私が蛙にされた悪役令嬢になるなんて、何かの冗談ですよね?

結城芙由奈@コミカライズ連載中

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1−7 初めての感謝

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『う~ん……とうとう朝になってしまったわ……』

 私は恨めし気に太陽が上ってくる様子を葉っぱの陰から見つめていた。

 結局夜行性の私?は一晩中眠ることなど出来なかった。危険生物から身を隠すべく、じっと葉っぱの下にうずくまっていたのだ。

 時々、ケロケロと鳴きたくなる衝動を必死で抑えていた。そして夜明けをひたすら待ち続け……今に至る。

『やっと朝になったということは、ようやく眠れるということよね?』

 ところが目が冴えて眠くなるどころではない。おまけにお腹はすいている。

『昨日、あれほどアブラムシを美味しく頂いたのに……またこんなにお腹がすくなんて……』

 自分の真っ白な蛙腹を見ながら、ため息一つ。

『何処かに餌は無いかな……?』

 驚いたことに、私は無自覚に「食事」とは言わずに、「餌」と言っている自分に気付いた。

『ハッ!駄目駄目駄目‼私は人間!蛙なんかじゃないんだってば!」

 けれど気づけば勝手にケロケロと喉から鳴き声がもれているし、目をキョロキョロと動かしながら、捕食?出来る餌を本能的に探している自分がいる。

 そして……。

『ああっ!あんな所に……アリさんの群れがっ!!』

 勿論……私が美味しく頂いたのは言うまでも無かった――。



****

『ふ~……満足満足……』

 すっかりお腹が満たされた、つい油断していた私は花壇の赤い花の近くに寝そべって?しまっていた。

 すると、そこへズシンズシンと何者かが近付いてくる気配を感知。
 ま、まずい!敵?かも!

慌ててその場を離れる為に、跳躍しようと身構えた瞬間――。

「おや?この蛙がクロード様が仰っていた蛙かな?」

不意に真上から声を掛けられた。

え?クロード……?ひょっとして昨日花壇で出会った男性のことだろうか?

見上げると、麦わら帽子を被った立派なお髭をはやした男性がじっと私を見下ろしていた。

もしかして……この人物が昨日出会った青年が話していた庭師なのだろうか?

「それにしても本当に美しい色の蛙だな……瞳なんかまるで宝石のように青く、キラキラと輝いている……」

 男性はウンウン、うなずきながら私を見つめている。
 
「白蛙さん、この花壇が気に入ったのかね?ここに住みたいなら住むといい。何、追い出したりなどしないから安心しなさい」

 そして優しい笑顔で語りかけてきた。

 じ~ん……。

 思わず感動で胸が熱くなる私。 ひょっとしてこの庭師……今迄出会った人達の中で一番親切かもしれない!

『ありがとうございます……行き場が無くて困っていたのです。ここは餌も豊富にありますし、昨夜一晩中危険生物に出会うこともありませんでした。ここはまさにパラダイスです!お世話になります!』

 ケロケロと喉を鳴らしながら、私は今の自分の感謝の気持ちを必死に述べた。

「あははは……本当にクロード様のおっしゃる通り、人の言葉が分かっているみたいだなぁ?何とも可愛らしいことだ」

 いいえ、分かっている……ではなく、本当に分かっているのですよ?

「どれ、白蛙さん。これから花壇の手入れで害虫駆除をしなければならないから……どれどれ……」

 庭師さんは花壇にしゃがみ込み、暫くあちこち見て回っていたが、突如声を上げた。

「ええ?!何ということだ……昨日まであんなにびっしり葉っぱにこびりついていたアブラムシが一匹もいないじゃないか!おまけにアリの大群も姿がない!」

『あ、それは私が全て食べてしまったからです。食い意地が張っていてすみません』

 ケロケロと鳴くと、庭師が突然こちらを振り向いた。

「そうか……白蛙さん、君が害虫駆除をしてくれたのだね?!ありがとう!感謝するよ!」

 え?!今……ありがとうって言ってくれたの?!

「そう言えば、蛙は害虫を食べてくれるのを忘れていたよ。本当にありがとう。お陰で手間が省けたよ」

 ニコニコしながらお礼を述べてくる、ミスター庭師。

 この日、蛙になって初めて私は人から感謝された――。
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