怒っている、主人であるシルビアと侍女サーサを『ハエトリ草姉妹』扱いしている…。
「「反省してます…」」
---深夜---
シルビアは夜に必ず一日の振り返りを行う、『反省は人を成長させる糧となる』良い教えだ。
今日は色々あって疲れているので、ベットに入りながら、半分寝ぼけて振り返るシルビア。
…あれ?
まず侍女サーサには足ダンされて、次に庭師キークから怒鳴られ歯をガタガタされそうになって、侍女コリンに助けを求めるも見捨てられ、最後に侍女頭メリーに『ハエトリ草姉妹』扱いされた…。
…私って、いつ主人やめたんだっけ…?
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