気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

文字の大きさ
22 / 61

第2章 1 多すぎる朝食

しおりを挟む
「あ~・・・ちっとも寝た気がしない。」

布団の中で思わずぼやいてしまった。まるで明晰夢を見ていたかのような感覚だ。
ひょっとするとこれが毎晩続くのかな・・・。いや、でも耐えなければっ!一刻も早くロザリアを幸せ?にして私の帰りを待ち続ける可愛い双子の弟妹や、最近倦怠期気味の彼の為にも・・!

「では起きようっ!」

ガバッとベッドから降りて、ハンガーにかかっている制服を手に取って着替えを始めた。それにしても・・・。
下着姿だけになったロザリアの身体をまじまじと見つめる。二段バラに脇のはみ肉。二の腕も太もももパンパンで、首回りも太く二十顎になっている。

「う~ん・・・伸長約160センチ、体重60k・・位かなあ?」

目測でロザリアの伸長と体重を出してみた。

「あーっ!駄目だわっ!この体型では・・・・!それにしてもロザリアのお父さんはこんなデブな体形なのに、すっかり痩せてしまったって言ってたなんて・・・どんだけロザリアは太っていたのさ・・。でもとりあえずの目標は決まったわね。ダイエットと運動で健康的に痩せる!これが第一目標よっ!」

そうと決まればぐずぐずしてはいられない。私は急いで制服に着替えていると、突然ドアをノックする音が聞こえてきた。

コンコン

「はーい。」

ちょうど着替え終わったのでドアに向かい、ガチャリと開けるとそこにそばかすのまだ残る三つ編みのメイドさんが立っていた。

「キャアッ!ロザリア様っ!」

「え?どうしたの?そんなに慌てた顔して・・?」

「い、いえ!まさか・・・ロザリア様が起きていたとは・・・いつも何度も何度も起こしても1人で起きることが出来ない方が・・・1人で起きて、制服に着替えて、しかもご自身でドアを開けられるなんて・・・!」

ああ・・・そういう事なのね・・。
このロザリアって娘は何もかも誰かに頼り切りって娘なのね・・・。何だか湊と唯の事を思い出してしまった。あの子達・・・ちゃんと朝起きてるのかな・・・朝ごはんは食べたのかな・・・。


「ロザリア様、どうされたのですかっ?!」

突然目の前で声を掛けられてハッとなった。いけないいけない。思わず頭がトリップしてしまった。

「いいえ、大丈夫よ。ところで食事はどうすればいいのかしら?」

「はい、ご用意しております。今運んでまいりますね。」

そしていそいそと部屋を出て行くメイドさん。
メイドさんの言葉に私は耳を疑った。え?嘘でしょう?まさかこの部屋で朝食を食べるの?驚いていると、大きなワゴンに料理がてんこ盛り?で運ばれてきて私は目を見開いてしまった。
ワゴンは2段になっていて、上段には大きなボトルに入ったオレンジジュースにミルク。ヨーグルトに山盛りフルーツ。スコーンにマフィン。サンドイッチにサラダ。
そして下段にスープにベーコン、ボイルウィンナー。スクランブルエッグにフライドポテト。そしてはちみつがたっぷりかかったフレンチトーストが乗っている。

「ね・・ねえ・・・この食事・・一体誰の分なの・・・?」

震えながら指さすとメイドさんは言った。

「何をおっしゃってるのですか。全てロザリア様の料理ですよ?」

「へ?」

思わず間の抜けた声が出てしまう。こ・・・こんなに食べれるかっ!!思わず心の中で絶叫するが、恐ろしいのが身体に染み付いたデブの本能。あろうことか、この量の食事を見ただけでお腹が鳴っているではないか!
だけど・・・。

「あ・・あのねっ!私は今日からダイエットする事に決めたからっ!メニューもここから選ばせて貰うからね!」

そしてワゴンの上からサラダ、ヨーグルト、フルーツ、牛乳だけを自分で取った。

「え・・?ロザリア様・・・それっぽっちでよろしいのですか・・・?はっ!ま・・まさか・・・今度は飢え死になさるおつもりですかっ?!」

メイドさんは真っ青になって震えている。

「だ・・誰が飢え死にするのよっ!いい?これだけだって十分すぎるく位の食事なんだからね?今度から私の朝食メニューはこれだけにして。後は・・この食事、もったいないから皆で食べて。」

「ええ?!よろしいのですかっ?!」

メイドさんは目をキラキラさせて私を見た。

「うん。いいの。ほら、冷めないうちに皆に分けてあげて。」

「はいっ!分かりましたっ!」

メイドさんはワゴンを押して小走りで部屋を出て行った。急ぐのもいいけど・・こぼさないでね。

「ふう・・では食事にしますか。」

テーブルに着くと早速サラダに手を伸ばし、食事を開始した―。


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...