母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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第7章 7 リヒャルトの過去 2

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「それにしてもお強いのですね?驚きました。あ、私はアグネス・マゼンダと申します。ここ『ベルンヘル』に住んでおります。あの…お名前を教えて頂けますか?」

「私はリヒャルト・シュバルツと申します。旅の帰りで『ベルンヘル』に立ち寄りました」

「まぁ…旅の方だったのですね。でも本当に助かりましたわ。何とお礼を申し上げたら良いか…」

アグネスは頭を下げた。

「お礼なんてとんでもありません。あ…でしたら実は今夜泊まれる場所を探しているのです。何処か宿屋を教えて頂けないでしょうか?」

「宿屋…ですか?」

そして何故かアグネスは上から下までジロジロとリヒャルトを見渡すと言った。

「分かりました、それではご案内致します。こちらへどうぞ」

そしてアグネスとリヒャルトはすっかり薄暗くなった町の中を歩き始めた―。

「こちらのホテルはいかがでしょうか?」

リヒャルトが連れてこられのはここ『ベルンヘル』で一番高級なホテルだった。

「これは…なかなか高級そうなホテルですね…」

リヒャルトは目の前にそびえ立つ真っ白な建物を見上げると言った。ガラス張りのホテルの入り口には2人のドアマンが控えており、巨大な回転扉の入り口となっている。ガラス窓の奥にはフカフカのカーペットが敷き詰められている。

「ええ。そうですね。ただ、私が知っているホテルはここしか無かったものですから…」

アグネスは目を伏せながら言う。

「そうですか…しかし、本当に高級そうですね」

それもそのはず。旅人のリヒャルトは何も知らなかったが、このホテルは『ベルンヘル』で最も高級なホテルとして有名であった。このホテルに泊まれるのはお金持ちと身分の高い者しか宿泊することが出来ない。

(まぁ…いいだろう。今夜はここに宿泊することにしよう)

リヒャルトはアグネスを見ると言った。

「どうもありがとうございます。お陰で野宿にならずにすみました」

リヒャルトが笑顔で言うとアグネスは驚いた顔を見せた。

「え?あ、あの…こちらに宿泊されるのですか?」

「え?ええ…」

(何だ?自分でこのホテルに案内しておきながら、妙な事を尋ねてくる人だ…)

リヒャルトは不思議に思いながらも言った。

「はい、宿泊します。案内して頂き、ありがとうございました」

「い、いえ…では私はこれで失礼致しますね…」

アグネスはそれだけ言うと、早足で背を向けると夜の町へ消えていった。リヒャルトは遠ざかる後ろ姿を見送るとホテルの回転ドアに触れた。

 実はリヒャルトは自分がカモにされてしまうかどうかをアグネスに試されていたのだ。アグネスはリヒャルトが貧しい身なりをしているにも関わらず、言葉遣いや身のこなしに紳士的なものを感じていた。そしてひょっとすると身分が高い人物では無いかと思ったのだ。そこでリヒャルトを普通の人間ならば止まることの出来ないホテルわざと案内したのだった。しかし、リヒャルトがこのホテルに宿泊を決めた事を見て確信した。きっとこの人物はお金持ちの貴族に違いないと…。

 まさにリヒャルトがアグネスに目をつけられた瞬間だった―

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